2020年1月から、新型コロナウイルスに翻弄された1年10ヶ月でした。感染者数が激減し、日本にようやく落ち着いた日常生活が戻ってきていました。この機会に、これまでの日々を振り返ろうとしていたところ、気になるニュースが飛び込んできました。南アフリカで広がっているという新規の変異株のことです。一昨日、11月26日にWHOによって、この変異株は「オミクロン株」と名づけられました。
震源地の南アフリカの保健省(と訳していいのかわかりませんが、そのような部署だと思います)のHPを紹介してくれる人がいたので見てみました。スライドになっていて、発見の経緯等、綺麗にまとまっていました。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花」ではありませんが、正確な情報なしに、怖い怖いという報道ばかりでは、不安だけが募るのではと思います。何より辛いのは、本当の情報が何なのかわからなくなることだと思います。まさに武漢ロックダウンの時がそれで、正確な情報がきちんと出されていなかったこと((参考)WHOの役割とは? —-戦いの歩み 1—)が、振り返ってよくわかります。今回もそうしたことはないだろうか?何か隠されているんじゃないだろうか?日増しに妄想が膨らんでしまうことにもなりかねません。
南アの保健省(繰り返しますが、この訳語でよいかはわかりません)のスライドは、実に率直で端的にまとめてあり、とても参考になりました。きっとこのオミクロン株とは戦うことになると思いますが、その前に敵をきちんと知る第一歩としてよい資料だと思いました。
そのスライドの中から、細々としたことを一切気にせずに(「保健省」という訳からして当方の実力を察してください(笑))ざっくりと、参考になりそうなところを簡単に抜粋してみました。現在の状況が少しでも正確に伝われば、不安をただ膨らまして苦しむことなく、正しく戦う姿勢をとることに繋がるように思います。読んでいただいた方に少しでも参考になれば幸いです。誤訳上等(笑。いやホントです。)ですので、そのように思って読んでください。苦情は受けつけません(笑。いやホントです。)ので、ご自身で確認できるように、アドレスを貼っておきます。
(詳細アドレス)
リンクをつけましたので、ここを押すと確認できます。左下の数字の左右の<や>を押すとスライドが動きます。
中から、いくつかスライドを抜粋してみます。
このスライドに、今回の発表までの経緯が記されています。11/23に変異株を認識し、緊急会議をしたりしていたところが、11/24にボツワナと中国(南アフリカからの旅行者)から似たような変異株の感染者が出たことが報告されたため、11/25に大臣、大統領に報告し、すぐにメディア発表になったようです。その間、たった3日です。
国内の専門家で検討していたものの、海外からの発表もあったため、全世界的な問題なるかもしれないと判断し、発表を急いだのでしょう。それにしても、ターゲットと認識されてから、現在でもまだ1週間も経っておらず、極めて日が浅いことがわかります。武漢の時のように、すでにどうにもならなくなってるのが隠蔽されていた、ということではなさそうだとわかります。
その南ア政府の発表を受けて、南アとの関係が深い英国が迅速に渡航制限に踏み切ったため、全世界に知れ渡りました。1週間も経たずに各国の渡航制限まで進んでいて、極めて迅速に対応されている印象です。すごく素早く南アは情報公開をしてくれているのです。
このスライドは、南アフリカの新型コロナウイルスの感染状況のグラフです。横軸が年月で、昨年初めから現在までのおよそ2年にわたるグラフになっています。Aprは4月、Julは7月、Octは10月、真ん中の2021と書いてあるところが2021年1月です。小さくて見にくかったら申し訳ありません。とにかく右端が現在です。上は新規感染者数のグラフで、下は実効再生産数(一人が何人に感染させているかという数値)のグラフです。
まず上の新規感染者数のグラフ、これを見ると、南アフリカには大きく3つの波がありました。他のスライドから補足すると、前の2つの波がベータ株によるもので、最後の第3波が日本と同じデルタ株によるものでした。そして現在は、このデルタ株による第3波がおさまって、新規感染者数が日本のように減少して安定しているところだったのが見てとれます。
