NPO法人POSSE代表・今野晴貴とNPO法人POSSE事務局長・川村遼平が執筆した『ブラック企業に負けない!』が今月、旬報社から発売されました。
本書のコンセプトは、ブラック企業の傾向をつかみ、対策を練るというものです。
類書との違いでいえば、第一に、従来本が「単発事例」の告発であったのに対し、本書では1000件を超える労働相談を踏まえた「網羅的」な内容であることです。ブラック企業の被害・手口を雑感ではなく「ブラック・パターン」として類型化しました。
第二に、こうして類型化した「ブラック・パターン」に対して体系的な対処方法をも提示しています。
そして第三の特徴は、ブラック企業の「背景」に学問的に迫る章をもうけ、理解を深めようという点にあります。
ブラック企業の背景を理解することで、日本社会に何が求められているのかを提示します。「泣き寝入り」しないで一人ひとりが対策を取ることで、日本社会全体へ貢献ができるということを示しました。
以上のように、①網羅的分析、②対処法の提示、③理論的・実践的考察と、本書はブラック企業問題に関する「決定版」ともいえる内容になっています。
小冊子にもかかわらず、NPO法人POSSE(ポッセ)の5年間の取り組みを踏まえた肉厚・濃厚な本ですので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思います。
目次は下記のとおりです。
はじめに
1.ブラック企業の人間破壊システム
2.ブラック・パターン
3.ブラック企業に負けない就職活動
4.ブラック企業に負けない「合言葉」
5.ブラック企業への対処術
6.ブラック企業発生の背景
COLUMN
おわりに
最後に、本書の「はじめに」の内容を転載いたします。
「はたして正社員で就職すれば本当に安心なのか?」。「ブラック企業」という問題が世に問うているのは、この一言である。2000年代は若者にとって苦難の時代であった。就職ができず、ハケンやケイヤクといった非正雇用になる若者が急激に増加し、大きな社会問題になった。
非正社員にひとたびなれば、正社員になることは難しく、低賃金・不安定な仕事に一生従事するしかないと言われる。学校現場では正社員と非正社員の生涯給与のグラフを作成し、「フリーターになるとこんなに損をする」と迫る、脅迫型の教育が広がった。だが、望めば誰でも正社員になれるわけではない。就職活動による競争は苛烈となり、正社員に就職することは若者の悲願となった。
「ブラック企業」の恐ろしさは、この背景を踏まえれば十分わかるだろう。この言葉は、今度は正社員の中身が劣化し、若者に襲い掛かってきていることを警告しているのである。
私は2006年、法学部在学中に、若者の労働相談を受けるNPO法人「POSSE(ポッセ)」を立ち上げた。法律や制度の活用によって、今の若者の状況を少しでも改善できないかと考えたからだ。以来、1000件をこえる労働相談に関わってきた。これらの中で見えてきたことは、正社員の若者からの労働相談は非正規雇用のそれに負けず劣らず深刻だという事実である。
競争に打ち勝ったはずの若者が、実は使い捨てられている。正社員の雇用は昔のように安定したものではなくなっているのだ。非正規雇用か正社員かを迫る競争は、「何でもいいから正社員にならなければいけない」と若者を追い込んでいる。こうした若者の気持ちを逆手にとって、きわめて劣悪な「正社員」雇用を活用する企業が珍しくなくなった。わらにもすがる思いで就職した先で、異常なまでにきつい労働に従事させられる現実がある。次々に鬱病にかかり、自殺者も増加している。
ブラック企業問題とは、すぐれて「正社員の問題」である。就職活動に勝ち抜いた若者が、今度はその先で行き場を失っている。「自分の内定をもらって企業はブラック企業ではないか」と心配し、私たちのところに相談に来ることも珍しくない。だが、ブラック企業はどんなに見分けても、必ずしも避けられるものではない。就職先が限られている上に、ブラック企業の割合が大きすぎるのだ。
本書はNPO法人POSSE(ポッセ)がこれまで受けてきた労働相談を元に、正社員にはどんなトラブルが待ち受けているのか、そして正社員になったあとの若者のキャリアをどのように守ることができるのかを考えていく。ブラック企業には「入った後」が肝心なのである。対応を誤ると、病気にされ、使い捨てにされ、キャリアを棒に振ってしまいかねない。
NPO法人POSSE(ポッセ)はこれまで総計1000件以上の若者からの労働相談を受けてきた。多数の相談からは、「ブラック企業」が共通の違法行為のパターンを持っていることが見られ、業界での「常識」を形成していることが疑われる。
NPO法人POSSE(ポッセ)では、これらの相談に若い大学生や社会人が当たってきた。一人ひとりの相談に対して、できるだけの解決を模索してきた。本書で紹介するブラック企業の手口とその対処法、考え方は、まさに同世代の若者が、自分たちの問題として雇用問題に向き合ってきた経験である。ぜひ多くの方と共有し、若者のキャリアを守る一助となれば幸いである。
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
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