拙僧の20年来の友人である鍵山さんが、ご自身と奥様で調理、経営してきた和食の店を閉めることになりました。
鍵山さんの人柄そのものを味わえるような、そんな味わい深いお店だったのですが・・・残念ながら今月末をもって閉店とのことです。
厚木で中華をしていた友人に紹介されて会ったのが、ほぼ20年前。
日本酒や焼酎、食材、また食品製法や農業にも深い洞察をもって研究し、味に反映させてきました。
その味は一言でいえば「親切」。
ご自身もアレルギーがあったり、老親を抱えていたりということで食材や調理方法にはとても気を使っていました。
しかしその反面、お値段は非常にリーズナブル。
味と値段というよりも、その人柄に惹かれてお店にも出入りし、拙寺の節分など様々な行事でもお手伝いいただきました。
長後のお店「寿司和食 鍵山」から西鎌倉の「鎌倉ひふみ」、そして現在の泉区のお店にと徐々にグレードアップしてきましたし、
マスコミの取材も多く受けて、知名度が上がっていた折でしたので残念です。
これからさらに充実した鍵山さんを食することができると思っていた矢先のことで、家族一同、これからどこに和食を食べに行けばいいのだと途方に暮れる始末・・・。
いろいろな事情が重なって、と鍵山さんはおっしゃいます。
閉店の決断、これを尊重いたしましょう。
また再開するまで、その味にまた会う日まで、想いを温めておきましょう。
で、家族で行ってきました、鍵山さんち。
最初はキリンのハートランドから。あ、家族はソフトドリンクです。
ビール好きなら知っているこの一杯。柔らかくあたりの良い喉越し。ふわっとした香りも魅力的。
前菜は三品。
おたふく豆の珈琲煮。自家製切り干し大根。そして江戸風厚焼き玉子。
卵焼きはエビのすり身とお出汁たっぷり。
続いてはごま豆腐。イカと一本ねぎくるくる巻きの酢味噌和え。そして自家製ちりめん山椒を散らした冷ややっこ。
山椒は春先に伊豆に一年分を採りに行って、青や有馬に仕上げたりして保存しておくのだそうです。
いい仕事するなあ・・・。
おつくりは、ボタンエビとクジラ、マグロ。付け合わせの生海苔。
台風が来てるのでいいお魚がなくて、とこぼす鍵山さん。
たまらん。
で、日本酒にスイッチ。最初は「獺祭」。華やかな香りと甘さが素敵です。ちりめん山椒との相性もいい。
続いてはトロたくウニ納豆。生海苔付き。
よーく混ぜて
海苔に乗せていただきます。
ご飯がほしい・・・米粒くれ~との心の叫びを聞いたのか「ご飯は出ません」とひとこと。
続いてはウニとフォアグラの茶わん蒸し。
はぁ、ふゥ・・・ホッとする暖かさとコク。旨いなあ・・・。
トマト出汁の素麺をいただいて口が変わったところで、こんどは秋田銘酒「刈穂」をいただきます。
一息ついたころ、鱧とマツタケの土瓶蒸しがでました。
たまらんなあああああああああああ( ;∀;)
で、もう一本・・・銘柄忘れた・・・このころはかなり酔ってました。
次に出た冬瓜のコンポートにはびっくり。
うーんこんな使い方もあるんだ、勉強させていただきました。
舌触りは、どちらかといえば洋ナシのよう。
冬瓜といえば豚バラブロックと煮たり、精進の煮物にしたりで、甘く煮るなんて思わなかったな。さすが。
次は鍵山さんちの十八番、鯛のかぶと煮。
自家製山椒をつかった有馬仕立て。
ピリッとした山椒と頬肉の甘さ柔らかさが、最高です。家族4人、骨まで愛してしまいます。
しゃぶってしゃぶって、黙々とおしゃぶり作業に集中します。う、旨い。
鯛の煮汁、ご飯にかけて食べたいな~、という心の声が聞こえたのか「ご飯出ません」の声。
はぁ、がっかり、と思っていたら、「煮汁のストック、持っていきません?」
え?
「もう、かぶと煮も作らなくなるし」
あ、そうか、閉めちゃうんだ・・・・・・・
残念だなあ・・・・もう一本、呑もう。
出てきたのは「十四代」。
最後にお寿司と煮もの椀、小皿ものとお漬物。
お寿司は関西風。おちょぼ口でも食べられる小ささ。
煮物は茄子、高野豆腐の扇作り、京ガンモ、地物の南瓜、鶏団子。
小皿ものは蕨の辛子豆腐味噌かけ。
お漬物は茄子、沢庵、切り干しのハリハリ。
まんぷくりん、です。
もう食えねえ、というところでお抹茶がでました。
そしてデザートは名物大根餃子?
すりおろした大根を甘く煮てシナモンを加えたものを、餃子の皮で包んで揚げた、まるでリンゴパイのような味。
ふう、堪能しました。
名店がまた一軒、無くなっちゃう。
和食難民になっちゃうな。
鍵山さん、またこっそり開店してくださいな、誰にも言わないで内緒にしとくから。
さんぜのまなざし goo別院 1608