ありとキリギリス

ありとキリギリスの両面性を持った内面を見つめて交流できれば

「九雀物語」8話

2014-05-17 23:22:38 | 日記
    創作童話「九雀物語」九羽の小雀の冒険物語・第8話

女の小雀「キキ」が「トキ」に飛びかかろうとしている小雀たちの前に割って入りました。
相手の小雀たちも、女の小雀とわかっていたので一瞬意味がわからないように間が空きましたが、
小雀のリーダーが、気をとりなおして
 「訳もわからず邪魔をするんじゃない!」
と大きな声で威嚇し、他の小雀と一緒に攻撃しようと構えました。

「トキ」と「カイ」もまさか「キキ」がそんな行動をとると思っていなかったので戸惑いながらも、「キキ」を護ろうと身構えたとき、
「キキ」が フー!大きく息を吸った瞬間、自分たち雀たちが出す声ではない、遠くに響き渡るような鳴き声を発しました。攻撃しようとしていた小雀たちは、自分たちの怖さにおびえて鳴き声を出したのかと思ってかまわず攻撃を始めました。

その時でした、上空からすごい勢いで大きな黒いものが飛んできて、攻撃しようとしている小雀たちの前に立ちはだかりました。


驚いて、小雀たちは後ずさりして大きな黒い姿をしているものを見て更に恐ろしくなりました。
目の前の黒い大きなものは、今まで見たことのない大きさのカラスで、自分たちを鋭い眼光で睨みつけているのです。そして大きなカラスは、女の小雀に向かって
 「キキ!どうしたんだ」
「キキ」は、目の前に現れた大きなカラスに向かって、今さっきまでのことを話しました。
大きなカラスは「ライ」でした。
様子を見ていた小雀たちは後退りして攻撃の気持ちを無くしてしまったようです。

事情を聴いたカラスの「ライ」は更に大きな翼を広げておびえ出した小雀に向って低く響く声で、
 「俺はカラスのライだ!」「この子がどこに居ても一声鳴けば何処へでも飛んでくるんだ!」
 「お前たちのしていることは小雀だといっても許されないことだ」
 「6羽も一緒にいるんだったら、気持ちを変えたら何でも出来るだろ。 なんだったら、この三羽の連中と一緒にやってみたらどうだ!」
 「今見たように、この女の小雀に特別な方法で俺を呼び出せる力をやってあるから、いつでも困ったら呼んでくれ!」
 「俺も、小さい頃は、いじめられてばかりだったけれど、少しづつ力をつけて仲間を集めて少しは他のものから怖がられるようになったんだ、だけど俺も、俺の仲間も、自分がされたように 弱いものをいじめたりはしないんだ。
  だからお前たちも九羽で頑張ってみるんだな!」

そんな「ライ」の威圧に萎縮していた6羽の小雀も、おそるおそる
ながら、互いの顔をみあわせて「ライ」の言うことにうなずいて
従う様子を見せました。

そんな状態を確かめた「ライ」は
 「俺の仕事は終わったから、待っている仲間のところに戻るぜ」
そう言ったと思ったら「ライ」は大きな羽音を残して一瞬のうちに
遠くへ飛んでいきました。

「トキ」と「カイ」それに「キキ」も今までの緊張を緩めて「ライ」
の提案に同調して6羽の小雀たちに和らいだ顔を見せていました。

6羽のリーダーのような小雀が
 「俺はダンて言うんだ、ほかのやつの名前はゆっくり覚えてくれ」
 「びっくりしたっていうもんじゃないよ! あんな怖いのが護ってくれるなんて!」「じゃあ!これから言われたように9羽でやってみようぜ!」

そんな気持ちを互いに分かり合っていたとき、それまで6羽の小雀
に攻撃されて弱りきって傍にうずくままっていたと思われた老いた
雀がスッと身を起こしたとき、周りが大きな光に包まれ何か輝くよ
うなものが現れました。
                8話終了。


「九雀物語」7話

2014-05-17 23:21:21 | 日記
  「九雀物語」第7話

女の小雀を仲間にした3羽の群れは、少し気持ちが大きくなって、まだ行ったことのない森を目指して飛び立ちました。

少し飛び続けていたとき、「トキ」が他の2羽に呼びかけながら、飛ぶ速度を弱めました。
カイがトキに問いかけます。
 「どうしたんだい?トキ」
トキが応えます。
 「ほら!あの小川のそばを見てみなよ!なにか変だよ!」

