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「~タ」について(2)

2010-07-09 11:12:37 | 日本語

問題5、6

必要とされる知識
連体修飾節のテンスは英語のような<時制の一致>ではなく、通常<相対テンス>になる

1)<相対テンス>とは何か?

  AとBの二つの文を連体修飾を使って一つの文にするとCの文ができる。
   A その人は大使館へ行った。
   B 私はその人に会った。
   C 私は大使館に行った人に会った。

  これだけからは通常の<テンス>の考え方で何も問題がないように思われるが、
  Dやの文の意味はCと何が違うだろうか?

   D 私は大使館に行く人に会った

  この文の意味を通常の<テンス>の考え方からすると、発話時(いま)から見て、
  「行く」はこれから「行く」で「会った」は過去に「会った」と考えてもいいかもしれない。

  しかし、そうではない解釈も可能である。
  Dでは『この人は大使館に行った』、という過去の解釈も可能である。
  つまり、「私は(あした)大使館に行く人に(きのう)会った」ともとれるし
      「私は(きのう)大使館に行く人に会った」ともとれるのである。

  それでは、なぜ過去のことなのに「行った」ではなくて「行く」を使うのか?

  それを解決するのが<相対テンス>という考え方である。

 つまり、単文の時には発話時を基準にテンスを考えれば良かったが、連体修飾節では
  主節のテンスを基準に『それよりも前=既に起こったこと=完了』の場合には「タ形」を使い、
  『それと同時、またはそれよりも後=これから起こる=未完了』の場合には「ル形」を使う、
  という<相対的>なテンスになっているのである。
  だから、Dの文の解釈がどちらであっても、『私がその人に会う』ことと
  『その人が大使館に行く』ことの順番は変わりがない。

  言い方を変えれば、連体修飾節のル形やタ形は発話時を基準にしたテンスとは関係ない
  未完了か完了かを示すアスペクトであると言える。
  それが主節のテンスとの関係で<相対テンス>と呼ばれるのである。

  そうすると、Eの文が(発話時を基準にして)過去でもないのにタ形が使われていいることも
  納得できる。
   E あした一番にここに来た人にこれをあげましょう

       「来る」とうことがあって、その後に「あげる」がおこる

  さらに、次のような「~時」の文の意味の違いも理解できる。

   F 食べる時に 「いただきます」と言う (ル形 =主節の動詞より後/未完了)
   G 食べる時に 箸を使う        (ル形 =主節の動詞と同時)
   H 食べた時に 「ごちそうさま」と言う (タ形 =主節の動詞より前/完了)

   I 日本に来る時に、空港まで友達が見送りに来た (:自分の国の空港)
   J 日本に来た時に、空港まで友達が迎えに来た  (:日本の空港)

2)連体修飾節のル形とタ形は<相対テンス>の解釈を受けるのが普通だが、何事にも例外がある。

  (ア)問題3、4の解説にあるように、「~テイル」ガ「~タ」となって<性状規定>を
     表わすものは相対テンスの概念からははずれている
     (つまり、アスペクトから開放されている)
     つまり、形容詞と同じように働いていると考えられる。
     その段階性を示すと次のようになる。

   ・あのおもしろい人にこれをあげる。      (=形容詞)
   ・あのちょっと変わった人にこれをあげる。   (=性状規定 「テイル」→「タ」)
   ・あの赤いセーターを着た人にこれをあげる。  (=性状規定 「テイル」→「タ」)
   ・きのう面白い作文を書いた人にこれをあげる。 (=相対テンス/アスペクト<完了>)
                            ※通常のテンスでも解釈可能
   ・これから面白い作文を書いた人にこれをあげる。(=相対テンス/アスペクト<完了>)
                            ※通常のテンスでは解釈不能

