未来を拾いに

aikoのことしか頭にないひとのブログ

異聞・ミッドウェー海戦

2006-06-24 04:59:35 | 雑記

高校時代に読んだ本です。 
タイム・マシーンを過去に行くのに使うパターンのSF短編集。数々の歴史の分岐点にて歴史改変を目論む時間犯罪者と、それを摘発するタイムパトロール隊員の攻防。この作品は、その模様を目撃した当時の時代人の手記という形で構成されている点が特徴的で面白いところです。文体も、当時の日本の口語を思わせるような形になっています。 

この本には6本の「歴史改変未遂事件」が収録されています。簡単にご紹介しておきます。 

「白村江異聞」 
韓日に跨る大百済帝国の実現を目論む時間犯罪未遂事件の顛末を百済の亡命王子の従者の視点から描きます。蘇我蝦夷・入鹿父子の陰謀から大化改新のクーデターを経て白村江の敗戦に至るまでの時代に大胆な解釈で切り込んでいます。印象には残りにくいのですが、なかなか読む機会の少ない時代を扱った貴重な作品ではないかと思います。 

「壬申乱異聞」 
天智天皇暗殺説の決定的物証となるような史料(無論SFなので架空ですが)です。 

「信長公異聞」 
本能寺の変で信長の命を助けようとする時間犯罪の話です。時間犯罪者に暗示を受けた喜三次(連歌師里村紹巴の弟子という設定)が光秀の「時は今・・・」の発句から叛意を察知し織田方に通報するか苦悩します。よくあるパターンですが題材が題材だけに面白いです。 

「清正公異聞」 
秀吉の第一次朝鮮出兵の陣で加藤清正を亡き者にし、第二次出兵を阻止しようとする時間犯罪者との遭遇を描いた「対馬の要次郎」の手記という形を取っています。 

「尾張名古屋異聞」 
将軍吉宗と尾張宗春の経済政策合戦の史実は、実は名古屋を日本一にしようと企む20世紀の経済学者の指導によるものだった!この本の中で最も気に入っている一編です。タモリも登場します。ユーモアセンス溢れる一品。 

「ミッドウェー異聞」 
海上自衛隊の護衛艦「くらま」が、演習中に突然1942年6月の太平洋上にタイムスリップ。自衛隊の誇る最新鋭の艦対艦ミサイルが米空母ホーネットに向け発射スタンバイ・・・。結末は買って読んでくださいませ。 

全体的に時代考証が秀逸で架空歴史モノとして面白いです。歴史とSFがお好きな方は是非。短く読みやすいので一気に読めると思います。