夫婦でシネマ

夫婦で見た映画と、個別に見た映画について感想をかいてます。全て映画館で見た映画で、ミニシアター系の映画をたくさん紹介!

グラン・トリノ

2009年06月06日 | か行の映画
Story
朝鮮戦争の帰還兵ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)はフォード社を退職し、妻も亡くなりマンネリ化した生活を送っている。彼の妻はウォルトに懺悔することを望んでいたが、頑固な彼は牧師の勧めも断る。そんな時、近所のアジア系移民のギャングがウォルトの隣に住むおとなしい少年タオにウォルトの所有する1972年製グラン・トリノを盗ませようとする。タオに銃を向けるウォルトだが、この出会いがこの二人のこれからの人生を変えていく…。(goo映画より)
2008年/アメリカ/クリントイースト・ウッド監督作品





評価 ★★★★★

イーストウッド久々の主演&監督作!

人種も年齢もまったく異なる2人が関わることで、お互いの人生が少しずつ良い方向へと変わっていく、というストーリーはよくあるパターンですが、さすが巨匠イーストウッドだけあって、実に味わい深い良質な作品に仕上がっていました。
低予算でお金がかかっていない、しかも役者はイーストウッド以外ほぼ無名の者ばかりという内容の映画にもかかわらず、やはり脚本と監督の腕が良いと面白い映画が作れる!というお手本のような映画でしたね。

このイーストウッドが演じたウォルトというキャラクターがまた面白かったです。ウォルトは頑固で偏屈な性格から、彼の周囲の人間や身内からも疎まれている存在なのですが、実は正義感の強い自分の信念を曲げない男性で、こんな時代でも自分の生き方を貫くヒーローとしても描かれています。そんなギャップのある性格が魅力的なキャラクターなので、物語が進行していくうちに、彼のキャラクターを好きになっていく人は多いのではないでしょうか。
また、ウォルトの隣に住むアジア系移民、少年タオとその姉スーがどちらもこの役柄にぴったりの役者でとても良かったですね。この姉弟が魅力的に描かれているからこそ、頑なだったウォルトの心が少しずつ変化していくのも説得力がありました。

この作品は、生と死、そして魂の救済をテーマに描かれているような気がしますが、それがラストの衝撃的な展開で幕を閉じて、観終わった後はかなり深い印象を残す作品に仕上がっています。
あんな死に方が似合うのはさすがイーストウッドならではこそ!銃を構える姿はダーティー・ハリーを彷彿させるし、80近いおじいちゃんとは思えない本当にダンディで素敵で、まだまだ現役でいてほしい素晴らしい役者でもありますね。





評価 ★★★★★

「グラン・トリノ」を読み解くためのキーワードだワン♪

誕生日
コワルスキーの誕生日。偏見を持って接していた隣家に初めて招き入れられ、彼の心に変化が訪れます。彼の再生の始まりの日として、誕生日が象徴的に用いられています。同じシチュエーションが黒澤の「生きる」にもあって、ここでは、ハッピーバースデー♪の唄が象徴的に使われていました。「グラン・トリノ」は「生きる」と同じテーマを扱っているようで、思えば「荒野の用心棒」が「用心棒」の本案西部劇であるなら、イーストウッドは、一巡りしてまた黒澤に戻って来たのでしょうか。

毒舌
イーストウッドの毒舌と青筋ピクピク怒り爆発場面がユーモアを添えていますが、息子夫婦がコワルスキーを養老院に入れようと説得しに訪れた場面では、彼がいつちゃぶ台(テーブル)をひっくり返すかのハラハラ場面が笑える。

懺悔室
懺悔場面が2回登場する。1回目の教会での神父に対しての通常の懺悔。2回目は、コワルスキーがチンピラ達に片を付けに行く所で、タオを守るために地下室に閉じ込めるのですが、その時の柵を通してタオにコワルスキーが真情を吐露する場面。2人を隔てる柵が懺悔室のしきりのように見えます。

工具
ガレージの壁に見事に並んだ工具の数々に驚嘆しているタオに対してコワルスキーが言う言葉。「それぞれの工具には決まった使い道がある。」は、トロ助のお前も大事な役目を担って産まれてきたんだと言う意味にとれます。コワルスキーの思いやりが垣間見える場面でした。

日本車とアメ車
コワルスキーの息子はトヨタ、モン族のギャング団が乗るのはホンダ。トヨタ車もホンダ車も同じ顔になってしまった最近、フォード グラン・トリノが如何に個性的で魅力的に見えるか。

魂の救済
ラストで十字架の形になって横たわるコワルスキーの姿は、贖罪がなされて、魂が救済されたことを示しているよう。

星条旗
ベランダでくつろぐコワルスキーの背後にはいつも星条旗がはためいていました。没落したアメリカの最後の砦を守っているようです。
コワルスキーの息子夫婦とその娘は、最期まで彼の家と車(グラン・トリノ)に執着していましたが、過去の遺産で食いつないでいるような息子達には既に見切りをつけているようです。そのグラントリノを駆って、去って行くタオに未来の希望が託されているようで爽やかなラストでした。


映画『グラン・トリノ』公式サイト


(「グラン・トリノ」2009年5月 岡谷スカラ座にて鑑賞)

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4 コメント

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Unknown (Naoko)
2009-06-07 08:29:27
久しぶりの更新ですね(笑)
この映画は本当にものすごい感動とともに「衝撃」すら覚えました
名作、ですね
返信する
お久しぶりです (nyanco)
2009-06-08 12:07:12
Naokoさん、こんにちは♪
本当に1ヶ月ぶりの久しぶりの更新になってしまいました。。^^;
ブログいつも見て下さって嬉しいです。
さすがイーストウッドというか、私も観終わった後、深く印象に残った映画でしたね。
これからもどんどん名作を作り続けてほしいです。
返信する
TBありがとうございました (シムウナ)
2009-06-15 17:52:03
TB有難うございました。
クリント・イーストウッドの俳優業引退説も
囁かれましたが、こんなに貫禄のある演技を
観ると俳優業もそして、監督業も情熱の
続く限り続けて欲しいと思いました。
ラストの余韻は上映後も残りました。

今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
クリックすることで5段階評価ができます。
もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!
返信する
こんばんは。 (wanco)
2009-07-12 00:06:09
シムウナさん、こんばんは。
コメとトラバ、ありがとうございました。
歳を重ねても傑作を撮り続けるイーストウッドを、本当に尊敬してしまいます。
これからも、スクリーンで彼の姿を観たいものですね。
返信する

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