【第6部(261)】 1月31日(水) 真知子と春樹の夫婦喧嘩(3)
後宮真知子 鈴木京香
後宮春樹 倉田てつを
浜口勝則 布施博
石上梢 河合美智子
あさ 伊藤嘉奈子
水沢悠起枝 田中好子
水沢謙吾 平田満
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後宮家
かなり派手な夫婦喧嘩をやらかした真知子たち
悠起枝たちの質問は続く
「ねぇ、いかがわしい衣装がどうのこうのって言ってなかった?」
「日劇の募集がどうのって、やりあってたよね?」
「あたし、日劇のダンサーになおると思って」と真知子
「ダンサーって踊り子?」
「ええ」
え゛? と絶句して真知子を見る悠起枝、謙吾、信枝
「あれ、写真で見たけど、きわどいんじゃ」
「やめたのよ。 お金、うんともらえるって聞いて、ふっと‥
清水の舞台から飛び降りるつもりでいたんだけど、できなかった」
安心する3人
「えっ? じゃ、春樹は何で怒ってたの?」
「ちらっとでも、そんなことを考えたのが許せないって。
志が低いとか最低だとか。 思い出したらまた腹が立ってきた!」
「春樹君の気持ち、わからないでもないけどね、男としちゃ、メンツ丸つぶれ」
「今のあの子にそんなこという資格ないわよ」 悠起枝はきびしい。
「春樹さん、帰ってこんのかなぁ」
「威勢いいこと言ってとび出して行ったんだもの、意地でも帰ってこないと思うわ」
「泊まるあてはあるんやろか」
「あてなくて、帰って来ても、あたし入れないわ」
語気の荒い真知子
綾の店
春樹は、足を洗ってもらい、下駄の緒のハギレをもらっていた。
綾が「お茶を飲む時間ぐらいはある」と奥にいれ、
梢とあさは「何があったんだろう?」と話す。
梢はまだ春樹に思いを寄せているので
「もしうまくいってないんなら、あたしにもチャンスがあるのよね」と言っている。
奥の部屋で綾に事情を説明する春樹
「よかったらここに泊まっていきなさい、すごすご帰れないでしょ?
今日は、梢ちゃんもあさちゃんも徹夜で朝までいるし」
と綾
「タンカ切って飛び出すのは真知子さんの方だと思ってた。
うちが実家のような実家のようなもんだし、
人生って意表をついてくるから楽しいわね」
「綾さんはのんきでいいなぁ」
「よく言うわよ、今日も徹夜よ?」
「いや、心持ちのことですよ。のびやかで幸せっていうか、強くて‥」
「そんなことないわよ、ホトホトいやになることもある。仕事にも限度あるし。
そこそこ小金を手にしたところで、欲しいものなんてないし
譲る子どもがいるわけじゃなし」
翌朝、
ラジオ体操の音楽が流れる中、お茶を飲む3人
「どうにか終わった~」
「久しぶりで楽しかった」とあさ、しかしまだ乳飲み子がいるから、初中後は来れない。
梢が、春樹ねらいの朝ご飯を用意しかえった頃、勝則がやって来る。
「後宮君のことで‥」
「本人、来てるけど」
「仕事のことなんです。ひとつ持ってきたんです。
ボクからだというとあれなんで、綾さんからと思って、おせっかいなんですけど」
そこに春樹が「棚、直しましたよー」と降りてくる
結局、あがってお茶を飲む勝則
「夫婦喧嘩? 家出?」
「ええ」
「いずれ荷物はとりに来る
ってタンカ切って出てきちゃったのよね」
「ええ」
「本気なんですか?」と勝則
「なりゆきによっちゃ、そういうことも‥」
「別れるんですか?」
「あ、いや、そこまでは」
「別れてしまったらどうですか?
そんなぐちゃぐちゃやってるぐらいじゃ離婚して下さい。
聞けば君は仕事もしてないようだし」
「言葉が過ぎるんじゃありませんか? なんであなたにそこまで」
「言わせてもらいます、こっちには権利があるでしょ?」
「権利?」
「むかしの話し、むし返します。
私が彼女と別れたのは、家庭が壊れたのは、今さら何だけど、
君たちの結びつきはひとつの家庭を壊して成り立ったモンでしょ?」
「それは‥」
「君たちにも言い分も、その正当性もあるだろう、でもボクにも感情はあるからね。
正直、ムッとするよ。
あの騒ぎ! 結びつきまでの、あの思い出すだけで消耗するような‥
何なんだ、これは。俺の立場は一体‥」
「しかし、いまは幸せに‥」
「どうしてわかるんです。 そりゃ不幸せではないさ。
でも言わせてもらえりゃ、君がいなかれば、やり直せたかもしれない。
結果はどうなったかはわからないが、いわば送り出した人間にしてみれば、
うまくいってくれないと困るよ。
おれだって、どうだった? と聞かれれば酷かったさ。
でも女房に金の心配だけはさせなかった
」
一言も返せない春樹
店の外、綾が勝則を送って出る
「あんなふうになるなんてすみません」
「いいのよ、いい薬。でも人を責める時は、1ヶ所、逃げ道をこさえといて。
正論、正論で追い詰めたら、息の根とまっちゃう」
「‥」
「でも、そうして出世したんでしょうね」
「え、こたえるなぁ」
「仕事はいいのよ? でも人間関係はね、遊びを持って‥」
修造の紙芝居
春樹は、家への帰り道、修造の『怪傑ゾロ』の紙芝居を見ていた。
(つづく)