ゴミを出しに行ってくれた家主が
戻ってくるなり話し始めました。
「俺が下の郵便受けを見てるときに
スーッと横を通ってエレベーターで先に上がって行ったわけ」
はいはい。
「そしてすぐ後に俺がエレベーター待ってたら、案の定5階で停まって、そのまま下りてくるなって待ってたら、そのあとエレベーターが最上階まで行ったわけ」
はいはい。
「で、俺は最上階から誰か降りてくるんだろうと思ってたら、またエレベーターが5階で停まったんだよ」
はいはい。
「そして1階に来たエレベーターにさ、
その5階のオヤジしか乗ってねーんだよ」
はい。え?うん。なに?
「あのオヤジさ、
出かけようと思ってたけど忘れ物したんじゃねーの?それで取りに戻ったけど、自分が降りたあと、俺が1階でエレベーター呼ぶの分かってたから、わざと最上階までエレベーター行かせたんだよ」
それって、どういうこと?
「自分はすぐ忘れ物とってまたエレベーターで下に降りたかったってことだよ」
うん?
「だからー、自分が5階で降りて、そのままだと俺が呼んでるからすぐエレベーター1階にいっちゃうでしょ。
俺がそれに乗ったら、また俺が上まで行っちゃうでしょ。」
はい。
「そうするとだいぶ待つようになるから、そうならないように、最上階まで行って5階に戻ってくる間に、忘れ物を取ってこようと考えたんだよ、あのオヤジ頭いいよな」
へぇ。そんなことまでわかるのすごいね。
「あのオヤジ、エレベーターから降りてきた時は、手に傘持ってたから。あれは傘を取りに戻ったんだよ」
まるで探偵のような
謎解きミステリーのドラマのような
その考察力に
思わず感心してしまった私。
「すごい推理だね」
そう言うと
「いや、俺あのオヤジ大っ嫌いなんだよ。だけど頭使ってるよなーと思ってさ」
「そんなカラクリに気がつくのもすごいじゃないの」
その言葉に
ちょっと照れくさそうにしながらも
やや得意げな顔をして
家主は部屋に入っていきました。
私と違って家主は
いつもいろいろ頭の中で
考えてるんでしょうね。
私なら
なにも思わずただエレベーターを待ってるだけで、
気にならないから
気がつくこともない。
チクショーとも思わなければ
知恵をはたらかすこともない。
フツーの時間が多めです。
ボーッと生きております。
ꉂ(* ̄∇ ̄)ʱªʱªʱª