取材の際、何十年とその道で活躍されているプロの方に、「どうやって仕事を覚えていかれたのですか?」「上達するコツはありますか?」とたずねると、よく返ってくるのが「できている人のマネをする」という言葉です。
接客や販売の仕事だと、上司や先輩がお客様と会話をされている話し方から立ち方、仕草、話の組み立て方まで、何から何まですべてマネをして覚えていくそうです。工場の仕事や職人さんも、まずは先輩がされている体の動かし方を見て、コツを掴んでいくのだとか。
「できている人がいるなら、必ずできるようになる」
「できている人のマネをするのが、仕事を覚える一番の近道」
私もコピーライターになりたての頃から、最近でもスランプ気味のときや、アウトプットが続き、インプットが足りないなぁというときは、写経(しゃきょう)をします。コピー年鑑やコピーの本を見ながら、一言一句そのままノートに書き写していきます。
21歳でコピーライターになってからは、コピー年鑑やアドフラッシュのコピーを見て、キャッチコピーやボディコピーはもちろん、受賞コメントまですべて書き写していました。結婚してコピーから離れていた1996年から2014年まで、18年間のコピー年鑑もすべて写経しました。
コピー年鑑は、コピーライターになって2年目、1冊だけ買ったことがあります。1990年10月10日に発行されたコピー年鑑。当時はTCC広告年鑑というタイトルでした。定価は15000円。打ち合わせに行くスーツは2着しか持っていなかった当時、かなり覚悟を決めて買った覚えがあります。今も、最新のコピー年鑑が出ると、ひと文字ひと文字、写経します。
コピー年鑑は大きな図書館に行くと、最新刊だけが棚にあり、バックナンバーはすべて書庫にあります。宣伝会議賞のコピー、なかなかはかどらないなぁという方は、見るだけでもおすすめです。
【コピー年鑑以外にも、写経するのは…】
◆新卒サイトのコピー
今は求人広告のコピーを書いているので、新卒サイトのコピーも書き写します。伊藤忠商事の「ひとりの商人、無数の使命」は一番好きなコピーです。
◆受賞されたコピー
昨年の宣伝会議賞、中高生部門で受賞されたコピーは、「10代の発想はすごいなぁ、自分にはこんな柔らかい発想はできないなぁ」と感心して書き写しました。
◆テレビやラジオから聞こえてきた言葉
テレビを見ていて響いたミュージシャンの言葉、ラジオから聴こえた言葉、心に沁みた言葉など、心が動いた瞬間に書きとめておきます。
◆書籍の言葉
・「世界一流企業のキャッチフレーズ」
海外のコピーが掲載された書籍。端的なフレーズが多く、参考にしています。
・「夢の扉 プラス あきらめない人が心に刻んだ24の言葉」
コピーではなく、「見出し」や「小見出し」と呼ばれるものにも、力強い言葉がたくさんあります。
・「心に残る名作コピー」
名作は、コピーのスパイスが集約されています。コピーの型に縛られないことも大切ですが、「型を覚えて、型を忘れる」ことが大切なのかなという気がします。
【写経をおすすめする理由】
写経のいい点は、体にコピーのリズムや感覚がしみつく点です。手を動かして書いた言葉は、潜在意識の奥深くに残り、自分自身の血となり肉となります。
「どうすればコピーが書けるようになるだろう」「上達する早道はないかなぁ」という方に、プロのコピーライターのマネをする写経はおすすめです。