らば~そうる “IN MY LIFE”

旅、音楽、そしてスポーツのこと。過去、現在、そして未来のこと・・・「考えるブログ」。

66.YESTERDAY

2006-01-03 | 12.THE BEATLES
【写真:ALBUM "HELP!" 2006年01月03日00時29分撮影】

 アルバム"HELP! "が1965年に発売された当時、LPの見開きの中に
この曲の紹介を星加ルミ子さんが書いていた。
「ジョン=ポール作。このLP中最もスローなナンバーで、ポールを
フィーチャーしています。彼はギターをひきながらしんみりと歌って
いますが、面白いことにストリング・カルテットが参加しています。」

 'Yesterday 'はポール・マッカートニーの作品である。この曲は、
過去に最も多くレコーディングされた曲となっただけではなく、ビー
トルズ初の「ソロ・ナンバー」として名をとどめた。ジョージ・マー
ティンのアイディアで、この曲には弦楽四重奏の伴奏が採用された。
チェロ・ヴィオラ・バイオリンの演奏を外部の演奏家に委託すること
により、'Yesterday 'はビートルズ4人以外がレコーディングに参加
する初めての曲となった(ジョージ・マーティンは除く)。
 さらに1966年のワールド・ツアーの頃は4人で演奏するように編曲
されたが、1965年の初演の頃は、事実上「ポール・ワンマン・ショー」
という形で聴衆に披露されていたのである。

 初の公開演奏は1965年 8月 1日。英国BLACKPOOL におけるTV番組
"Blackpool Night Out "である。'Ticket To Ride'を演奏した後に、
ジョージが「新しいアルバムから・・・その曲は、'Yesterday '!」
と紹介する。しかし、会場はシーン・・・。それはそうだ。"HELP! "
が世に出るのが、5日後の 8月 6日。聴衆はまだ'Yesterday 'が何た
るか、誰も知らないのだ。
 ジョージのMCの後、ギタリスト両名は両袖にそれぞれ撤収する。
リンゴはドラムセットのそばに残る。そこへ、ヘフナーのベースから
"EPIPHONE TEXAN"に持ち替えたポールが「ありがとう、ジョージ。」
と登場する。イントロが始まり舞台が暗転し、ポールのみにスポット
ライトが当る。本邦初公開の'Yesterday 'の始まりだ。

 イントロ2小節、変則的なAメロ1回目の7小節を終えると、会場
に弦楽四重奏が鳴り響く。会場のどこかでカルテットが生で演奏して
いるのだろうか(※)。どうやって同期させているのか、興味深い。
おそらくポールのアコギに、カルテットが合わせているのであろう。
1音低くチューニングされている"TEXAN "の低弦をポールが「バチッ」
と弾く音がよく聴こえる。見事なフィンガーピッキングだ。やがて、
エンディングを迎え歌い終えると、聴衆から叫び混じりの大歓声の嵐
が・・・。

(※)予め録音しておいていたようです。後日修正(2009.08.01)

 ステージが明るくなり、ジョンが花束を持って登場。ポールに対し
「ありがとう、リンゴ。素晴らしかったよ!」ポールが花束を受け取
ると、「花」の部分がすっぽり抜け、ジョンがお持ち帰り。ポールの
手元には柄だけが残るというオチつきだ。微笑ましい光景に見えるが
'Yesterday 'を巡るその後の展開を考えると、なかなか複雑なシーン
である。

孤独なポール その才能ゆえに

 'Yesterday 'は当時英国ではシングルカットされなかった。その点
に、チーム団結のため、他の3人に配慮したポールの苦悩が見え隠れ
する。ビートルズは"HELP! "以前、ジョンがグループを牽引してきた
感が、その楽曲発表数からも確認できる。"LENNON-McCARTNEY"という
クレジットではあるが、実際はジョンの作品、ポールの作品なのだ。
しかし、"HELP! "では、ジョンの作品が5曲、ポールの作品が5曲、
ジョージの作品が2曲、カヴァーが2曲(1曲はジョンがヴォーカル
もう1曲はリンゴがヴォーカル)という構成となった。'Yesterday '
に対する絶大な評価もあって、"HELP! "はジョンとポールが「対等な
関係」になったアルバムとなったのである。

