『バッシング』などの小林政広監督が、余命3か月の父親とその父の年金を頼りに生活するうつ病の息子の悲劇を描く社会派ドラマ。ガンと診断され封鎖した自室にこもった父の息子への思い、何もできずに過ぎ行く日を暮らす息子の様子をつづる。小林監督作『春との旅』にも主演した日本屈指の名優、仲代達矢が父親を熱演。息子役の北村一輝のほか、大森暁美と寺島しのぶが共演する。現代の問題点をえぐり出す小林監督の鋭い着眼点と物語、キャスト陣の渾身(こんしん)の演技に圧倒される。
<感想>9月2日、仙台のミニシアターにて先行上映。はるばる監督の小林政広さんが来場されて、映画が始まる前と最後にお話しを聞かせて頂きました。作品の内容は、小林監督はまず、オリジナル脚本の基となった、2010年に東京・足立区で起きた“111歳男性”の死亡届が提出されず、娘(当時81歳)と孫(同53歳)が年金を受給していたため詐欺の疑いで逮捕されたことをきっかけに、同様の事件が多数発覚したことを説明。
内容は、妻を亡くし、自分も肺がんで余命3カ月と宣告された不二男が、病院から帰った翌日、妻の骨壺が置いてある座敷の扉や窓に釘を打って、自分の部屋を封鎖する。そして、このまま何も食べずにミイラになると一人息子の義男に宣言する。義男は必死に説得を試みるが、父親は頑として意志を曲げようとはしない。
もしも、息子が扉をこじ開けて入ってきたら、自分の喉をノミで刺して死ぬというのだ。不二男は自分の死を1年隠しとおして年金を受け取り、生活費に当てろと息子に言う。
義男は会社をリストラされて、精神的に追い詰められ死のうと何回も手首を切ろうとしたが死にきれずに鬱病を患い精神病院へ入院した。そのことを、妻にも知らせずに。妻は1カ月もの間、夫の消息を訪ねてとうとう諦めて実家へ帰って、離婚届を持って不二男夫婦のもとを訪れたのだ。
父親が死を覚悟して部屋に閉じこもる前のシーンは、飲んだくれのいわゆる亭主関白で、妻にも暴言を吐き頑固で、仕事は大工をしていたようだが、老後は朝から晩まで酒びたりの毎日。そこへ、一人息子が帰って来て、職を探しに行くわけでもなく、母親がスーパーマーケットで倒れ、その後病院生活で死亡。父と息子が二人して毎日酒を飲む生活が続き、とうとう父親が血を吐き肺ガンで入院。それでも息子は職探しなどせず、父親の年金で生活をしていたのだ。偉そうに父に向かって「たったの6万円で1カ月生活してるんだよ」と、その支給された金は誰のものなのか?・・・長年苦労して稼いだお国からの年金。
退院した後、父親は息子のフリーター暮らしを見て、妻子にも捨てられて現在無職の義男が、その父親の言葉と、気持ちをどう受け止めるかが描かれる。出演者は仲代達矢ほか、北村一輝、寺島しのぶ、大森暁美の4人。
無縁社会となりつつある現代日本の、現状にスポットを当てたこの作品では、固定カメラが置かれて、だからなのか仲代さんが後ろ向きに台所のテーブルに座っている背中が気になりました。監督は、それは不二男の回想シーンだからと、すべては不二男の回想なのでと、部屋に閉じこもった不二男が電話の音で、懐かしい妻との生活の回想シーンが何度も映し出されます。それに、何度もカットの間の暗転部分が長く、真っ暗なスクリーンを見つめて今度はどんなシーンが出て来るのかと。
まず主人公の村井不二男を演じた、80歳になる仲代達矢さんの存在感に感無量の思いで観ました。モノクロ映像による家族の明暗を浮き彫りにして、一人息子が結婚をして
孫が生まれて、実家へ帰ってくるシーンだけがカラーで映されていました。
音楽もなしで、歩く下駄の音や雨の降る音、扉を開け閉めの音とか、電話の呼び出し音が実に主人公の昔の楽しかった家族の光景を想いだす場面、または息子が嫁のとも子からの電話だと気づいて、しかし電話の相手は無言である。そんな音響効果が醸し出す、父と息子の会話劇にも悲痛な叫びとなって聞こえてくる。
義男が父親の部屋の前で、「お父さん、お父さんやめてくれよ」と叫び声が切なくて、父親は、毎朝一度だけ、声をかけてくれればそれでいいと言いうのですが、義男は何度も夕飯できたよとか、父親の生きている声を確かめたくて叫ぶのです。最後は、背広を着て、これから会社の面接に行ってくると、父親に声をかけて玄関から出て行きます。もう、父親の声は聞こえてきません。
思うに、とても観ていて辛くなる映画です。父親にしてみれば、一人息子が鬱病になり、仕事もせず父の年金で生活しているのが許せないと思うのです。だから、部屋に閉じこもって、ミイラになると頑固に言い張るわけで、こんな父親の性格は、息子なら前から知っていたはずです。実家に帰って来ても、すぐに仕事を探し、アルバイトでも何でもしてお金を稼いで、両親を養うくらいの頑張りを見せてあげるべきなのでは。
未だに親に甘えて、何か辛いことがあると実家の親を頼りにして、不甲斐ない子供たち。実家にいれば何とか暮らしていけるという甘えが、それは親の躾けとか教育も悪いのだが、私らの世代(戦後生まれ)では、まだまだ日本経済も貧しく、家長が家を継ぎ親の面倒を見るのは当たり前。誰を責めるでもなしに、観ていて自然と怒りと涙がこぼれ落ちました。