  (イ)文意(文脈)によって<相対テンス>の解釈ができない場合

    (1)動詞の語彙的な条件によって

        .亡くなった山本さんは東京で生まれた

         「亡くなる」と「生まれる」という単語の意味から<相対テンス>の解釈
         つまり、「生まれる」前に「亡くなる」が完了している解釈は成り立たない。

    (2)時を指定する副詞成分によって

        ・手を挙げた人が指名された

          この文の通常の解釈は<相対テンス>によって「手を挙げる」ことが
          <完了>して「指名される」が続くというものである。

        ・さっき手を挙げた人が先月の総会で委員長に指名されたんです。

          このように時の指定を受けると<相対テンス>の解釈は成り立たない。

*これまでのまとめ

 文脈による例外はあるものの、連体修飾節における<相対テンス>という概念は重要なものである。それは英語などの<時制の一致>とはことなる文法概念だからである。しかも、次に見るように連体修飾節のあるタイプのものと深い関係があることも重要となる

 以上、連体修飾では動作動詞に限って見たが、状態性の述語(形容詞など)はまた別の振る舞いをすることも重要であるが、ここでは触れない。

問題7 問2

必要とされる知識
連体修飾節において「ル形」と「タ形」の選択がどちらか一方に決まる場合がある

  上の解説で連体修飾節ではル形とタ形は<相対テンス>になることを見たが、
  <相対>だからといっていつもル形とタ形のどちらもが使えるというわけではない。

1)文の意味からどちらか一方に決まる場合

  ・学生が書いた(×書く)作文を読んだ。
  ・買って来た(×来る)ものを冷蔵庫に入れておいてください。
  ・一度契約した(×する)ものは返品できない。

  ・借りる(×借りた)人は、前もって登録してください。
  ・夏休みに行く(×行った)避暑地をまだ決めていない。

  このように文の意味から一方がもう一方に必ず先行する場合にはル形かタ形かどちらかに決まる。

2)被修飾名詞の種類によってどちらか一方に決まる場合

  連体修飾節の<相対テンス>という考え方は、言葉を変えれば、主節が起こることよりも
  『前』なのか『同時』なのか『後』なのかということである。
  このことから連体修飾節の被修飾名詞(「底」と呼ばれる」)によっては
  (ア)必ずル形でなければならないもの
  (イ)必ずタ形でなければならないもの
  の二つがある。

  具体的に見ていく前に、連体修飾節には二種類あることを復習しておきたい。
  (1)「ウチ」の関係 と(2)「ソト」の関係がある
  (1)は底の名詞を修飾節に戻すことができる
  (2)はそれができない。さらに(2)は二つのタイプがある。

  (ア)(イ)になるのは(2)の場合である

  (2)-1 <内容節=同格節
  (2)-2<相対性名詞の補充節

   (2)-1 どんな内容かを説明する節

      A いっしょに食事する(という)約束をした:「という」があってもなくてもいい
      B いっしょにしようという電話が来た   :「という」が必要
      C いっしょに食事している写真を見る   :「という」がつなかい

   (2)-2 被修飾名詞自体が相対性があり、修飾されることで具体的に意味が定まる

      D あの人が歩いているを地下鉄が走っている :位置関係
      E 日本に着いた翌日に横浜へ行った      :時間関係
      F 新宿へ行った帰りにスーパーに寄る。    :時間関係(行動の順番)
        新宿へ行く途中でスーパーに寄る。
      G 皆で食べた残りをとっておく。       :因果関係
        火事が発生した原因を調べる。       :因果関係

  まず、<相対性名詞>の例から見ていく。
  この名詞の特徴は、例えばEの「翌日」のように『何かが起こった後の次の日』という
  意味を持っていることである。つまり、必ずなんらかの<完了>した事態を受けなければ
  ならないとう制約がある。「残り」も同様に、『何かした後』でなければ成立しない
  ものである。結局、「翌日」や「残り」は連体修飾では必ずタ形になるわけである。
  このような制約は上の<時間関係><因果関係>の場合に起こる。

  また、Fの「途中」という名詞は何かしていることと同時になされる(:前でも後でもない)
  ことを前提とする。だから、<同時>を表わすために連体修飾節はル形になるわけである。

