そこからは病室に案内される。
看護師さん達からの勧めもあり、個室で入院をすることとなった。
面会時間はとっくに過ぎていた。
今のご時世柄、感染症のリスクや新生児がいる病棟と言うこともあり、面会時間は13:00-15:00の間で15分と決まってきた。
しかし私達家族は時間が無いのだ。
ましてや産まれてくる子供はレアケース。
週明けまでにここでの出産にするのか隣県に行くのか。
猶予は3日であった。
留まるか動くかだけなら3日もあれば簡単に結論は着くだろう。
しかし、ことが事なのだ。
余りにも大きすぎる話。
次のステップに気持ちがなかなか進まない。
妻と自分の母と自分。
皆が
「なんでうちを選んだのだろう」と前向きには、考えてあげられなかった。
今となってはこれを、申し訳ない感情だと思っています。
病室に案内される前に、何点かの同意書をお願いされた。
その中に「出産後の胎盤を調べても良いか」と言うものがあった。
私は男で初めての出産の経験なので、普通のことだと思っていたのだが、
母が「こんな事聞かれたことないよ〜」と言っていた。
この症例の事について、調べて今後に繋げるという事なのだろうと思った。
病室に案内されてからは、思ったより和やかなムードに、3人がなった。
「いや〜まさかね〜笑」
「思ってた通りになるなんて笑」
といった具合に重い空気をまといながらも、軽妙なトークのラリーは続く。
その中で私が
「どうする?病院を」と聞くと
妻は
「ここにするよ。隣県は現実的ではない。遠くなるしそれだけ子供に会う時間も短くなるし、何かあった時に自分がそこまで行ける気がしない」との事。
妻は私のとこに嫁いできてくれて免許を取ったという形なので、運転初心者だったのだ。
そこには本人も一抹の不安があったのだろう。
しかし、遠くなると自分達の負担が大きくなるのは一目瞭然。
3日という期限どころか3時間もかからない位で結論は出た。
そこからは、ただただ、色々と会話する中での話の消化作業である。
心の準備をさせてくれていた妻には本当に今となっては感謝である。
あの時は、不安を煽られる形になったが笑
想像してたことは簡単に現実にならないと思っていたがなったんだな〜と思っていた。
そこからは少し、気を利かせてくれて、夫婦2人にしてくれた。
そこで思いが弾けた。
2人して今日何度目だろうか。涙するのは。
その中でも1番泣いた。
気丈に振舞っていた妻が。
私ももちろん泣いた。
しかし、私よりも自分のお腹にいた妻は耐え難き、忍び難き気持ちであろう。
私は近づいて背中を撫でることしか出来ず。
妻は、固く私のシャツを握りしめていた。
少しの時間を頂き、今日は一旦帰ろう。
各々の気持ちを整理するためにも。
皆がそれぞれ思い思いの夜を過ごす事になると思うが、
いい気持ちで朝を迎えることは無いことは容易く想像出来ていた。
ここから私達夫婦はどうなるのだろう。
そしてこの家族はどうなるのだろう。
子供が出来れば人生は変わるものだと思うが、あまりにも変わりすぎである。
そして、夜は更に更けていく。