
塾にとって、合格実績は何よりも重要です。「合格実績は塾の生命線」や「合格実績は塾の一丁目一番地」といった言葉を耳にしたことがある方もいるでしょう。当然ながら、合格実績は保護者が子どもの塾を選ぶ際の大きな指標となります。
したがいまして、多くの塾は合格実績を伸ばすためにさまざまな工夫をします。例えば、
・「優秀な生徒をさらに集めること」
・「優秀な生徒になるべく多くの学校を受験させること」
・「合否ラインぎりぎりの生徒を合格させること」
このような取り組みは、ある意味では合理的です。しかし、視点を変えてみると、気になる点もあります。
集団塾では、さまざまな学力層の生徒が混在しています。塾の指導方針によっては、「あと少し頑張れば合格できる生徒」には手厚いサポートがある一方で、受験直前期になると、「合格にはまだ遠い生徒」や「すでに合格圏内にいる生徒」には、指導の優先度が低くなることもあるようです。
もちろん、塾側にも限られたリソースの中で成果を最大化しようとする事情があるので、一概に否定はできません。
しかし、生徒や保護者の立場からすると、「せっかく通っているのに、しっかりと見てもらえない」と感じることがあるかもしれません。
以前、大手塾の関係者の方とお話しした際、「個体識別」という言葉をお使いになっていてギョッとしたことがあります。「個体識別」という言葉は、もともとは家畜やペットの管理で用いられる言葉ですが、その方は「生徒ごとに個体を識別し、指導の優先度を決める」という意味でお使いになっていたようです。
こうした考え方は、合理的な面もある一方で、生徒一人ひとりの学びを大切にする視点が薄れてしまう危険性もあるのではないでしょうか。
塾は、生徒が「学びたい」「成長したい」と思う気持ちをサポートする場であるべきです。成績を伸ばしたいと思って通っている生徒が適切な指導を受けられず、「放置されている」と感じてしまうのは、やはり望ましくありません。
塾選びをする際にも、この点をよく考えることが大切かもしれません。