  次に、Cの「という」がつなかい場合の例を見てみる。
  上の例文では「写真」を挙げたが他には「におい」「音」「感触」「味」「姿」「絵」などが
  ある。これらの名詞は何かが起こったときに<同時>に感じられるもの、捉えられるもの
  であるから、ル形をとることが普通である。

  最後に、Aのグループの例を見てみる。
  ここにはいろいろな名詞が分類されるが、中にはその意味特徴からどちらか一方が必須のものが
  ある。
  例文の「約束」は『これからすることについて述べる』ものであるから当然ル形を要求する
  わけである。
  一方「経験」は『もうしたことについて述べる』ものであるから当然タ形を要求するわけ
  である。

*これまでのまとめ

このように『未完了/これからする』と『同時』の意味を要求する名詞はル形によって修飾され、『完了/もうした』の意味を要求する名詞はタ形によって修飾されるのである。

(ア)必ずル形がくる場合

   ~スル 前、計画、予定、約束、など    ←<未完了>

       途中、におい、音、声、姿、など  ←<同時>
       
(イ)必ずタ形が来る場合

   ~シタ 後、翌日、帰り、残り、余り
       経験、疑い、覚え、など

問題7 問3

必要とされる知識
タ形にはモダリティを表わす用法もある

タ形がモダリティを表わすとされる用法には以下のものがある。

  1)ぞんざいな、差し迫った命令
     ・じゃまだから、あっちへ行っ行っ

  2)想起:以前に見聞きしたことを思い出す(そして確認する)
        注)名詞文になっていることが必要である。(「~のだった」も含む)
     ・しまった、あしたは試験だった
     ・しまった、あしたは試験があるんだった

  3)期待していたことが実現したことを表わす。
     ・「バスなかなか来ないね」
      「あ、来、来
     ・「僕のめがねどこにいったかな。あ、あっ、あっ

  4)反実仮想
     ・普通の人間なら即死していよ。

  5)主観的な感情の表出
     ・それは、よかったですね。
     ・ああ疲れた
     ・困ったぞ。

  注)以上の分類と用例は『日本語教育能力検定試験 傾向と対策Vol.1』より



解答

問題1 (1)だけル形が<未来>を表わし、それ以外は<超時>を表わす。

問題2 4が間違い(既知や未知は関係ない)
    それ以外の内容は<テンス>と<アスペクト>のタ形の説明として重要である。

問題3 (2)以外はすべて「テイル」が「タ」になったものと考えられる。
    つまり、アスペクトから<性状規定>の用法になったもの。
    (2)は「困っている人」の意味にはなっていない。
    今回の解説では問題7でモダリティとして挙げられている(5)の例で、
    話し手(たち)の主観的な感情を表出したもので、
    その人が困っているのではなくて、話し手が困っているという意味である。

問題4 (2)だけが「テイル」に言い換えができる。つまり、<性状規定>になっている。
    それ以外は通常の「た」(完了/過去)の用法である。

問題5 (5)だけが「テイル」に言い換えができる。つまり、<性状規定>になっている。
    それ以外は(広い意味で)<相対テンス>になっている。
     注)(1)(2)は通常のテンスでの解釈も可能だが、
       (3)(4)も含めて広い意味で相対テンスとしてくくることができるが、
       (5)だけがあきらかに異なる。

問題6 (4)は<相対テンス>の解釈が不可能であるが、
    それ以外は<相対テンス>の解釈が可能である。
     注)(3)(5)はこの文だけでは<相対テンス>ではない解釈も可能だが、
       <相対テンス>の解釈が不可能である(4)だけが明らかに異なることになる。

問題7 問1 (ア)は(5)の「立てた」
       (イ)は(3)の「行く」

    問2 解説にあるように(3)が必ずル形をとる名詞である。

    問3 設問に意味の説明があるので答えを見つけるのは難しくなかったでしょう。
       解説の例では2)にあたる<想起>の意味になっている文を選ぶので、
       解答は(5)の「そうか、来月は、28日までだった」になる。
       文の意味にひっかかって(2)を選ばないように。


