【SINGLE 『美しき愛の掟 c/w 風は知らない』】
GSの雄といわれる「ザ・タイガース」。もちろん、ザ・スパイダ
ースやザ・テンプターズの存在も大きい。ザ・タイガースは「僕のマ
リー」で1967年の 2月にデビューした。オリジナル・メンバーは
瞳みのる :PEE
加橋かつみ:TOPPO
森本太郎 :TARO
岸部修三 :SALLY(註:きしべ おさみ と読みます)
沢田研二 :JULIE
である。彼らは京都出身。5人揃って1966年のビートルズ日本公演を
観たというから、その後半年と少しでデビューしたわけである。
タイガースは、作曲家のすぎやまこういち氏によりそのイメージが
形成されていった。そのイメージとはズバリ「王子様・貴公子的路線」
である。当時ちょいワルぽかった、ショーケン(音楽的には松崎由治)
率いるテンプターズと人気を二分していた。
そのような中でわたしのお気に入りは、「落葉の物語」「銀河のロ
マンス」「廃墟の鳩」「光ある世界」・・・等であるが、ひとつ選曲
するならば「風は知らない」である。
実はこの曲がリリースされた1969年 3月、タイガースにとって事件
が起こった。TOPPO 加橋かつみの脱退である。公式には1969年3月8日
に「除名」と発表されたわけであるが、これにより岸部シロー(岸部
修三の弟)を急遽、新メンバーとして加入させたのである。私見だが
この事件を境として、タイガースに対する「熱」は次第に冷却されて
いったように思う。それはちょうど、春から夏の青春期を経てやがて
秋とともに訪れる、潮が引いた後の空虚な「季節感」にも似ている。
そんな「タイガースの季節感」の中、1969年 3月25日「風は知らな
い」は、リリースされた。新生タイガースとして。しかし、この曲の
レコーディングに、岸部シローは参加していない。そうなのである。
脱退した加橋の「ハイトーン・コーラス」が、この曲を叙情をさらに
深化させているのである。加橋のファンはこのシングルを「新生タイ
ガースの第一弾」としてではなく「トッポのラストシングル」として
受け止めていたにちがいない。
昨日鳴る鐘も明日はない・・・
沢田の中音域のヴォーカルの上に、加橋はコーラスでこのように歌う。
当時、何を思って・・・。
『美しき愛の掟 c/w 風は知らない』としてリリースされたシング
ル・ジャケットについても「急遽」感が出ている。1968年 9月25日に
リリースされたシングル『廃墟の鳩 c/w 光ある世界』の画像の左右
を反転させて、さらに加橋の顔の部分を「ぼかし」ているのだ。加橋
が音源に登場していながらも、もはやグループの一員ではない・・・。
「急遽」処置したジャケットの内容が、この状況を実にうまく表現し
ているのはないだろうか。逆説的である。
『光ある世界 c/w 廃墟の鳩』(沢田メイン)
『廃墟の鳩 c/w 光ある世界』(加橋メイン)<ご参考>
「風は知らない」。内容的には、イントロやバースの合間のコード
進行「Gm/onC→Am/onC→B♭/onC→Am/onC」
を、アコースティック・ギターのアルペジオとベースが奏でるコラボ
レーションが好きである。また、岩谷時子氏の作によるリリカルな詞
の中「昨日鳴る鐘も明日はない」の加橋のコーラス・ワークが、実に
美しい。特に「明日はない」の「い」の部分「C#」音は、聴き手の
胸に訴える何かがあるかと思う。
大空の広さを 風は知らない・・・
いらっしゃいませ♪
今後ともよろしくお願いいたします。
さて、ご指摘の通り、「銀河のロマンス」「落葉の
物語」・・・。
すぎやまこういち氏ワールド炸裂ですね♪
「風は知らない」はいわばタイガースの前期と
後期を分ける曲だと思っています。
いろいろな意味で「深い」曲ですね。
大好きです。
コードのご紹介、どのような方法で
いたしましょうか?