「トラックの女王」福士選手が北京五輪代表選考も兼ねた大阪国際女子マラソンに出場しました。
福士選手はこれが初マラソン。練習でも32km以上は走ったことがなく、準備も1ヶ月半。その内容も、「トラックと同じスピードでロードを走る」ことを主眼にしたとか。
42.195kmは未知の距離というわけです。
結果、前半独走も30km過ぎて失速、35km手前で後続に飲み込まれ、最後は何度も転びながら息も絶え絶えにゴール。記録も2時間40秒台、19位と惨敗したそうです。
・・・選手には失礼かも判りませんが、やっぱり競馬が想起されてしまいます。
最強のスプリンター(1000mとか1200mとかの短距離で強い馬)が、2400mとかのレースに出て、スプリンターのレースをして逃げてみたら惨敗した、みたいな。
まさに「距離の壁」が立ちはだかったんだろうな;
私は「逃げ馬」が大好きです。それも「大逃げ」と呼ばれる逃げをする馬。
スタートから飛ばして先頭に立ち、スピードに乗って後続に差をつける。独走する。が、そんなペースで逃げた馬はたいてい最終コーナーを回った頃にスタミナ切れになり、息も絶え絶えになって後続の馬群に飲み込まれ、惨敗を喫することになります。
が、ごく稀に、そのようなレース運びでも追撃をかわしきり、勝ってしまうケースもあります。重賞でこれが起こると「伝説」になります。
これがねぇ、好きなんですよ。たまらなく好き。
ほとんどの場合、惨敗するので、そんなに格好よくはないですよ。見る人によっては、「ばかみたい」に見えるかもわかりません。最初から「絶対に勝つ」ための戦術としてはふさわしくありません。一か八か、勝てば御の字のような作戦です。
けどそうするにはそれなりの理由があるようです。例えば、臆病で、周りに馬がいると怖がって能力を発揮してくれないから最初に先頭に立たせるようにしてるとか、そもそも能力的にライバルよりも劣り、正攻法のがっぷり四つでは敵わないだろうから、思い切った手を打ってみるとか。
強い逃げ馬がいると、その対抗策は悩ましそうです。
「どうせ終盤失速する」とたかをくくって自分のペースを守っていて、思ったほど失速しなかったら?追い込んでもついに追いつけず、まんまと優勝をさらわれるかも。
かと言って、早めに捕まえに行ったら自分もハイペースになり、スタミナ切れになって、その逃げ馬とともに失速し、他の馬に優勝をさらわれてしまうかも。
そういう相手陣営をかく乱する駆け引き、作戦の妙もあります。
要するに何が言いたいかというと、本当に強い王者には相応しくないというか、例えば横綱が横綱相撲をして勝つべくして勝つような、そういう作戦ではないぞと。
けど好きなんです。逃げ馬。
逃げ馬は、脚を余して(余力を残して)負けることは絶対にありません。終盤はスタミナを温存した強い連中が鬼のような脚で追い込んできます。けど、逃げる。先頭でゴールに入線するために。必死の形相で。
この辺りは感覚的なもの、好き嫌いなので、言葉で説明してもわからん人には伝わらないと思いますが、そんなところがなんかイイと思ってしまうですよねぇ。
レース前までの福士陣営は自信満々の様子でした。男子では、トラックでも強くてマラソンでも世界記録を出した「皇帝」ゲブレシラシエの例もあります。ハーフマラソンではアテネ五輪の金メダリストにも勝ってます。他陣営からみたら、いかにも「強そう」です。
これも駆け引きのうちだったのかも。
けど、やっぱり初マラソンなわけだし、不安がなかったはずはないと思います。練習で敢えて42.195kmを走ってみなかったのは、それをやったら、結果によっては不安が首をもたげてきて、本番にマイナスになるかも知れないからだったのかな?
もし、練習で、1度でもそのことが判ってしまったら、福士選手は自分を信じて、トラックのときと同じような走りをすることはできなくなってしまうことになるでしょう。
そもそもマラソンの正攻法で百戦錬磨のマラソン選手と勝負するのは、それまでの
福士選手の走り方ではないわけだから、「後半スタミナが切れる」と練習段階で
わかったところで、そんなに意味のあることとは思えません。
福士陣営の選択は初めから「逃げ」しかなかった、そして、この結果も「当然、有り得る」と考えていただろうと想像します。走ったことないんだもの。
全部勝手な想像に過ぎませんが、そんなわけで、決して「マラソンをなめていた」わけではなかったんじゃないんかなと思えるのです。
福士選手はこんな結果になっても「初マラソンは楽しかったなぁ」と笑ったそうです。春からは本来のトラック種目で五輪に挑むとか。
結果は失敗でしたけど、偉い人がいうには、失敗はそこから学んで次に良い結果につなげるチャンスなんだそうですよ。
プロの目から見て、福士選手の走るフォームは素晴らしいそうです。
次にマラソンを走るときがあるのかどうかは判りませんが、次やるとしたら本格的に練習して、正攻法で挑んで欲しいな。
って素人が思うほど簡単にはいかないのでしょうが;
レースの模様は録画してなかったので見られていません。一世一代の、きっともうできないだろう一度きりの、その素晴らしい逃げっぷりを見たかったなあ、と記事を読んでて思いました。
明日はハンドボール女子ですよ。男子のチケットは速攻完売だとか。ハンドボールにも春が来た!
下馬評はどっちが強そうなのかとか全然知りませんが、録画して楽しもうと思います。