今週お届けしてきたわが家の「もう一度訪れたい場所」、最終編はケニア。この国の名を聞いてもピンとこない方も多いかな?アフリカ大陸の東部に位置しインド洋に面したこの国は「野生の王国」として知られる場所。首都ナイロビはほぼ赤道直下、アフリカを代表する大都市だ。その名の響きから想像できるかも知れないけれど、日本からは果てしなく遠い国。ヨーロッパを経由する北回りであれインドやパキスタンを経由する南回りであれ、ケニアまでの道のりはほぼ2日がかり。そんな国へはじめて旅をしたのは今からもう15年も前のことになる。
この旅に求めていたのはケニアを目指す人誰しもが憧れるであろう手つかずの大自然、360度の地平線から昇り落ちてゆく太陽、そして何よりそこに生息するたくさんの野生動物たち。もともと動物が大好きだった2人だからケニア行きは思い立ったが100年目!といった感じて即実行に移された。大使館まで足を運んでビザを取り、検疫所まで出かけて黄熱病の予防接種をし、やはり普通の街歩きではない分旅の準備にも時間をかけた。にもかかわらず…インド編でも書いたように大いなる憧れを持って臨んだケニア行きはムンバイ(当時のボンベイ)でのトランジットの際に運悪くぶつかったエア・インディアの期限なきストライキにもろくも撃沈。いつケニア行きの飛行機が飛ぶかもわからない状況の中、毎日訪れたぐちゃぐちゃに混雑した空港のロビーにしゃがみこみ、もうこのままケニアの地を踏むことなく日本へ帰国することになるのかも?そう思って涙した。結局予定より3日遅れで私たちはなんとかケニアの首都ナイロビに降り立った。暗い空港内で緊張しながらケニア・シリングへ両替し、出迎えの人を待った時のことはおぼろげながらまだ記憶に残ってる。
ただでも遠い道のりは3倍にも4倍にも感じられたけれど、憧れの地に到着できたことで気分は最高潮。それはその時のたくさんの写真を見ていてもわかる。現地の言葉スワヒリ語で「旅」を意味する「サファリ」はナイロビの空港を出発した時点からすでにはじまっていた。大きな都市とはいえ、少し走ればもうそこは野生動物の宝庫。車窓からあちこちに群れをなすシマウマやキリンの姿を目にした時の興奮のしようといったら言葉にならない。苦難の道のりだったからこそ喜びも大きかったことだろう。が、しか~し…そんな気分もほんのつかの間。キリマンジャロのふもとにあるアンボセリ国立公園での滞在を終え、いよいよケニアとタンザニア両国にまたがる野生動物の多さではケニア一というマサイ・マラ国立保護区(タンザニア側はセレンゲティ国立公園)に到着後間もなく、またしても撃沈。一番楽しみにしていた場所へ到着した安堵感からか、はたまたそれまでの疲労からか、あるいははしゃぎすぎか、完全なる脱水症状を起こした私は丸々1日寝たきりとなった。
朝晩はゲームサファリに興奮し、日中はサバンナを行き交う動物たちを眺めながらプールサイドでお昼寝。思い描いていたケニアでの旅の現実はずいぶんと歪んだものになってしまった。それでもなおやっぱり行ってよかったと心から思えるのはこの国からもらって帰ってこれたたくさんの思い出があるから。アンボセリ、マサイマラ、そしてナクル湖というケニアを代表する野生動物の宝庫で出遭ったたくさんの動物たち。果てしなく続く地平線に立つアカシアの木。時おり姿を現す小さな村で出会った無邪気な子供たち。日本での生活とはかけ離れた時の流れ、そして人間が決して手を出してはいけない自然界での掟。そんなものに触れることで変わった人生観。人間なんて、なんてちっぽけなものか、と…
ここケニアに来たいと思った時に手にした本が「アフリカ・ポレポレ」。動物写真家の岩合光昭さん一家のアフリカ(タンザニアのセレンゲティ)での暮らしを記録した本で、その波乱に富んだ1年間を、奥さんの日出子さんが娘の薫ちゃんをメインにして書いたもの。日本での生活や価値観を否定する必要は全くないけれど、でも世の中には全く違った考え方やそこから生まれる別世界があるっていうことをはじめて教えてもらった。そして同時にどうしてもその舞台となるアフリカのサバンナに行きたくなってしまった。ただ当時はまだタンザニアへの旅はとても危険を伴いそうな状況だったので、セレンゲティから地続きのケニアへの旅に落ち着いたわけだ。
「ポレポレ」とは現地の言葉で「ゆっくり」を意味する。その通りアフリカでの時間はゆっくりゆっくりすすんでいく。もうずいぶん昔の旅だから思い出すことも少なくはなったけれど、時おりふっと急ぎ足の自分に気づいて「ポレポレで行こう」とつぶやく。今自分たちがいる生活の中ではなかなかそうも言っていられないのが現実だけれど。次回のケニアでの旅はぜひ「ポレポレ」でいきたい。本の中で薫ちゃんがシマウマに話しかけるくだりがある。「その背中にのせておくれよ。」私もシマウマにそう話しかけてみたいから。
写真上段:マサイ・マラでのサファリで出遭ったチーターの親子
写真下段:憧れていたサバンナの風景
みなさんからのコメントはいつも楽しく読ませていただいています。ただ諸々の理由によりこの年明けからコメントへのお返しはしていませんのでどうぞご了承下さい。また旅関係のご質問やリクエストに関しては、できるだけ今後のブログ上に反映させていきたいと思っています。
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