「~タ」について(1)

2010-07-09 11:11:32 | 日記

前置き

前回は「テイル」が動詞の種類や文脈によって用法がいろいろあることを見ましたが、日本語において「~タ」の形が意味するものは、日本語教師になってみて「そんなに複雑怪奇なものだったの?」と感じる文法の一つでしょう。普段何気なく使っている「~タ」の形を拾い出して見ると、

(1)きのう先生に会った
(2)もう先生にあいさつした
(3)そういえば、今日は会議だった

などがありますが、この「~タ」がそれぞれどんな意味かなどと考えなくても問題なくコミュニケーションができています。
しかし、日本語教育では(1)はテンス、(2)はアスペクト、(3)はモダリティの「タ」というように区別することが必要になります。
ここで簡単に用語を解説しておくと、

テンス 基準時(例えば発話時)に対してその出来事が前(=過去)なのか後(=未来)なのか、同時(=現在)なのかという概念
アスペクト 出来事が時間軸上で幅のあるものと見て、それがこれから起こる(=未完了)のか、いま起きている(=進行中)のか、起きてしまった(=完了)のかという概念
モダリティ 出来事それ自体(=これを命題、コト、などと呼ぶ)を話者がどのような心的態度で聞き手に伝えるかという概念

このようになります。そして、なんと「~た」という形式はこの三つを表わすことができるようになっているのです。
さらに文が複文となり、従属節のなかの述部を考えるとさらに難しくなります。
日本人が英語を勉強したときに文法規則として覚えた「時制の一致」が日本語にもあるのか?

(4)あのめがねをかけた人にこれを渡してください。
(5)銀座に行った帰りにちょっと友達の家に寄ってみよう。

(4)や(5)の「~タ」はいったい何だろう、などと普通の日本人は考えることはないのですが、日本語教師はそれが何かを知っておく必要があります。
ということで、前置きがまたまた長くなってしまいましたが、実際の問題にチャレンジしてみましょう。


問題2は単文(主節)のにおける「~た」の用法についての文章問題からの抜粋です。テンスとアスペクトに関する、基本的な問題です。
問題1、3~6は他と異なるものを選ぶ5択問題です。1はテンスの基本的な知識を復習するために。3~6は従属節(連体修飾節)における「タ」の問題です。6はちょっと難しいかもしれません。
問題7も従属節における「タ」の問題ですが、文章問題からの抜粋です。連体修飾節の被修飾名詞についての知識が要求されます。



問題1 「現在形」の用法 (第6回出題)

(1)リー君は、今度の便で 到着する
(2)鶏は、夜が明けるころ泣き出す
(3)私の家では、みな毎朝6時に起きる
(4)僕は、酒を飲むと頭がくらくらする
(5)金があれば、どんな問題だって解決する

問題2 (第5回出題)

 助動詞「た」の用法について、次の対話文(1)(2)を読み、下の問いに答えよ。

 (1)A:4年前のソウルオリンピック、見に行ったかい。
    B:いや、行かなかった。
 (2)A:今上映中のあの話題の映画、もう見に行ったかい。
    B:いや、まだ行ってない。

 次の1~5は、上の(1)(2)の対話文について説明した文である。
 1~5のうちで誤った内容のものを一つ選べ。

 1 (1)の場合は、これから動作が行われる可能性はないが、
   (2)の場合は、これから行われる可能性がある。
 2 (1)の場合は、過去のある時点においてその動作が行われたか否かを問題にしている。
   (2)の場合には、発話時までにその動作がすでに行われたか否か、
   つまり動作の完了を問題にしている。
 3 (1)(2)の場合、行程の答えはどちらも「~た」の形になる。
 4 「た」が(1)のように過去を表わすか、(2)のように完了を表わすかは、
   話題となっている事柄が話し手、聞き手とも知っている事柄かそうでないかによる。
 5 (1)(2)の答えの違いは、常体を敬語体に変えても違いが保たれる。

