朝井まかて 著作 「雲上雲下」 徳間書店
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団子がお地蔵さんの穴倉に落ち込んで、それを取りに行った信心深い爺さん婆さんが、褒美?を貰える『団子地蔵』とか、約束を破ると竹やぶの中の屋敷が消えてしまう話とか、以前どこかで聴いたような話が、いろいろ出てきます。これは、昔話の短編集か?
田螺を生んで育てる『粒や』、竜宮城でのお家騒動、亀と乙姫様を描いた『亀の身上り』、門前の猫がお経を覚えて、朽ちかけたお寺の檀家を増やす『猫寺』とか面白い話が続きます。
ところがである。短編集ではない!
大蛇(犀竜)の子ども、小太郎の話は興味深い。小泉小太郎の民話が長野県に実際にあるらしい。かって湖だった松本盆地を陸地にしたとか。たぶんそこから取ってこの作品にしたのだろう。いやいやまてよ。つい先日読んだばかりの『神去なあなあ夜話』の神去村も大蛇がいた池の水を抜いて陸地にしたのだ。こんな話は、全国各地にあるのだろうか?
そして話は、聞き手の山姥と子狐の話となり、話し手の草ドンの生い立ちに飛んで行きます・・・
雲の上には、神様のおわす所(高天原?)が有り、雲の下には草民の暮らす地上がある?
草ドンは、神様に話を聞かせる御伽衆だった。雲の上から、草民が語る昔話を聞き集め、神様に語っていた。
神様を信じる人がいなくなれば、神様もなくなるだろうし、聞き手がいなくなれば、昔話もなくなってしまう。
何だか、教訓めいた衝撃を残して、この物語は終ります。
この小説のお気に入り度:★★★★☆