具体的な中身をみると、本書は四章構成になっています。第一章ではまず所得再配分調査、家計調査、全国消費実態調査、などの統計データを使いながら格差の現状が検証されています。第二章では格差の要因を構造改革や雇用の流動化によって説明しています。第三章では格差の拡大を社会階層の二極化という視点から日本社会にどのような変化をもたらしているのかを見ていきます。続く第四章では格差の拡大が続けばこれからの日本社会がどうなってしまうのかが展開されます。最後に第五章では筆者の考える改善策が述べられています。
本書が執筆された06年の最初の段階ではまだ格差は統計上の見せかけにすぎないとする主張が支配的でした。また、どうやら日本に格差が拡大しているらしいということが社会的に広く言われるようになってくると、今度は格差があって何が悪いのだという議論が出てきました。本書はそうした状況のなか06年の9月に出版され、データによって格差が存在ししかも広がっている現状を共有した上で、教育格差、医療格差、地域間格差、非正規雇用の問題などなど格差社会をめぐる問題をある程度網羅して、それが日本社会にあたえている大きな変化を概説してくれています。そのため、格差社会という問題を初めて意識するようになった人や問題をトータルに考えたいという人には格好の入門書だといえます。06年の、格差社会というキーワードが出始めた頃の社会の雰囲気も伝わってきます。
著者が最近出した『日本の教育格差』(岩波新書、2010)は、そのなかでも教育格差の実態に焦点をしぼっており、経済的な理由から教育を受けられない人が増えていることを論じています。NPO法人POSSE(ポッセ)でも、奨学金ワーキングチームの活動などで取り上げていきたい一冊です。
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
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