
押利鰤子(おしり ぶりこ)です。
幅広いジャンルのエッセイを書いていますが、今日は特に「忘れていく」というテーマについて、自分自身の経験や考えを綴ってみたいと思います。
時間と共に忘れ去られていく記憶の断片。
私たちは日常の中で、様々な出来事や感情を経験しますが、それらがいつしか風化していくのは不思議なことです。
幼少期の思い出や大切な人との出会いなど、一度も忘れたくないと思っていたはずの出来事も、時間の経過とともに徐々に薄れていきます。一体なぜ、私たちは忘れてしまうのでしょうか?
認知心理学の観点から考えると、記憶は保存と再生のプロセスで成り立っていると言われています。
私たちの脳内には、情報を保存する記憶の倉庫である「長期記憶」と、一時的に情報を保持する「作業記憶」というものがあります。
日常の情報は、一時的に作業記憶に保持されますが、その後、重要な情報や個人的に興味を持った情報が長期記憶に保存されます。
しかし、長期記憶は時間とともに情報が再度アクセスされることがなくなり、その結果、風化してしまうのです。
また、新しい情報や経験が蓄積されるにつれて、古い情報は意識から遠ざかる傾向があります。
これは「置換効果」と呼ばれ、新しい経験が古い情報を上書きし、忘れてしまう原因の一つと言われています。
さらに、忘れるという現象は、記憶の再生における誤りや歪みにも関係しています。
私たちは記憶を再生する際、過去の出来事を正確に再現するのではなく、自分自身の経験や感情、思い込みに基づいて再構築してしまうことがあります。
この再構築の過程で、情報が歪められ、本来の出来事とは異なる形で記憶されることがあります。
忘れていくという現象は、私たちの脳の働きの一部として自然なものであり、避けることはできません。
しかし、忘れることによって新しい情報や経験を迎え入れ、成長し続けることができるのです。
私たちは忘れてしまったとしても、失ったものではなく、その経験や感情が私たちの中に刻まれていることを忘れてはいけません。
過去の経験や思い出は、私たちが今後の生活や将来の選択において、価値あるものとなるのです。
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