今回の英国の行動が急だったため、南アがあたかもオミクロン株でパニックになっているかのように誤解されがちですが、このグラフを見るとそうではないことがわかります。新規感染者数が爆発しているわけでもなく、むしろ落ち着いています。医療崩壊を来していたり、パニックになったりしているような状況ではなく、武漢ロックダウンの時のような遅い情報の出し方ではなく、早い段階で発信された情報であることがわかります。少なくとも、感染が防げなくなって、隠せなくなって出さざるを得なくなったような情報ではないことがわかります。そう考えると(もちろん不安は消えませんが)、少し落ち着いて対処する気持ちが持てるのではないでしょうか。(繰り返しになりますが、南アがとても素早く情報公開をしてくれているのがすごくよく伝わってきます。)
ですから、上のグラフだけでは、その危機感はわかりません。感染者数全体が少ないのに危機感を持つ理由が、下の実効再生産数のグラフに示されています。実効再生産数は、1人が何人の人に感染させるかを表す数字です。1より多くなれば、感染者数は増えるというアレです。グラフの真ん中に点線が引かれており、それが1のラインです。1を大きく下回っていたものが、最近(右端)になって急激に増加に転じていることがわかります。その上昇カーブも、これまでになく急激であるように見えます。現在1.47であり、特にオミクロン株の感染が確認されているGauteng(ハウテン州と言うようです。ヨハネスブルグなどがある州のようです。)では1.97と特に高い値が短期間で観測されていると、下に補足されています。今は新規感染者数が激しく増えてはいないものの、「今までにない、説明のつかない急激な感染の広がりが起きつつある」「今後激しい感染が起こる可能性が高い」と考えられる、ということです。
このスライドは、ハウテン州にあるツワネ都市圏でのPCR検査の陽性率の週ごとの変化です。第3波が収束して落ち着いていたのに、3週間で、あっという間にある地域を中心にPCR検査陽性率が3割(赤色)を超えています。これは急激な感染の広がりと、感染の中心がまさにうかがえる図で、今までにない何かが起きていることがわかります。
(厳密に言えば、どの程度の検査が施行されているかわからないため、一定のバイアスがかかりますが、急激な広がりが生まれていることに間違いはないでしょう)
そして、この実効再生産数やPCR検査陽性率の急激な上昇とともに観測されたのが、B.1.1.529変異株(オミクロン株)でした。デルタ株が支配していたはずの世界で、デルタ株を凌駕する感染力を持つ変異株の出現が感知されたわけです。
このスライドは、南アでの変異株の割合です。縦軸が割合で、横軸が時間軸です。初めは緑色のベータ株が支配していたのが、完全に赤色のデルタ株に置き換わり、右端のわずか数週間で、短時間で急速に青色のB.1.1.529いわゆるオミクロン株に置き換わっているのがわかります。
もちろん、初めのグラフで見るように、感染者総数は少ないですから、ある一定のバイアスは考えないといけません。しかしながら、感染力で他の追随を許さず、ほぼ世界を征服していたデルタ株(一説にはある時期には観測される変異株の9割以上がデルタ株と言われていました)が、感染力において初めて負けているのが十分にうかがえるデータです。
この勢いが本当であるならば、今まで無双を誇ってきたデルタ株の牙城はとうとう突き崩されることになるだろうと思われます。ウイルスの世界に、オミクロン株の治世が訪れることになってもおかしくないデータです。
まさに、デルタ株に変わる変異株の出現を察知し、脅威が感じられたその時点で発表されたデータであることが、このスライドたちからうかがえます。感染が爆発したり、重症者で病院が溢れかえっているから英国は渡航制限に踏み切った、ということでは全くなく、かなり初期のデータ分析で、デルタ株が凌駕される危険性が高いと判断し、早々に渡航制限をした、ということで間違いないと判断することができます。
オミクロン株に現状のワクチンが効果あるかわからない、というのも本当でしょう。あふれるような大勢の患者が出ているわけでもなく、検知してから1週間も経っておらず、せいぜい10月末ぐらいからの発生データしかありません。オミクロン株の病原性、凶悪性についても、まだ知見が得られていない、というのも本当のことで、これからデータを集めていくことになるのだとわかります。(繰り返しになりますが、南アがとても素早く情報公開をしてくれているのがすごくよく伝わってきます。)
武漢の時とは違います。隠蔽されていることはなさそうです。
「全てはこれから」で間違いなさそうです。
ならばするべきことは何でしょう?