問題3 連体修飾節の「た」の意味 (第9回出題)

(1)あのめがねをかけ人はだれですか。
(2)酒を飲んで暴れるとは、困っ人だ。
(3)月の出た晩に、強盗事件が3件も起きた。
(4)満開に咲い桜の下に、多くの人々が集まった。
(5)曲がりくねっ道をのぼっていくと、展望台に着く。

問題4 連体修飾節の「た」の意味 (第10回出題)

(1)焼い
(2)破れ帽子
(3)ゆでじゃがいも
(4)裏表紙に書い名前
(5)二つにたたん手紙

問題5 「た」の用法 (第6回出題)

(1)「さっきここへ来若い女の子は、君の知り合いかい。」「いいえ。」
(2)「あの先生が最近書い本、よく売れているらしいね。」「うん。」
(3)「この道でいいんだろうか。」「ちょっと心配だね。今度会っ人に道を聞いてみよう。」
(4)「じゃんけんに負け人が全額払う、っていうのはどうだろう。」
   「そりゃ、あんまりだよ。」
(5)「4歳ぐらいになる赤いセーターを着坊やがおかあさんを探しています。
    お心当たりの方は受け付けまでどうぞ。」

問題6 「~た~た。」文の意味 (第11回出題)
 
(1)手を挙げ人が指名され
(2)薬を飲ん患者は間もなく回復し
(3)めがねをなくし人が車にはねられ
(4)亡くなった山本さんは東京で生まれた。
(5)その本を書い佐藤さんは二日前に渡米し

問題7 (第5回出題)

次の二つの文は表面的にはよく似た形をしているが、文の構造はかなり違う。
 A 先月ヤンさんたちと海へ行く計画を立てた。
 B 来月ヤンさんたちと海へ行く計画を立てた。

Aの「先月」は(ア)に係っていくが、Bの「来月」は(イ)に係っていく。このような違いが出てくるのは、どうしてだろうか。AとBの違いは「先月」と「来月」だけである。「先月」と「来月」の違いを考えてみると、「先月」はタ形(過去形)と共起するが、ル形(非過去形、現在形、現在・未来形)とは共起せず、「来月」はその逆だということがある。そのために、「先月」と「来月」の係り先に違いが出てくるのである。(中略)
ところで、Aの文で「行く」を「行った」に変えれば、「先月」が「行った」に係るようになるだろうか。Aの「行く」を「行った」に変えてみると、意味の通らない文になってしまう。これは「計画」という名詞に原因がある。「計画」の亡いようを表わすために「計画」の前に置かれる連体修飾節の中では、タ形が使えないのである。(ウ)なども、「計画」と同じ性質をもっている。

問1 (ア)(イ)に入れるのに最も適当なものをそれぞれ一つずつ選べ。

(1)「ヤンさんたちと」 (2)「海へ」 (3)「行く」
(4)「計画を」     (5)「立てた」

問2 (ウ)に入れるのに最も適当なものを一つ選べ。

(1)「未来」や「将来」
(2)「旅行」や「行為」
(3)「意志」や「予定」
(4)「原因」や「理由」
(5)「原因」や「結果」

問3 文章中に、「来月」はタ形と共起しない、とあるが、忘れていたことを思い出したなど、特殊な場合には共起することがある。その例文として挙げるのに最も適当なものを一つ選べ。

(1)もし来月も赤字だったら、困ったことになるぞ。
(2)来月総会があるのをすっかり忘れていた。
(3)来月は総会が開かれた。
(4)そうだ。来月、ロードショーで見逃したこの映画を名画館で見よう。
(5)そうか。来月は、28日までだった。



解説

問題1、2

必要とされる知識
1)現在形とは<現在>の事柄を表わす時に使われる形という意味であるが、
  現在形だからと言って、常に<現在>を表わすわけではない
   注:名称とそれが意味することの区別は重要である。
     命令形が常に命令を意味するわけではない、
     というのも同じことである。
     →「早く歩け」(命令) 「早く咲け」(願望)


