魔界の住人・川端康成  森本穫の部屋

森本穫の研究や評論・エッセイ・折々の感想などを発表してゆきます。川端康成、松本清張、宇野浩二、阿部知二、井伏鱒二。

ついに確定された鴎外「舞姫」エリスの実像! 六草いちか『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』

2013-04-24 02:04:48 | エッセイ 文学
 ドイツに留学した森鴎外を追って、明治21年(1988)9月12日に横浜湊に到着したエリス。
 「舞姫」のモデルとされたこの女性の実像は、125年間も、謎のままであった。
 今から30年ほど前の昭和56年、横浜港に着いた旅客船の乗船名簿から、彼女の名前は確定されたが、その後の様々な調査でも、彼女の実像は明らかにはされなかった。
 法律学者でベルリンに客員教授として滞在した植木哲の調査も、いいところまで行ったが、その名前が違う点に、難点があった。
 この書の少し前に出たNHKディレクター今野勉の新説も、いいところまで行っているが、やはり、乗船名簿と名の違うところが問題で、首肯することはできなかった。
 ところが、この六草いちかという、日本ではほとんど無名の一女性は、見事な調査によって、ついにエリスの父母、妹も含めて、エリス自身を特定したのである。
 125年間の謎が、ついに明かされた。
 この著者に深い敬意を払いたい。私は森鴎外の専門家ではないが、かねてよりこの問題に注目してきた。この書のたどり着いた地点は、間違いなく終着点である。
 近いうちに、森鴎外を専門とする研究者たちからも認められるだろうが、この書は、積年の謎についに決着をつけたという意味で、大きな意味を持つ。
 大きな賞をあげて、この事実を世間に広く知らしめるべきである。
    森本 穫(おさむ)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