現在の段階であれば、封じ込めを諦めるときではありません。ですから、英国は速やかに渡航制限に踏み切ったわけです。感染対策として、極めて正しい判断だと思います。またWHOは文句をつけるのでしょうか?
武漢の時は、国際社会に向けては、封じ込めすらしませんでした。武漢だけ封じ込めて、国際的にはばら撒いたわけです。WHOは中国に渡航制限をした国々を批判しました。
今回もWHOは渡航制限を批判するのでしょうか?おそらくですが、今回はしないような気がします。それは、WHOがお伺いを立てている国がオリンピックを控えていて、今、感染が爆発するのは脅威だと思われるためです。さらには、政府の指導力をアピールするために他国のmRNAワクチンを使用するわけにいかず、ゼロコロナ政策をとるしかない国にとっては、大変な脅威であり、国内の感染が広がるきっかけになどなれば、政府の信頼に大変な痛手を負う危険性があると思われます。今回はWHOに各国の感染対策の足を引っ張るようなことはさせないような気がします。閑話休題。
このスライドはまとめです。
最後に、まだ十分な知見が得られておらず、ワクチン接種の重要性は変わらない、と書いてあります。
以上、簡単ですが、抜粋してみました。英語が苦でない方は、どうか直に一度ご覧ください。
デルタ株の強力な感染力を凌駕しているのですから、オミクロン株の感染力はきっと凄まじいものがあることでしょう。香港の報告では、ホテルの向かいの部屋の宿泊者に感染した可能性もあるとのことです。
ただ、病原性が強くなければ、これは終息株になります((参考)新型コロナウイルス —-見えてきたかもしれない光 2—)。デルタ株は、ワクチンの力で病原性が落とされ、終息の姿を形作りました。しかし、本来の病原性は凶悪であるため、本当の終息にはまだ道半ばと言えました。このオミクロン株が、感染力が爆発的でも病原性が弱いことを願ってやみません。ここからとにかく情報を集めましょう。そして、できるだけ冷静に戦うことができたら、と願っています。
読んでいただいた方の参考になれば幸いです。
(閑話休題)
WHOは変異株の名前を、アルファから始まって、ギリシャ文字の順番に沿って名づけてきました。ところが、今回の変異株を「オミクロン株」と名づけるに当たり、ギリシャ文字のニューとクサイを飛ばしました。ネットニュースによると、ニューはnewと勘違いされるから(勘違いされても問題ないと思いますが)、クサイは人名と勘違いされるといけないから、とのことでした。クサイとは英語表記でXiと記載し、ある国家の最高指導者の名前の英語表記と同じになるそうです。どこまで忖度をするつもりなのだか、という気がしますし、もう隠す気がないのかな?とも思えました。クサイだけ飛ばすと変なので、いっそニューも飛ばしたのでしょう。WHOの職員の中に、ギリシャ文字の中にXiを発見して、そこまで順番に変異株が生まれてしまったらどうしたらよいか、とハラハラしながら胃を痛めて考えていた職員がいたかと思うと、そしてついにその日が来たかと思うと、、、なんともはや。
クサイを飛ばして、その結果、名づけられたのが「オミクロン」です。なんと日本の専門家会議から分科会に渡るまで、ずっと奇跡のような正しい判断((参考)消えた第1波 —-戦いの歩み 3–- (今後も続けるつもりです))を続けてして下さった先生の名前が入っています。私は、オミ先生が日本にいてくれて本当によかったと思っています。その縁起のいい名前の入ったこの「オミクロン株」が終息株であらんことを、強く願っています。閑話休題。
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