2013年劇場鑑賞作品・・・264 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング
<感想>9月2日、仙台のミニシアターにて先行上映。はるばる監督の小林政広さんが来場されて、映画が始まる前と最後にお話しを聞かせて頂きました。作品の内容は、小林監督はまず、オリジナル脚本の基となった、2010年に東京・足立区で起きた“111歳男性”の死亡届が提出されず、娘(当時81歳)と孫(同53歳)が年金を受給していたため詐欺の疑いで逮捕されたことをきっかけに、同様の事件が多数発覚したことを説明。
内容は、妻を亡くし、自分も肺がんで余命3カ月と宣告された不二男が、病院から帰った翌日、妻の骨壺が置いてある座敷の扉や窓に釘を打って、自分の部屋を封鎖する。そして、このまま何も食べずにミイラになると一人息子の義男に宣言する。義男は必死に説得を試みるが、父親は頑として意志を曲げようとはしない。
もしも、息子が扉をこじ開けて入ってきたら、自分の喉をノミで刺して死ぬというのだ。不二男は自分の死を1年隠しとおして年金を受け取り、生活費に当てろと息子に言う。
義男は会社をリストラされて、精神的に追い詰められ死のうと何回も手首を切ろうとしたが死にきれずに鬱病を患い精神病院へ入院した。そのことを、妻にも知らせずに。妻は1カ月もの間、夫の消息を訪ねてとうとう諦めて実家へ帰って、離婚届を持って不二男夫婦のもとを訪れたのだ。
父親が死を覚悟して部屋に閉じこもる前のシーンは、飲んだくれのいわゆる亭主関白で、妻にも暴言を吐き頑固で、仕事は大工をしていたようだが、老後は朝から晩まで酒びたりの毎日。そこへ、一人息子が帰って来て、職を探しに行くわけでもなく、母親がスーパーマーケットで倒れ、その後病院生活で死亡。父と息子が二人して毎日酒を飲む生活が続き、とうとう父親が血を吐き肺ガンで入院。それでも息子は職探しなどせず、父親の年金で生活をしていたのだ。偉そうに父に向かって「たったの6万円で1カ月生活してるんだよ」と、その支給された金は誰のものなのか?・・・長年苦労して稼いだお国からの年金。
退院した後、父親は息子のフリーター暮らしを見て、妻子にも捨てられて現在無職の義男が、その父親の言葉と、気持ちをどう受け止めるかが描かれる。出演者は仲代達矢ほか、北村一輝、寺島しのぶ、大森暁美の4人。
無縁社会となりつつある現代日本の、現状にスポットを当てたこの作品では、固定カメラが置かれて、だからなのか仲代さんが後ろ向きに台所のテーブルに座っている背中が気になりました。監督は、それは不二男の回想シーンだからと、すべては不二男の回想なのでと、部屋に閉じこもった不二男が電話の音で、懐かしい妻との生活の回想シーンが何度も映し出されます。それに、何度もカットの間の暗転部分が長く、真っ暗なスクリーンを見つめて今度はどんなシーンが出て来るのかと。
まず主人公の村井不二男を演じた、80歳になる仲代達矢さんの存在感に感無量の思いで観ました。モノクロ映像による家族の明暗を浮き彫りにして、一人息子が結婚をして
孫が生まれて、実家へ帰ってくるシーンだけがカラーで映されていました。
音楽もなしで、歩く下駄の音や雨の降る音、扉を開け閉めの音とか、電話の呼び出し音が実に主人公の昔の楽しかった家族の光景を想いだす場面、または息子が嫁のとも子からの電話だと気づいて、しかし電話の相手は無言である。そんな音響効果が醸し出す、父と息子の会話劇にも悲痛な叫びとなって聞こえてくる。
義男が父親の部屋の前で、「お父さん、お父さんやめてくれよ」と叫び声が切なくて、父親は、毎朝一度だけ、声をかけてくれればそれでいいと言いうのですが、義男は何度も夕飯できたよとか、父親の生きている声を確かめたくて叫ぶのです。最後は、背広を着て、これから会社の面接に行ってくると、父親に声をかけて玄関から出て行きます。もう、父親の声は聞こえてきません。
思うに、とても観ていて辛くなる映画です。父親にしてみれば、一人息子が鬱病になり、仕事もせず父の年金で生活しているのが許せないと思うのです。だから、部屋に閉じこもって、ミイラになると頑固に言い張るわけで、こんな父親の性格は、息子なら前から知っていたはずです。実家に帰って来ても、すぐに仕事を探し、アルバイトでも何でもしてお金を稼いで、両親を養うくらいの頑張りを見せてあげるべきなのでは。
未だに親に甘えて、何か辛いことがあると実家の親を頼りにして、不甲斐ない子供たち。実家にいれば何とか暮らしていけるという甘えが、それは親の躾けとか教育も悪いのだが、私らの世代(戦後生まれ)では、まだまだ日本経済も貧しく、家長が家を継ぎ親の面倒を見るのは当たり前。誰を責めるでもなしに、観ていて自然と怒りと涙がこぼれ落ちました。
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