 他の3人との微妙な影。ビートルズ解散後における著作権問題等。
逆説的ではあるが、名曲'Yesterday 'の発表がグループ内部に新たな
「心理的影響」を発生させたことは否定できないと思う。
 ポールの才能は確かにすばらしい。しかし「マルチ・プレーヤー」
として"HELP! "以降、ベース以外の楽器を弾くようになった。ジョー
ジの代わりにリード・ギターを弾き、最後にはリンゴに代わってドラ
ムを叩くようにまでなった。グループの方向性やマネジメントを牽引
する頃には、他の3人とは「距離」ができてしまうのである。何に対
しても「一所懸命」なポール。その一途さが強引さに解釈されてしま
った「悲劇」である。

 このように、'Yesterday 'によりグループは多くの名声を得たが、
その代償として失うものも多かったと言えよう。しかし、楽曲として
純粋に見れば、「2回目のBメロ4小節目」。あのチェロの「E♭」
を使うことを主張したポールのセンスは、オドロキである。

 なお、「Bメロ1小節目と5小節目、1拍目・2拍目」と「同じく
2小節目と6小節目、4拍目」のコード表記が微妙なところである。
市販のスコアでは、それぞれ「A7sus4」「Dm/onA」と表記されている
ことが多いようだ。原曲を聴きなおしてみると、当該箇所は以下の音
で構成されている。

【市販スコアのコード表記】

    |A7sus4 A7    |Dm C  B♭ Dm/onA|Gm6    ~
     ------             ------      

【ポールのアコギ】(※1音低いチューニング)

1弦  | EEE EEE |D E F ED | E   ~
2弦  | BBB AAA |         | B♭  ~ 
3弦  | GGG GGG |         | G   ~
4弦  |         |D C      |
5弦  |    A    |    B♭A  |G    ~   
6弦  |E        |         |

【ストリングス】

Violin1 |D   E    |F(G A GF)|E (G)~
Violin2 |B   C#   |D E F ED |B♭(E)~
Viola  |G   G    |F        |G    ~
Cello  |A   A    |D C B♭A  |G    ~
              ※( )内は2回目のみ  

 まず「A7sus4 」についてである。
 『アンソロジー』の映像、問題の箇所でポールの右手の人差し指が
セーハしているのが確認できる。背後からの映像なので第2フレット
かどうかは推測であるが、前後の状況から判断して、第2フレットを
セーハしていると判断してよいだろう。よってギターは「Em」を奏で
ストリングスは「Em7/onA 」を響かせていることになる。いっぽう、
violin2 が「B」音である理由から、少なくとも「A7sus4」ではない
と判断できる。
 従って、結論は「Em7/onA 」ということでいかがであろうか。

 次に「Dm/onA」についてである。
 これは、2小節目と6小節目のチェロのラインが「D→C→B♭→
A」と下降し、次の小節で「G」となることからルート音をベースと
したコード表記が自然かと思う。
 ゆえに、結論は「Am」ということでいかがであろうか。   

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5 Comments

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いらっしゃいませ♪ (らば~そうる)
2006-01-11 03:06:59
to:ゆうさん。



お越しいただき、ありがとうございました。



私も気がついてみると

やはりジョンの曲を話題にすることが多いようです。

ポールの曲も嫌いではありませんが

グループのイニシアティブを握るようになってから

ジョンに比べて「商業的」(=売れる歌とは何か)な色合いが

出ているのかなと個人的に思っています。

しかし、それも持ち味ですね♪



またお立ち寄りくださいませ。
返信する
こんにちは^^ (ゆう)
2006-01-09 17:40:41
コメント&TB、ありがとうございました。

コードとかはよく分からないんですが、初めて知った話とか(Yesterdayが英国でシングルカットされなかった話など)もあって、読んでいて楽しかったです。また来ます^^
返信する
いらっしゃいませ♪ (らば~そうる)
2006-01-05 21:40:18
to:あべちゃんさん、ぼち×2さん。



コメントありがとうございました。

長文をお読みいただき恐縮です。

ご指摘、ご意見等、お待ちしておりま~す♪
返信する
どうもありがとうございました (ぼち×2)
2006-01-04 21:56:59
コメントをありがとうございました。

しばらく通わせていただき、記事を読ませていただきます。
返信する
早速来ちゃいました (あべちゃん)
2006-01-03 02:57:22
コメントとトラックバックありがとうございました。すごいですねえ、時間をかけてすべて読ませてもらいます。感想入れます。
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