パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

やさしい嘘 ★★★

2016年01月30日 | DVD作品ーま行、や行、ら行
小国グルジアを舞台に、愛する家族のためについた一つの嘘をめぐって、母娘三代が抱える葛藤と心の絆を優しく描いたドラマ。
主演は85歳で映画デビューを果たし90歳目前に出演した本作でも高い評価を受けた「めざめ」のエステル・ゴランタン。監督はこれが長編デビューのジュリー・ベルトゥチェリ。

<感想>あなたは愛する家族のために嘘をついたことがありますか~遠く離れたパリで暮らす、愛する息子オタールの死。エカおばあちゃんを悲しませないために、娘と孫はオタールのふりをして手紙を書き続けることを思いつく・・・。カンヌ映画祭批評家週間など、各国で絶賛され数々の映画賞を受賞した傑作!
ソ連の崩壊以来、いまだ困窮しているグルジアの首都。日本の約5分の1の面積しかない小さな国。ソビエト時代はワインやお茶などを産業とする農業国だったが、ソ連崩壊後は、行政が混乱し、断水や停電もしばしば起きることも映画の中で描かれている。貧しい国だが、物がないからこそ家族が肩を寄せ合って暮らす、人々の優しさと温かさが、この作品の一番の魅力でしょう。

カお婆ちゃんの一番の感心事は、パリに出稼ぎに行っている息子オタールのこと。一緒に暮らす娘マリーナとは、常に喧嘩が絶えない。それを仲裁するのが、オタールの手紙を読んで聞かせる孫娘のアダの役割なのだ。
そんなある日のこと、工事現場でオタールが事故死したと知らせが届く。マリーナとアダは、エカ婆ちゃんを哀しませないためにも、偽りの手紙を読み続けることになるのだが。この映画は、以前見た「グッバイ・レーニン!」に似ているような内容。
母と娘3代の愛情や葛藤の物語も、大切な人を哀しませないために、相手を思うあまり嘘をつき続ける話し自体にも、なんだかそこに目新しさが感じられない。しかし、実の母娘だからこそ衝突する姿、それでも互いへの愛情は強く、深いところで繋がれた絆に、本能が震える感覚を覚える。

きばつさをてらわない静かな演出も、3人のキャラを次第に浮き立たせて効果的に使われていると思う。エカ婆ちゃんを演じた女の人は、なんと85歳で女優デビューしたというから、驚いた。どおりで演技というよりも、そのままの自分を表現しているような、そんな感じがした。たとえば、マリーナに髪の毛をシャンプーしてもらうシーンでも、じゃけんにわざと大声で嫌がったりする。娘に甘えているのだろう、老人とはこういうもんだから。それにこの婆ちゃんは、タバコを楽しみ、フランス語に堪能でルソーを読み、行動力もあるのだから驚く。とにかく、ラストの、祖母の感情の変化や粋な切返し、それを受け止める二人の哀愁がたまらなくよく、ラストが秀逸です。
それと、同じような内容で認知症の妻を愛してやまない夫の物語でやさしい嘘と贈りものも大変良かったです。
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