元夫のDVから幼い一人息子を守ろうとする女性をヒロインに、恐怖や疑心といった人間の心理を鋭くえぐり出すノルウェー発のサイコ・スリラー。息子への愛ゆえに精神がむしばまれていく母親を、『ミレニアム』シリーズで主要キャラのリスベットを演じたノオミ・ラパスが演じ、『ジャンク・メール』でカンヌ映画祭批評家週間最優秀賞を受賞したこともあるポール・シュレットアウネがメガホンを取る。危うい精神状態の母親を熱演するノオミの迫真の演技に注目。
あらすじ:夫の暴力が原因で、郊外に居住することになったアナ(ノオミ・ラパス)と8歳の息子のアンデシュ(ヴェトレ・オーヴェンニル・ヴァリング)。息子の安全のためアナは電器店で監視用音声モニターを買う。ある晩、モニターの混線により子どもの悲鳴を聞いたアナは、ほかの部屋で子どもが暴行を受けているのではないかと考え始める。
<感想>よく出来ているサイコスリラーです。世界一生活の豊かな国ノルウェーのどこの国にもある家庭内暴力を扱っていて、中々主人公のノオミ・ラパスが見せてくれます。保護監視プログラム、音声監視モニターなどの道具立ても用意周到に、物語はうまく仕組んであると思う。
ポール・シュレットアウネ監督の語り口も妙なケレン味を使ってないのがいい。監督自ら演じている男、主人公の彼女の置かれた状況が自分の母親との生活と似ており、つい同情して彼女の被害妄想にも付きあっていく。それより何よりも主演のノオミ・ラパスの演技が見もので、「ミレニアム」シリーズもそうだったけれど、どこか病的な感じを体の芯から出していて、圧倒的な存在感を示しているのだ。
ノルウェーの建物、青白い色調で、北欧的な無駄のない冷たい感じがする部屋の様子、調度品などを背景に、夫の暴力より逃れてきた母と子が何かに怯えながら暮らしている。しかし、この母親は働いてない様子。何かが変だと気になり始め、勘のいい人はもしや?・・・と気づくはずです。
大人から子供まで誰もがいかにも意味深な様子で、気を許して見ていられる人物が一人も出てこない。それがスリリングな緊張感に繋がっていればいいのだが、ただ重苦しい不快感が募ってゆくのが恐怖を煽って恐ろしくなる。
アナ個人の妄想と真相が入り交る構成は、基本となる事実の語りをおろそかにしがちになっており、本作でも怪しげなカットを断片的に並べておいて、あとは見た人の脳内でつなげて下さいという、うやむやにしているところが多いのが残念ですね。
タイトルの小道具も品質の悪さと店員の不手際をあらわにしたような気がした。チャイルドコールという無線機みたいなもの、ベビーベットの傍に置き、赤ん坊の泣き声とか別の部屋で聴いて、急いで駆け付ける母親。それが、彼女の妄想で現実ではなく、息子はすでに亡くなっており、聞こえてきたのは50メートル四方の虐待を受けている子供の声だったという、そして、アパートの駐車場で寝袋に子供の死体を入れて車で持ち去ったという現実。
森の中で、湖があったと思ったのは駐車場だった。しかし、その傍に子供を埋めていたのは本当のことだったとは、彼女が被害妄想で神経がいかれているといわんばかりに、アパートの管理人も児童福祉の人たちも彼女の精神状態を異常だと思っているから、よけいにややこしくなり、親切にしてくれた男と親しくなったのに、結局は自殺を選んでしまったことが、見ていて悔やまれてならなかった。
2013年DVD鑑賞作品・・・42 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキングへ
あらすじ:夫の暴力が原因で、郊外に居住することになったアナ(ノオミ・ラパス)と8歳の息子のアンデシュ(ヴェトレ・オーヴェンニル・ヴァリング)。息子の安全のためアナは電器店で監視用音声モニターを買う。ある晩、モニターの混線により子どもの悲鳴を聞いたアナは、ほかの部屋で子どもが暴行を受けているのではないかと考え始める。
<感想>よく出来ているサイコスリラーです。世界一生活の豊かな国ノルウェーのどこの国にもある家庭内暴力を扱っていて、中々主人公のノオミ・ラパスが見せてくれます。保護監視プログラム、音声監視モニターなどの道具立ても用意周到に、物語はうまく仕組んであると思う。
ポール・シュレットアウネ監督の語り口も妙なケレン味を使ってないのがいい。監督自ら演じている男、主人公の彼女の置かれた状況が自分の母親との生活と似ており、つい同情して彼女の被害妄想にも付きあっていく。それより何よりも主演のノオミ・ラパスの演技が見もので、「ミレニアム」シリーズもそうだったけれど、どこか病的な感じを体の芯から出していて、圧倒的な存在感を示しているのだ。
ノルウェーの建物、青白い色調で、北欧的な無駄のない冷たい感じがする部屋の様子、調度品などを背景に、夫の暴力より逃れてきた母と子が何かに怯えながら暮らしている。しかし、この母親は働いてない様子。何かが変だと気になり始め、勘のいい人はもしや?・・・と気づくはずです。
大人から子供まで誰もがいかにも意味深な様子で、気を許して見ていられる人物が一人も出てこない。それがスリリングな緊張感に繋がっていればいいのだが、ただ重苦しい不快感が募ってゆくのが恐怖を煽って恐ろしくなる。
アナ個人の妄想と真相が入り交る構成は、基本となる事実の語りをおろそかにしがちになっており、本作でも怪しげなカットを断片的に並べておいて、あとは見た人の脳内でつなげて下さいという、うやむやにしているところが多いのが残念ですね。
タイトルの小道具も品質の悪さと店員の不手際をあらわにしたような気がした。チャイルドコールという無線機みたいなもの、ベビーベットの傍に置き、赤ん坊の泣き声とか別の部屋で聴いて、急いで駆け付ける母親。それが、彼女の妄想で現実ではなく、息子はすでに亡くなっており、聞こえてきたのは50メートル四方の虐待を受けている子供の声だったという、そして、アパートの駐車場で寝袋に子供の死体を入れて車で持ち去ったという現実。
森の中で、湖があったと思ったのは駐車場だった。しかし、その傍に子供を埋めていたのは本当のことだったとは、彼女が被害妄想で神経がいかれているといわんばかりに、アパートの管理人も児童福祉の人たちも彼女の精神状態を異常だと思っているから、よけいにややこしくなり、親切にしてくれた男と親しくなったのに、結局は自殺を選んでしまったことが、見ていて悔やまれてならなかった。
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