週末はトライアスロンが開催される・・
沿道には色鮮やかに幟が立ち並びコースを示す矢印の看板も既に設置されムードは高まっている。
そんな街の雰囲気を感じながら外勤を済ませ職場に戻るとジョージアのロング缶が三本、机のパソコンの横に無造作に置かれていた。
その重さに耐えかねて買い物袋の持ち手がベローンと伸びている・・・自転車のハンドルに吊るされたその感じ・・そう、あの集落のおじいだ・・・
前回は庭裏で栽培したトマトだった・・いつものおじいの気遣いだ・・・
そんなおじいの毎回の気遣いに申し訳なく思い、ヤクルトは飲まないよ！とある時ズバリ言ってしまった・・
だが、次からはコーヒーをくれる・・・
だから、おじい・・いいよ・・しかし、いつも遠慮しても何かを置いていく・・・
そんなこんなで、もういい加減、素直にもらうことにした。
「台風でよ・・・キビ畑でおじいが頑張った分じぇーんぶパアよ・・」
ある日、雨合羽着てびしょ濡れでやってきて、そん時差出してくれたロング缶はさすがに重くもらいづらかったぜ・・・おじい・・
あの時から人に譲らないでじぇーんぶ飲むことにしたよ・・・おじいの気持ち・・ロング缶ありだよ・・
普段はショート缶だけどおじいがくれるロング缶だけはスペシャルで好きになっている・・・
そんなおじいはいつも帰り際にはキビ畑の進行状況を淡々と語って去っていく・・・
今日は娘が那覇から来てるんで農協から肥料を買ってきて袋を並べた・・・などなど・・・
そうして、おじいがおばあに差し入れるヤクルトを渡しながらのいつもの面会を済まし事務所へやってきた。
「おじい、いつもありがとう・・・おばあはどうだった・・今日は何した？畑は？」
「済ましたさ・・・これからは暑くなるから朝五時に朝飯を食って畑をして、日が昇ったら帰る・・・明日は（雲を指さして）長くできる・・・それよりあんた新暦の８月８日におじいの米寿祝いがあるから家に来なさい・・・静岡、九州からも子供たちが来る・・あんたもじぇひいらっしゃい・・・」
御年８８歳のお祝いを８月８日に・・・メモる必要はないねおじい・・是非、いや・・じぇひ行かせていただきます。
おじいはいつものように自転車で去っていった・・・
最近、那覇在住の娘があんまりサビが酷いと新品の自転車を購入したばかりだ・・・
いけるんじゃん・・おじいなら・・トライアスロン・・自転車も新品だし・・
そう、エントリーしなくともおじいも立派なストロングマン・・
人生のトライアスラーですね・・
仕事を終え、帰宅すると退屈を持て余した愛犬が散歩を即す仕草で吠え立てる・・・
そう、おじいを見習って夕飯の前にひと運動・・目指せ貧弱ながらも気分はストロングマン・・・
少しだけ日が暮れ始めたボートヤードのある海辺へ
けど釣れなかったぜおじい・・・でも米寿祝いには釣った太刀魚を持っていくぜ・・・ロング缶ならぬロングフィッシュ(笑）
若者が着けそうな派手なＴシャツもつけます(笑) トライスロンもＴシャツあるし真似て・・・
なんて・・８月８日までまだ日はあるんでおじいに喜んでもらえるもんを真面目に考えます・・・
ＴＰＰなどどこ吹く風といわんばかりに、おじいは動じることなくサトウキビを今まで培ってきた手法で育て収穫し、
コンビニではなく行きつけの商店の陳列棚からでかい方の飲み物を選んで購入するのだ・・・
そういやーその昔、大学の経済学の講師が消費は美徳です。皆さんはどんどん消費してください・・との講義を聴いていて
婆ちゃんからは雑巾はボロボロになるまで大事に使用しろって教わったんでその時点で解らなくなったっけ・・・
それから間もなく綺麗にバブルといった泡は弾けたけど、だからといって未だにその正体たるや不明なままだな・・・
ＴＰＰですよ・・次は・・
ここから眺める島の綺麗な街灯り・・・素朴で素敵なおじい家の温かな灯もそのひとつ・・
生温いロング缶が飲みたいな・・今・・やせっぽちだけど何事にも動じないおじいみたいな強えぇ男になりたい・・
