最近、押利鰤子は新たなジャンルに挑戦していた。
それが、寓話だ。
人間の心情や喜怒哀楽を象徴的に表現することに興味を持ち、寓話の世界に飛び込んだのだ。
ある日、押利鰤子は新しい寓話を思いついた。
それは、「わさび侘び寂び」という題だった。
物語は、静かな山奥に住む老いたサルの話から始まる。
老いたサルは、昔は元気に木々を駆け巡り、仲間たちと騒がしい日々を送っていた。
しかし、年を重ねるにつれ、彼の姿はますます疲れ果て、ひっそりと暮らすようになっていた。
ある日、老いたサルは山の中で美しい蓮の花を見つけた。
その花は一際咲き誇り、清らかな光を放っていた。
老いたサルはその花に心を奪われ、毎日のように通い詰めるようになる。
しかし、ある日、その蓮の花が枯れてしまった。
老いたサルは深い悲しみに包まれ、それを乗り越えられないでいた。
そんな時、老いたサルの元に、若いサルが現れた。
若いサルは、老いたサルにこう言った。
「わさび侘び寂び、それが生きる喜び。枯れる花も美しい姿を見せることができるからこそ、生命の輝きを感じるのです」
老いたサルは、若いサルの言葉に心を打たれた。
そして、自分が歳を重ね、疲れ果てていくことも、それ自体が美しい営みであることを理解した。
彼は再び山々を駆け巡ることを決意し、新たな喜びを見出すのだった。
押利鰤子は、この寓話を通じて、人々に生命の尊さや美しさを教えることができた。
言葉の力で心を動かし、深い哲学を綴ることができる――そのことに、彼は強い喜びを見出していたのだ。
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