早いもんで、先月の話になるんだけどな
俺の遺品を持ってきてくれた奴がいた
「鬼姫の手甲」
俺が10年前に売ってた格闘用の武器だ
そもそもはおふくろが雑貨屋をやってたときに売り出してたもんで
俺のはその復刻版になる
手甲の色(材質)が選べて
シリアルナンバーと名入れをしたセミオーダー品として売ってたんだな
…そいつが持ってきてくれたのは
俺の名前が入ったシリアルナンバーゼロの試作品
そして、幾多の戦場で愛用してきた相棒だった
俺はそいつのことを知っている
昔、俺がとある国で柄にもなく公爵なんてのをやってたとき
何度か話をしたことがある
その幼い横顔や喋り方がどこかあいつに似てたこともあって
何故かずっと覚えていた
…が、今ではもう、そんな幼さは抜けて
威風堂々たる王者の貫録すら漂うときたもんだ
ほんと、時の流れってのヤツぁ…
逆に俺みたいな三下を覚えてくれて
ずっと、それを取っといてくれたってのに嬉しくなるよな
けど、なんだって、お前の手元にあるんだい?
聞くより先にそいつは話してくれた
義姉の形見です、と
もちろん、俺はそいつの姉も知っている
が、正直そう親しい間柄じゃないんだ
つまり、俺がその間際にそいつの姉さんに渡した訳じゃねえ
俺は、最期、何を誰に残したんだっけか…
思い出せようにも思い出せない
今となってはなんで死んじまったのかも、よく思い出せねえからな
確かなことは碌でもねーってことだけだ
でも、そこに俺の相棒だった鋼の右腕がある
折角のお申し出はありがたいが、今の俺には必要のないシロモノだ
なんでだろう、俺は受け取れなかったよ
代わりにそいつは
昔出回っていた赤い宝石が欲しかったって言うもんだから
「不滅の炎」を渡してやった
昔出回ってた赤い宝石ってのも、俺が磨いたもんだったんだな
なんだか良くわかんねーが妙な縁がそいつとはあったみたいだ
お前は今が一番大変な時期だと思うけど、後悔のない道をな
何かありゃあ義理を通すが、そーならねえことを祈ってる
もっとも、何でも穏便に済ますのが良いってわけじゃねーし
だから難しいんだろーけどな…
ままならねーもんさ、世の中って
俺の遺品を持ってきてくれた奴がいた
「鬼姫の手甲」
俺が10年前に売ってた格闘用の武器だ
そもそもはおふくろが雑貨屋をやってたときに売り出してたもんで
俺のはその復刻版になる
手甲の色(材質)が選べて
シリアルナンバーと名入れをしたセミオーダー品として売ってたんだな
…そいつが持ってきてくれたのは
俺の名前が入ったシリアルナンバーゼロの試作品
そして、幾多の戦場で愛用してきた相棒だった
俺はそいつのことを知っている
昔、俺がとある国で柄にもなく公爵なんてのをやってたとき
何度か話をしたことがある
その幼い横顔や喋り方がどこかあいつに似てたこともあって
何故かずっと覚えていた
…が、今ではもう、そんな幼さは抜けて
威風堂々たる王者の貫録すら漂うときたもんだ
ほんと、時の流れってのヤツぁ…
逆に俺みたいな三下を覚えてくれて
ずっと、それを取っといてくれたってのに嬉しくなるよな
けど、なんだって、お前の手元にあるんだい?
聞くより先にそいつは話してくれた
義姉の形見です、と
もちろん、俺はそいつの姉も知っている
が、正直そう親しい間柄じゃないんだ
つまり、俺がその間際にそいつの姉さんに渡した訳じゃねえ
俺は、最期、何を誰に残したんだっけか…
思い出せようにも思い出せない
今となってはなんで死んじまったのかも、よく思い出せねえからな
確かなことは碌でもねーってことだけだ
でも、そこに俺の相棒だった鋼の右腕がある
折角のお申し出はありがたいが、今の俺には必要のないシロモノだ
なんでだろう、俺は受け取れなかったよ
代わりにそいつは
昔出回っていた赤い宝石が欲しかったって言うもんだから
「不滅の炎」を渡してやった
昔出回ってた赤い宝石ってのも、俺が磨いたもんだったんだな
なんだか良くわかんねーが妙な縁がそいつとはあったみたいだ
お前は今が一番大変な時期だと思うけど、後悔のない道をな
何かありゃあ義理を通すが、そーならねえことを祈ってる
もっとも、何でも穏便に済ますのが良いってわけじゃねーし
だから難しいんだろーけどな…
ままならねーもんさ、世の中って