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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

書評:『テレワーク』佐藤彰男(岩波新書)

 「テレワーク」とはなんだろうか。職場とインターネットなどを利用して連絡を取り合いながら自宅で働く働き方――これが一番広く受け入れられているテレワークのイメージだろう。政府のテレワーク推進政策の対象になっているのもこうした「在宅勤務型」のテレワークだ。テレワークには他にも「在宅ワーク型」「モバイルワーク型」「SOHO型」などの類型があり、筆者はこれらを含むテレワークを「情報通信機器の活用を前提に、従来の職場空間とは異なった空間を労働の場に含みながら、業務としての情報の製造及び加工・の全部または一部を行う労働の形態」と定義している。

 このテレワークを、政府は「テレワーク人口倍増アクションプラン」などを作成して推進している。政府が挙げるテレワークのメリットは少子高齢化問題への対応、ワークライフバランスへの対応などである。職場ではなく自宅で働ける。だからこそ介護や家事に追われる人も働くことができるようになるはずだし、家族や地域とのふれあいの時間も増えるというのだ。

 実態を見ていけば政府が想定しているようなテレワーク=様々な問題の処方箋になる未来型の働き方、という像はかなり無理があることが分かってくる。

 本書によればテレワークとは「労働が見えなくなること」と「自己裁量の拡大」という内的な論理をもった働き方だという。誰かと一緒に仕事をするわけではないので自分の労働のきつさを誰かと比較できず、賃金格差や長時間労働の温床にある危険があるのだ。また、「労働者の自己裁量」とはいっても今は「強制された自発性」になってしまうとも指摘されている。テレワークという働き方はそれが働き手を無視した利益や効率性の追求、雇用格差などの社会環境と結びついたとき過酷なものとなる。本書はそうしたテレワークの現実をまずは知ることに重点が置かれている。テレワークに関する入門書として読みたい一冊だ。
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