Story
1984年、東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)局員のヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)は、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と舞台女優である恋人のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。成功すれば出世が待っていた。しかし予期していなかったのは、彼らの世界に近づくことで監視する側である自分自身が変えられてしまうということだった。国家を信じ忠実に仕えてきたヴィースラーだったが、盗聴器を通して知る、自由、愛、音楽、文学に影響を受け、いつの間にか今まで知ることのなかった新しい人生に目覚めていく。ふたりの男女を通じて、あの壁の向こう側へと世界が開かれていくのだった…。(goo映画より)
2006年/ドイツ/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督作品
評価 ★★★★★
この映画は、本年度アカデミー賞 外国語映画賞受賞作品で、ドナースマルク監督は若干33歳にして初監督の作品になります。
この映画は、真面目で職務に忠実なシュタージ局員であったヴィースラーが、劇作家ドライマンとその恋人で舞台女優でもあるクリスタとの日々の生活を盗聴することで、彼らの自由な思想、芸術、文化、音楽、愛情などに触れて、今まで知らなかった感情に目覚め、シュタージの権力から彼らを守ろうとする物語です。
筋金入りのシュタージ局員であったヴィースラーが、芸術家たちを盗聴することで、新しい人生に目覚めていくという設定は面白いと思いましたね。その決定的な出来事となったのが、ドライマンが自殺した演出家の友人を偲んで弾いたピアノ曲「良き人のためのソナタ」です。(映画『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー受賞者の作曲家ガブリエル・ヤレドが作曲しています。心に染入るようなとても良い曲でした。)ドライマンが「その曲を本気で聴いた者は悪人になれない」と言う台詞があるのですが、ヴィースラーがその曲を聴いてしまったことで、今まで知らなかった感情に目覚めて、彼らを監視する側だったのが守る側へと変わっていきます。
ヴィースラーは、本当ならこの任務が成功すれば出世が約束されていたのに、出世よりも人間として大切な方を選んだことにとても好感が持てました。
仕事以外には無口で、どこか孤独な感じのする中年男ヴィースラーを、自身もシュタージに監視されていたという経験を持つウルリッヒ・ミューエが好演しています。
劇作家ドライマンを演じたセバスチャン・コッホも、ヴィースラーとは対照的な積極的なキャラクターを好演していますが、私はやっぱりクリスタ役を演じたマルティナ・ゲデックがとても素敵で注目してしまいました。
マルティナ・ゲデックは、映画『マーサの幸せレシピ』で一躍注目された女優ですが、色っぽさと可愛らしさが同居するとてもチャーミングな女優だなと思いましたね。『マーサ・・』の明るい感じの役柄とは全然違って、この映画では、保身のために愛する恋人を密告してしまう、どこか不安定で弱さのある難しい役柄を熱演しています。
恋人のドライマンに愛されているだけでなく、シュタージの権力者にも言い寄られてしまうほど、クリスタという女性はとても魅力的に描かれていました。(おそらくヴィースラーも彼女に好意を持っているでしょう。)
ラストのベルリンの壁崩壊後のエピローグがとても良いです。ドライマンが自分を守ってくれた存在に気づいて、彼に捧げた一冊の本を出版します。この本のタイトルが「善き人のためのソナタ」です。この本の発売に気づいたヴィースラーが本を手に取り、販売員に言う台詞がとても良い。「これは私のための本だ。」この台詞で映画は終わりますが、ラストシーンがなんとも良くて、エンディングロールを見る目は涙目になっていました。
評価 ★★★★☆
1989年のベルリンの壁崩壊前後、時代の大きなうねりの中で生きた人々を、そこかしこにユーモアを交えながら感動的に描いています。
ヴィースラーが、宇宙食のような無味乾燥な食事を一人アパートで食べる所がありますが、ドライマンとクリスタの愛情に満ちた生活に接することで、息が詰まる無機質な生活の中で、人間としての生き方とは何かを、無表情な中で考えていたのでしょうね。
ただ、筋金入りのシュタージ要員であるヴィースラーが、ソナタ一つでころっといくのはちょっと説得力がなかったような気がします。その気持ちの変化の過程が上手く描けていればもっと良くなったのではと思いました。
劇作家のドライマンは、管理社会の中でも結構したたかに生きています。一方で、彼の恋人のクリスタは、権力者をパトロンにしないと生きて行けない芸術家の苦しみを私達に投げかけます。
ヴィースラーの庇護のもと、ドライマンは反体制仲間の協力もあって、東ドイツの自殺者の実態についてのレポートを西側メディアに発表することに成功。
体制側とドライマンとの板挟みに苦悩するクリスタは、ドライマンへの裏切りに耐えきれずに自ら死を選びます。ドライマンが書いた自殺の記事が残酷な意味を持って跳ね返ってくる展開が見事でした。反体制を気取っていても、最愛の人を救うことが出来なかった無力感はいかほどのものだったでしょうか。想像してあまりあるものがあります。
壁崩壊後、一冊の本が結びつけた2人の男の友情がほのかな希望となって感動的でした。
映画『善き人のためのソナタ』公式サイト
(「善き人のためのソナタ」2007年3月 名古屋 ゴールド劇場にて鑑賞)
