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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

ドラマ『ハケンの品格』第1話・下

主人公の篠原涼子の派遣社員は、残業・休日出勤は契約外の業務も一切拒否。休憩はきっかり一時間確保。プライベートではスペイン旅行やフラメンコを満喫。あくまでも仕事はそのための手段。つまり、企業に労働法を守らせ、一方で充実したプライベートを送っているというわけ。なんとも自由かつ理想的なライフスタイルではありませんか。

とはいえ、ここには「使えるハケン/使えないハケン」の線引きがあると思う。本来、労働法が守られ、自分の時間が確保されるのは誰にでも当然のことのはず。しかし、このドラマでそうした生活を手に入れているのは、超人的に「使えるハケン」の主人公だけだ。

あれだけ仕事にクール&ドライな彼女も「お時給の分はしっかり働きます」と、スピーディーに仕事をこなしていくし、資格も数え切れないほど持っている。主人公レベルはコメディだから非現実的だとしても、自己責任でもっと努力して、派遣なりに少しでも彼女のようなプロに近づけ、ってのがこのドラマのテーマに思える。

「使えるハケン」になれば、労働法を守らせて、プライベートな時間もしっかり得ることができるよ(現実にはほぼ皆無だと思うけど)、という誘惑。こうして、「使えるハケン」の非常に狭い枠を巡って、派遣労働者をもっと一生懸命働かせようという業界のイメージ戦略なのかもしれない。

一方、「使えないハケン」に転落した労働者は、「使えないし、がんばってないから仕方ない」とばかりに、待遇が劣悪でも問題化されない。それどころか、法律すら守られなくても当然と描かれている。

それが、第1話のラストシーンだ。ワードもエクセルもパワポも使えないのにウソをつき、さらには会社の情報を勝手に持ち出した挙げ句、見事に紛失した加藤あいの「使えないハケン」。誰もがクビを確信する中、担当の上司と次のような会話がなされる。

上司「ペナルティとして…サービス残業です。」加藤あい「はい!」
派遣先クビ(&派遣会社クビ)じゃないんだ、良かった。加藤あいの笑顔。感動的な音楽。

…ってオイ!! サービス残業は違法だろ!! 
合理的理由なしの、契約期間を残した派遣の打ち切りも派遣会社の解雇も違法だし!

労働法を守らせる主人公をあれだけ痛快に描いておきながら、「使えないハケン」に関しては、法律違反をあんなに堂々と言い渡しても、全く問題にされない。そして法律の代わりに上司の「人情的」な裁量で派遣労働者の進退が決定してしまう。

上司が全ての権限を持ってしまうこういう不安定な状態が、セクハラやパワハラの温床になるんじゃないの? こうした蔓延しきった脱法的状態に対して、最近は法律によって規制がされる傾向にある。ただし、守られていない労働者の保護規定を撤廃して、あとは自己責任でという、違法状態を追認して合法化するという傾向ですが…。

ちなみに、前述の上司が小泉孝太郎であり、彼の父親が違法行為を感情的なフレーズで乗り切る現代政治の象徴であったことは言うまでもない。

というわけで、『ハケンの品格』は、「使えるハケン」と「使えないハケン」の格差を描き、生活が苦しいなら「使えるハケン」になれるようがんばれ、という自己責任論&極端な能力主義を普及させるためのドラマ…なのかもしれない。次回が楽しみだ。たぶん見ないけど。

コメント一覧

るヒ
小泉
記者会見のニュースでこんな会話が。何を見てもらいたかったのやら…。

>脚本家の中園ミホさんに「安倍総理に見てほしい。永田町にコネのある小泉君に頑張ってもらって」と言われた小泉孝太郎(28)は「やっと父が総理でなくなってホッとしていたのに、思いもよらぬプレッシャーが…」と苦笑いしていた。
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