2)タ形はテンスとして<過去>を、アスペクトとして<完了>を表わす

  
1)テンスとしての「ル形」と「タ形」の整理

タ形
ル形
動作動詞
過去
未来      (※超時)
状態性述語 状態性の動詞
      形容詞
      名詞
過去
現在 (未来) (※超時)
過去を表わす
非過去を表わす

 ポイント1:タ形は過去を表わすが、ル形は『述語の種類』によって表わすテンスが異なる
        注)このテンスに限らず、<動作>なのか<状態>なのかは重要な区別になる

 ポイント2:ル形はこのように『未来』『現在』『超時』の三つを表わすので、まとめて
       『非過去』と呼ばれることがある。

 ポイント3:『超時』とは過去~現在~未来にわたる普遍的真理や習慣や属性を
       意味する文のテンスのことである。

2)テンスとアスペクトの「ル形」と「タ形」の整理 (※発話時を基準として/動作動詞)

タ形 ル形
テンス 過去 非過去(=未来)
アスペクト 完了 未完了

 ポイント1:解釈の問題『副詞成分によって』

    テンスは出来事を『点』ととらえてそれがどの時点で成立した/するかを示す概念だから
     <時を指定する副詞>が用いられると、ル形、タ形は<テンス>の解釈を受ける。

     アスペクトは基準時(発話時など)において出来事がどの段階にあるかを示す概念だから
     <完了を示す副詞>が用いられると、ル形、タ形は<アスペクト>の解釈を受ける。

         → 30分前に食事をした。 <テンス>  (過去)
           もう食事をした。    <アスペクト>(完了)
         → 来月部長に昇進する。  <テンス>  (非過去=未来)
           もうすぐ部長に昇進する。<アスペクト>(未完了) 

注)「解釈を受ける」というのは、文にはテンスとアスペクトのどちらか一方しか出現しないわけではないということである。どの文もテンスとアスペクトを表示する機能をもっているが、それが文意によってどちらの解釈が優先されるかという問題である。したがって、どちらの解釈もできる場合もあるし、そのため二つが「重なっている」という解釈もされることがある。

     

 ポイント2:解釈の問題『疑問文「~た?』の答え方によって』

    「~タ」の解釈がどちらになるかが、はっきり出るのは、疑問文「~タ?」に対して
    否定文で答える場合である。問題2はこの点を問う問題になっている。

アスペクトの解釈 完了


食べ
未完了


いいえ、(まだ)食べテイナイ
テンスの解釈 過去


食べ
過去


いいえ、食べナカッタ

                

問題3、4

必要とされる知識
前回、単文では文末の「テイル」はアスペクトを表わし、動詞の種類によって<進行>の意味になったり、<結果残存>の意味になることを見たが、連体修飾節では<結果残存>の「テイル」は「タ」になることが可能である。

 <継続動詞>   あの人はいま走っている。 <進行>  → × 走った人  
 
 <変化/結果動詞>あの人は眼鏡をかけている。<結果残存>→ ◯ 眼鏡をかけ

 注:連体修飾節で「テイル」が「タ」に変わるというのは義務的ではない。
   「めがねをかけテイル人」ということもできる。
   しかし、前回勉強した金田一氏の動詞の四分類で「第4種の動詞」と呼ばれるものは
   連体修飾節では「タ」の形で使われるのが普通である。
   その理由はアスペクト(=動作の結果が残存している)の解釈よりも
   <性状規定>つまり、形容詞のように使われるからと考えられる。
   その意味では「第4種の動詞」以外でも、形容詞のように使われる場合には
   「テイル」より「タ」のほうが自然になる。
   ・あの道はくねくね曲がっている → くねくね曲がった道(をドライブする)
   ・今日はとてもよく晴れている  → とてもよく晴れた日(に散歩する)