なぜ労働法を学ぶ必要があるのか。その理由は、日本の多くの職場で労働法が守られておらず、その結果として労働条件や労働環境がより悪化している現実があるからです。NPO法人POSSE(ポッセ)でも、違法性の強い賃金未払い、解雇などの相談が多く寄せられています。またNPO法人POSSE(ポッセ)の08年度調査では、違法状態を経験した者が半数程度いることが明らかになり、違法状態は広がってきています。法律が守られなくなっている今の状況においては、企業の生き残り競争が強まれば強まるほど、違法性の強い労働条件が蔓延するおそれがあります。
昨今、不景気による雇用縮小を背景に、教育現場では、安定した正社員の職に就かせることを目的とする就職指導が叫ばれています。たしかに、違法状態が広まっている状況では、正社員雇用の枠は小さくなっています。また、卒業後にそうした安定した職に就くことは、失業時の生活保障の乏しい日本においては、重要なことなのかもしれません。しかし留意しておきたいのは、安定した雇用には限りがあるため、すべての人がそうした職に就けるとは限らないということです。しかも安定した職でもそれが一生安泰のものではなく、いつ問題が起こるとも限りません。事実、08年度調査では、正社員の中でも不安定な待遇の層が一定程度存在することが示されています。したがって、どのような職に就いたとしても、就職後に問題に直面し、生活が脅かされる可能性があるといえるでしょう。そして実際に問題に相対したときに適切に対処するために、自分の権利がどんな形で保障されているのかを知っておくことは非常に重要であり、教育現場においてはそうした形の就職指導こそが必要とされているのではないでしょうか。
『15歳のワークルール』では、求人票、内定通知と取消、就業規則と労働条件、残業、遅刻・早退、出社拒否と賃金の関係、「仲間はずし」、仕事上の差別、パワーハラスメントなど就職後に直面する具体的なトラブルを取り上げ、その事例ごとに法的な考え方を説明しています。事例は寸劇形式で紹介され、視覚的に理解しやすくなっています(余談ですが、NPO法人POSSE(ポッセ)スタッフも出演しています)。また労働法学者の道幸哲也さんが解説しているため、高校生でもきちんと労働法を学ぶことができます。付録のブックレットでは、DVDで取り上げた問題を法律的により深く理解できるような内容になっています。教員の方むけの教材として、学生がDVDを見て分からない点を補足する際に使えるのではないでしょうか。働き始める学生がワークルールを学習したり、授業で労働法の権利教育を行ったりする際に利用しやすい点で、『15歳のワークルール』という名に値する作品です。ぜひご利用いただきたいと思います。
ちなみに、NPO法人POSSE(ポッセ)でも「労働法教育WT」を結成し、無料で出張授業や教材配布を行っています。これまで受けてきた相談の経験をもとに、労働法を知り実際に解決していくための対処法を普及しています。詳しくは、http://www.npoposse.jp/activity/edugroup.htmlをご覧ください。
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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。
なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
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