1984年、東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)局員のヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)は、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と舞台女優である恋人のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。成功すれば出世が待っていた。しかし予期していなかったのは、彼らの世界に近づくことで監視する側である自分自身が変えられてしまうということだった。国家を信じ忠実に仕えてきたヴィースラーだったが、盗聴器を通して知る、自由、愛、音楽、文学に影響を受け、いつの間にか今まで知ることのなかった新しい人生に目覚めていく。ふたりの男女を通じて、あの壁の向こう側へと世界が開かれていくのだった…。(goo映画より)
2006年/ドイツ/フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督作品
評価 ★★★★★
この映画は、本年度アカデミー賞 外国語映画賞受賞作品で、ドナースマルク監督は若干33歳にして初監督の作品になります。
この映画は、真面目で職務に忠実なシュタージ局員であったヴィースラーが、劇作家ドライマンとその恋人で舞台女優でもあるクリスタとの日々の生活を盗聴することで、彼らの自由な思想、芸術、文化、音楽、愛情などに触れて、今まで知らなかった感情に目覚め、シュタージの権力から彼らを守ろうとする物語です。
筋金入りのシュタージ局員であったヴィースラーが、芸術家たちを盗聴することで、新しい人生に目覚めていくという設定は面白いと思いましたね。その決定的な出来事となったのが、ドライマンが自殺した演出家の友人を偲んで弾いたピアノ曲「良き人のためのソナタ」です。(映画『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー受賞者の作曲家ガブリエル・ヤレドが作曲しています。心に染入るようなとても良い曲でした。)ドライマンが「その曲を本気で聴いた者は悪人になれない」と言う台詞があるのですが、ヴィースラーがその曲を聴いてしまったことで、今まで知らなかった感情に目覚めて、彼らを監視する側だったのが守る側へと変わっていきます。
ヴィースラーは、本当ならこの任務が成功すれば出世が約束されていたのに、出世よりも人間として大切な方を選んだことにとても好感が持てました。
仕事以外には無口で、どこか孤独な感じのする中年男ヴィースラーを、自身もシュタージに監視されていたという経験を持つウルリッヒ・ミューエが好演しています。
劇作家ドライマンを演じたセバスチャン・コッホも、ヴィースラーとは対照的な積極的なキャラクターを好演していますが、私はやっぱりクリスタ役を演じたマルティナ・ゲデックがとても素敵で注目してしまいました。
マルティナ・ゲデックは、映画『マーサの幸せレシピ』で一躍注目された女優ですが、色っぽさと可愛らしさが同居するとてもチャーミングな女優だなと思いましたね。『マーサ・・』の明るい感じの役柄とは全然違って、この映画では、保身のために愛する恋人を密告してしまう、どこか不安定で弱さのある難しい役柄を熱演しています。
恋人のドライマンに愛されているだけでなく、シュタージの権力者にも言い寄られてしまうほど、クリスタという女性はとても魅力的に描かれていました。(おそらくヴィースラーも彼女に好意を持っているでしょう。)
ラストのベルリンの壁崩壊後のエピローグがとても良いです。ドライマンが自分を守ってくれた存在に気づいて、彼に捧げた一冊の本を出版します。この本のタイトルが「善き人のためのソナタ」です。この本の発売に気づいたヴィースラーが本を手に取り、販売員に言う台詞がとても良い。「これは私のための本だ。」この台詞で映画は終わりますが、ラストシーンがなんとも良くて、エンディングロールを見る目は涙目になっていました。
評価 ★★★★☆
1989年のベルリンの壁崩壊前後、時代の大きなうねりの中で生きた人々を、そこかしこにユーモアを交えながら感動的に描いています。
ヴィースラーが、宇宙食のような無味乾燥な食事を一人アパートで食べる所がありますが、ドライマンとクリスタの愛情に満ちた生活に接することで、息が詰まる無機質な生活の中で、人間としての生き方とは何かを、無表情な中で考えていたのでしょうね。
ただ、筋金入りのシュタージ要員であるヴィースラーが、ソナタ一つでころっといくのはちょっと説得力がなかったような気がします。その気持ちの変化の過程が上手く描けていればもっと良くなったのではと思いました。
劇作家のドライマンは、管理社会の中でも結構したたかに生きています。一方で、彼の恋人のクリスタは、権力者をパトロンにしないと生きて行けない芸術家の苦しみを私達に投げかけます。
ヴィースラーの庇護のもと、ドライマンは反体制仲間の協力もあって、東ドイツの自殺者の実態についてのレポートを西側メディアに発表することに成功。
体制側とドライマンとの板挟みに苦悩するクリスタは、ドライマンへの裏切りに耐えきれずに自ら死を選びます。ドライマンが書いた自殺の記事が残酷な意味を持って跳ね返ってくる展開が見事でした。反体制を気取っていても、最愛の人を救うことが出来なかった無力感はいかほどのものだったでしょうか。想像してあまりあるものがあります。
壁崩壊後、一冊の本が結びつけた2人の男の友情がほのかな希望となって感動的でした。
映画『善き人のためのソナタ』公式サイト
(「善き人のためのソナタ」2007年3月 名古屋 ゴールド劇場にて鑑賞)
先月はなにかと忙しくおじゃまできずに申し訳ない・・
>ガブリエル・ヤレド
この人の曲、好きなんですよ~
シュタージの存在もはじめて知りましたよ。
ラストは涙が自然にあふれてきて心にしみた。
真心が伝わってきました☆
『マーサの幸せレシピ』って日本で公開されてるのかな?
観てみたいんだけどな・・
こちらこそご無沙汰です。
ガブリエル・ヤレドの曲、とてもいい曲ですよね~♪(^^)
ドナースマルク監督がこの映画のために是非にと作曲をお願いしたのがよく分かるような気がします。
ウルリッヒ・ミューエの抑えた演技がかえって涙を誘いました。
『マーサの幸せレシピ』は日本で公開されていますよ!
DVD化されていると思うので、ぜひ観てみてください。
この映画のパンフが、料理メニューを見ているようなデザインになっていて、とてもお洒落です♪