らば~そうる “IN MY LIFE”

旅、音楽、そしてスポーツのこと。過去、現在、そして未来のこと・・・「考えるブログ」。

79.『土の歌』~音楽とともに(高校生のころ・3)

2006-01-16 | 11.Music
写真:『土の歌』(あれこれ) 2006年01月15日22時01分撮影】


 1978年、F高校合唱部の外部演奏会で『土の歌』を演奏した。あの
頃は、合唱に始まり合唱に終わる生活をしていた。素晴らしい仲間も
でき、今でもその交流が続いている。

 なんと素晴らしいことであろうか。

 生命の根源のひとつである「土」。このカンタータのもつ「重厚で
荘厳」な世界を自分たちなりに精一杯表現しようと、必死で取り組ん
だものである。今、手元にその演奏会の「懐かしいテープ」と、東京
混声合唱団とNHK交響楽団が岩城宏之氏の下で演奏した「それより
も古いテープ」がある。ときどき懐かさを求め聴いてみる。すると。
不思議なことに、あの頃のことが鮮やかに蘇ってくる。もう30年近く
経過しようとしているのに、その色はまったく褪せていない。

『土の歌』よ 永遠なれ!

 今回も「音」を紹介することはできないが、『土の歌』のレビュー
である。我々の合唱団では、1975年に東京音楽社から発行された楽譜
に基づき演奏した。佐藤眞氏が1962年に日本ビクターから委嘱を受け
て作曲した『土の歌』は、大編成のオーケストラの演奏と混声合唱の
組み合わせであった。音域も1曲を除き(註)、我々の演奏したもの
よりも半音から全音高かった。
(註:佐藤眞氏は、「2曲を除き」と改訂版発行に際してコメントさ
 れている。このレビューは、私の聴き取りの結果である。)

 さすがにプロの合唱団の音域へ挑戦することは無謀であるが、それ
でも、あの「原曲」の「調」の響きへは、いまだ憧れがある。同じ楽
曲でも、「調」によってイメージがかなり異なってくるものである。
作曲家が原曲に設定した「調」は、意味をもつものだと思う。だから
その意味を少しでもわかりたいと演奏者は思うのではないであろうか。
 もちろんアマチュアが、しかも高校生が演奏できる音域、「調」で
我々は最大限の努力をした。そして「何か」を当日聴いてくださった
皆様が感じてくれたと信じている。同時に、大きな感動を自分たちも
得ることができた。
 それだけでいいのである。

第1楽章:農夫と土(原曲:変ロ長調,改訂:イ長調)
 大地の恩恵を受け、日々汗して朝、星がまだ消えぬ時間から夕星を
見るまで働く農夫の姿。土への感謝と畏敬の念がそこにある。

 たがやして 種をまくもの
 農夫らの
 楽しみの種 悲しみの種
 ともかくも 種がいのちだ

 このカンタータの舞台は日本である。しかし、変ロ長調というのは
私にとっては「ロシアの広大な大地」をイメージさせてくれる。夜明
け前、朝もやの中で空がしだいに明るくなっていく・・・。
 そんな感じである。

第2楽章:祖国の土(原曲:変ロ長調,改訂:イ長調)
 行進曲風の勇ましい曲。祖国への誇りを胸に、我々は、次の世代へ
美しい日本を、いや、地球を引き継いでいかなければならない。

 山河よ 桜の 菊の花咲く丘よ
 顔あげて どうどうと踏みしめて
 この土を 踏みしめて
 この土を 守ろうよ 祖国の土を 

第3楽章:死の灰(原曲:ト短調,改訂:ヘ短調)
 「原爆」の悲劇。文明とは何か? 科学の進歩が人間にもたらせた
ものは?
 現代社会に対し、怒りの警鐘を鳴らす。けっして、犠牲者への鎮魂
だけで終わらせてはならないのだ。

 文明の不安よ 科学の恥辱よ
 文明の不安よ 人知のおろかさよ

第4楽章:もぐらもち(原曲:変ロ短調,改訂:イ短調)
 愚かな「人間」への痛烈な風刺。「土から出てきて、土にと帰る」。

 火の槍に おびえるものは
 死の灰を 恐れるものは
 もぐらのまねを するそうな

第5楽章:天地の怒り(原曲:ヘ短調,改訂:ホ短調)
 愚かな「人間」に対し、天地の「鉄槌」が下る。
 カンタータのテーマから離れるが、この歌詞は、あたかも近い将来
に起こるだろうの天地の異変を、予兆しているかのようである。

 火の山の爆発だ
 地震だ 火事だ
 熔岩が流れる
 尾根がくずれる
 落ちる なだれる
 火の海だ
 修羅のちまただ
 逃げまどう人の すさまじい叫び
 うめき のけぞる ころがる
 煙突が倒れる
 時計台がくずれる
 ああ ああ
 荒れくるう まち

第6楽章:地上の祈り(原曲:ト長調,改訂:ト長調)
 日本の美しい山河。戦争の愚かさを省み、二度と戦争を起こしては
ならない。敬虔な気持ちで、祈りを込めて歌うコーラスの旋律・ハー
モニーがとても美しい。Religioso の短7度で推移するハミングは、
荒廃から再起しようとする「人間」のひたむきな生命力を感じざるを
えない。私はこのカンタータの中では、絶対この曲である。涙無しで
は、とても演奏できない。

 地の上に 花咲くかぎり
 喜んで日ごといとなみ
 悲しみも耐えていきよう

第7楽章:大地讃頌(原曲:嬰ハ長調,改訂:ロ長調)
 壮大な終曲。母なる大地。そこに人の子の喜び。人は土に感謝する。
平和って、なんて素晴らしいことなのであろうか!

 平和な大地を
 静かな大地を
 大地をほめよ
 たたえよ 土を

                            つづく

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4 Comments

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土の歌 (あきら)
2006-01-17 09:23:56
全曲を聴いたことがありません。

らば~そうるさんのブログを読ませていただいて

全曲通して聴きたくなりました。



私も娘のピアノの先生に楽譜をお願いしました。

何とか弾けるとうれしいです。



トラックバックありがとうございました。
返信する
Pianoforte (らば~そうる)
2006-01-18 00:48:29
to:あきらさん。



コメント、ありがとうございました♪



ピアノ、いいですね~。

『土の歌』は、そのテーマから重厚な感じの曲が多いのですが

中でも「地上の祈り」は何度聴いても、演じても

素晴らしい曲だと感じております。

楽譜を入手されたら、この曲のTempoⅡからの

ピアノソロを

ぜひ、お弾きになってみてください。

終曲「大地讃頌」への「つながり」が、とても感動的ですヨ♪
返信する
ありがとうございます (あきら)
2006-01-18 11:35:28
【土の歌】はCDとして販売されているのでしょうか?

重厚感のある音楽はとても好きなので、なんだかとても

気になっています。

もし、ご存知でしたら教えてください。

よろしくお願いいたします。
返信する
土の歌CD (らば~そうる)
2006-01-19 00:47:45
to:あきらさん。



私は高校時代に恩師がテープで保有していたのを

再録音しました。(音質はあまり・・・)

時代は過ぎて、CDの時代(もうCDでもないとも言われていますが♪)。



以下のCDを見つけました。

私もぜひ購入しようかと思っています。



http://www.excite.co.jp/music/song/4519239010262
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