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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

第2回 POSSEオンラインアカデミーイベントレポート

当日のアーカイブ映像はこちらです。

 

 コロナで明らかになった社会問題について学ぶ、POSSEオンラインアカデミーの第2回が8月20日に開催されました。POSSE外国人労働サポートセンターの岩橋を講師とし、今回は「コロナ危機と外国人労働者」のテーマで学びました。宣伝動画を公開し、外国人の支援をしたい方や外国人労働問題について勉強したい方を募ったところ、労働者の貧困問題、グローバリゼーション、LGBTQの問題などに関心のある学生を中心とした約40名の方々が参加しました。参加者からは、「難民受け入れの問題に関心がある」「労働問題、社会問題について学生同士で話し合いたい」、「生活基盤を置く国に国籍が無い人を支援したい」、「POSSEの活動をもっと知りたい」といった声がありました。

 

 

 POSSE外国人労働サポートセンターでは、昨年から外国人労働者の労働相談、権利交渉を行っています。外国人労働者は、日本に国籍を持たないため、一定の条件を満たさなければ働くことができません。そのような就職条件が企業に悪用され、長時間労働、賃金未払いなどの人権問題が起こっています。

 在日外国人の人権を守る法律の欠如や、外国人労働者の約半数が生活保護の対象外だという事実、相談できる行政窓口の少なさなどから、政府による保護は少ないといえます。問題は明らかにされにくく、帰国後に事後報告として相談が来ることもあるといいます。講義では、代表的な相談事例が伝えられました。

 例えば、パスポートを会社に取り上げられる事例があります。パスポートを会社に管理・保管されてしまうと、外国人労働者は転職することも辞めることもできません。そのようなことは人権侵害であるにもかかわらず、一部の在留資格を除いて、パスポートを取り上げてはいけないという法的規制がありません。法整備もされていない状況では、当事者だけで企業とたたかうのは難しい状況だとわかります。

 今、コロナの影響で労働問題の相談が増えている中で、長時間労働、未払い賃金などの過酷な労働を強いられてきた外国人労働者もまた、コロナの影響で雇い止め、内定取り消しなどに遭っているといいます。

 当事者のみでの権利交渉が難しいため、支援が必要な問題です。

 

 講義後、ワークショップが開かれました。参加された方々の声からは、労働問題への強い関心とともに、在日外国人が働きやすい社会を作りたいという共通の思いを感じました。問題について、様々な視点から理解を深めることができました。

 

 参加者から、「コロナ禍によって再入国ができない今、外国人が日本から出ることができなくなっている」という問題が指摘されました。実際にPOSSEでは、相談に来ている在日外国人の方が、帰国してから入国制限によって日本に戻れなくなり、自分の国から動けないでいる間に、会社から自己都合退職を求められるという例が確認されています。

 日本で就職活動をする外国人を支援されている社会人の方からは、「『ブラック企業リスト』を作成し、就職活動に活用すれば、企業側に意識改革を促せるのではないか」という意見や、「日本の就職活動は欧米とは異なり、留学生は右も左もわからない状態だ」というお話を伺いました。また、「移民大国であるアメリカに住んだ体験をきっかけに、無国籍の人が安心して働ける環境を作りたいと感じた」という方もいました。

 相談に来ることができない外国人をどう支援するかという問題も話されました。言語が通じない、インターネットが使えないなどの事情があれば、困っていても労働相談にたどり着くことができません。POSSEには、労働問題の当事者が通訳などをして別の労働者を支援する支援のサイクルがあります。ホットラインで使う言語も、従来は日本語と英語のみでしたが、現在ではやさしい日本語や8か国語での相談受付をしています。より多くの人が相談できるよう、支援を工夫する必要があります。

 問題の根本として、「なぜ企業は外国人労働者を会社に引き留めたいのか」という疑問の声もあがりました。その背景には、賃金を上げずに長時間働かせたいという企業の思惑が見えます。利益を上げるために、企業が外国人の就労資格を悪用して、虚偽の情報で求人を行う求人詐欺や人権を無視して働かされる事態が、広く起こっているという現状が見えてきました。

 そのほかにも「労働力不足の中、外国人はすでに社会で特別な存在ではなくなっていることから、人権を守るため、労働・福祉のあり方を考えることが必要だ」、「外国人労働問題は、社会的マイノリティにあたる人たちが弱い立場に追い込まれている点で、LGBTQの問題とも共通する」、「企業側の、まるで企業が被害者であるかのような態度に憤りを感じる」といった意見・感想がありました。

 講義を聞いて、「知らないことばかりだった」という参加者も多かったことから、外国人労働者が自国への強制送還などの重大な人権侵害を受けていることも、日本で生活する多くの人からは見えにくいという過酷な現状が読み取れます。外国人労働問題が可視化されない仕組みができており、社会問題化するために、若者や学生が担える役割は大きいといえます。



 外国人労働者の支援活動には、社会運動によって、問題を明らかにしていくことが求められていると思います。私も、日本に住んできて、大学生になってPOSSEの学習会に参加するまで、外国人労働者が「パスポートをとられる」事態を聞いたことがありませんでした。しかし、知らないままでいいというような空気に流されていては、ふたたび同じことが繰り返されてしまうと思います。現状が変わっていくには、問題に立ち向かう勇気が必要だと思います。それぞれの興味・関心・専門から共通の労働問題に取り組むことは可能だというPOSSEボランティアの方の言葉が印象的でした。問題に関心を持った人が、自分にもできる形で支援活動に参加することや、問題を生む社会の仕組みを知ろうとすることが、社会を良い方向へ変える力になると考えます。

 

               (POSSEボランティア 大学1年 荒尾都紀子)

 


■「POSSEオンラインアカデミー」とは?
 新型コロナのパンデミックは、私たちの社会のなかにある矛盾を露わにし、加速させた。危機のなかでこそ、この社会のあり方を深く思考し、実践することが求められている。そこで、POSSEでは「コロナ危機のなかでこそ、学ぼう」をテーマに、「POSSEオンラインアカデミー」をスタート。定期的にオンライン上で学習会を開催し、学校では学べない現場の実践にもとづく知見から、社会問題を考える。


■前回のPOSSEオンラインアカデミー「コロナ危機と貧困」アーカイブ映像

 

■次回のPOSSEオンラインアカデミー(9月4日 15時~)

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