例年は年末に寄付が集中するふるさと納税を巡り、今年は約3か月早い「駆け込み需要」が発生している。10月1日から国のルールが厳格化し、多くの返礼品の寄付額が引き上げられるためだ。突然の注文増加に追われる事業者からは「国には、もっと早くルール変更を教えてもらいたかった」との恨み節も出ている。(大森祐輔) 「10月1日から一部返礼品の寄付額を上げざるを得ません。駆け込みが予想され、返礼品のお届けに時間がかかる場合があります」 福岡県飯塚市は8月末以降、返礼品を紹介する仲介サイトなどにこうしたお知らせを掲示している。 市内のメーカーが開発したデミグラスソースを使った冷凍ハンバーグなどが人気で、昨年度は全国8位の約91億円の寄付を集めた。 ふるさと納税を巡っては6月下旬、総務省が返礼品の調達や送付にかかる経費を寄付額の5割以内に収めるよう義務づけるルールの厳格化を発表。市が試算したところ5割を超える可能性が出たため、10月以降の寄付額引き上げを決めた。 多くの自治体が返礼品の実質的な“値上げ”に踏み切った結果、9月の注文が急増する事態となった。仲介サイト「ふるさとチョイス」を運営するトラストバンク(東京)によると、7月から9月中旬にかけ、全国の自治体に寄せられた寄付額は、昨年同時期の1・5倍に上っているという。 市でも昨年の同時期と比べて寄付額が約5割増となり、ハンバーグを納入する地元業者の一つ「吉浦コーポレーション」では、想定外の増産に追われている。 ただ、今回の駆け込みは年末需要を先食いしている可能性もある。年末にどの程度の注文が来るのかは不透明になっており、同社の役員は「予想外の在庫を抱える懸念もある。ルールを変えるなら早く発表して、準備の期間を設けてほしかった」と不満を口にした。 物価高で箱ティッシュや洗剤人気 注文が急増しているのは食品だけではない。価格高騰が続く生活必需品を返礼品で求める動きが広がり、箱ティッシュや洗剤などが仲介サイトの人気ランキングに名を連ねる。 大分製紙豊前工場が立地する福岡県豊前市ではトイレットペーパーの返礼品に昨年同時期の数倍の注文が寄せられ、工場では、出荷作業が急ピッチで進んでいた。同社のトイレットペーパーは地元で回収した古紙などから作られる。九州内で5割以上の占有率を誇るが、全国では10%に満たない。同社製造部の中山智幸次長(48)は「返礼品としてトイレットペーパーに注目が集まるのは大きなチャンス。環境に配慮したうちの商品を全国で使ってもらいたい」と意気込んでいた。 「熟成肉」は返礼品から除外 10月に適用されるふるさと納税の新ルールでは、他県産の肉を材料とした「熟成肉」を返礼品と認めないことも明記された。総務省によると、一部の自治体で輸入牛肉を冷蔵し、地元産の熟成肉を名乗る事例が確認されたためだが、ほかの事業者からは「同一視されて規制されるのは納得いかない」との声も上がる。 福岡市中央区の食肉卸会社「アッドバリュー」の加工場では、九州各県から仕入れた牛の枝肉が布でくるまれ、温度や湿度を細かく調整できる庫内に並ぶ。同社の福富康馬こうま社長(41)は「数日から数か月たつと、肉の余計な水分が蒸発し、よりうまみが感じられるようになる。安全で、おいしい肉に仕上げるのは簡単じゃない」と言い切る。 2014年に創業。徐々にファンが付き、昨年8月に同市の返礼品に採用されたが、新ルールにより、返礼品から除外された。 総務省によると、冷蔵しただけの肉と、熟成肉を判別する基準を農林水産省と検討したが、策定に至らず、一律の規制に至ったという。 福富社長は「一部の事業者によって熟成肉の魅力をPRできる場を失ったのは残念だ。他にやり方はなかったのか」と疑問を呈した。(読売新聞) |
知らなかった・・・ほんと、早く教えてほしかった・・・