言われて「カイ」と「キキ」が、その方向を見てみると、何羽かの雀が騒いでるように見えました。
それは、6羽の小雀が老いた雀を取り囲んで何かしている様子でした。
「カイ」は「トキ」に
 「知らない雀の連中だから、放っておこうよ!」
「トキ」は言います。
 「ちょっと待ってくれ!」

仕方なしに「カイ」と「キキ」は「トキ」の言うように近くの樹の枝に停まって様子を見てみることにしました。

それは、年の老いた雀の持っている果物のようなものを6羽の小雀が取り上げようとして、攻めている様子です。
取られまいと必死になっている老いた雀に、6羽の小雀の集団は、四方から嘴でつついて隙を見つけようとしています。
そして、老いた雀の抵抗が弱ったのか1羽の小雀がその果物のようなもを奪おうとしました。

その時、一緒に様子を見ていた「トキ」がフワット枝から飛び出して、6羽の小雀のいる所に行こうとしました。
あわてて、「カイ」が止めようとしましたが間に合わず、仕方なしに、その後を追うように2羽も続きました。
「トキ」は迷うことなく、6羽の小雀が攻めている老いた雀の傍に舞い降りて、周りの小雀をにらみました。そして「カイ」と「キキ」も並びました。

急に飛び出してきた物に驚いた様子の6羽の小雀でしたが、それが同じような小雀とわかって、そのリーダーのような1羽の小雀が少し前に出て、「トキ」に凄みを利かせて言います。
 「なんだ!お前たち! 邪魔をするんじゃない!」

「トキ」はひるむことなく言い返します。
 「なんで、こんな老いたものをいじめるんだ!それに、食べ物までで盗ろうとしているんじゃないか!」
6羽の小雀のリーダーは応えます
 「知らないだろうが、こいつが持っている果物は10年に一度しか成らない特別の果物なんだ!
  そんな貴重なものを、こんな年寄りに食わせることはないんだよ、だから邪魔をするんじゃない!」

「トキ」はそんな威圧に怖がりもせず更に前に出て応えます。
 「そんな貴重なものでも、お前たちならまた見つけることが出来るじゃないか!
  この年寄りならもうめぐり合えないかもしれないだろう!奪うのはやめとけよ!」

6羽の小雀のリーダーは、そんな意見を聞くそぶりも見せず、更に大きな声で「トキ」に向かって
 「邪魔をするんなら、お前を先に始末してやるぞ! 俺たちはみんな親のない
小雀だけで生きてきた仲間なんだ!」

リーダーの声に同調したかのように、他の5羽の小雀も「トキ」に襲いかかろうと身構えてきました。
今にもそんな争いが起ころうとしたとき、それまで「カイ」と一緒に傍にいた「キキ」がスッと、「トキ」の前に出てきました。

        第7話終了
  

「九雀物語」6話

2014-05-17 23:19:21 | 日記
「九雀物語」第6話

大きなカラスのリーダー「ライ」から思いもかけない事を言われた2羽の小雀
「カイ」と「トキ」は少し驚きながら、了解したことを後悔しながらも、しかたなく、女の小雀を自分たちの仲間として連れて行くことになりました。

カラスの集団からはなれて、3羽になった小雀たちはしばらく黙ったまま近くの森まで飛んでいきました。
しばらくして大きなイチョウの樹があったので枝の上で休むことになりました。

すこしぎこちない雰囲気になっていた3羽の空気に「トキ」が言葉を選んで一緒についてきた女の小雀に話しかけました。

「びっくりしたな! 急にカラスのライがお前のことを言い出すから、わけもわからず、うなずいてしまったんだ」

女の小雀がちょっと、むっとしながら答えます。
「なんだよ! いやなら断ればよかったんじゃないの!」
「カラスのライはこんな小さなわたしでも他のカラスと同じように可愛がって大事にしてくれてたんだから」

トキはあわてて言い直します。
 「いいや! びっくりしただけだよ! 俺たちも黙って親のところを出てきて2羽で訳もわからず飛び回ってるだけだから、戸惑ってるんだよ」
 「名前はなんていうんだい!」

女の小雀は半分めんどくさそうに答えます。
「キキだよ!」  

カイとトキは顔を見合わせてうなずいて、お互いを納得させた様子をみせて
キキに話しかけました。

 「キキか! 俺はトキ!、こいつはカイだよ! 別々の仲間と一緒だったんだけど親に黙って、俺たちだけで飛び出したんだ。
  カラスのライに言われて仲間になってもらったけど、俺たちも、これからどうしていいか分からないんだよ」

そんな少し頼りのなさそうな2羽の小雀の話を聞いた(キキ)は見えない片方
の目の奥が笑ったような顔になって話しました。
 「あたしだってカラスのライに大事にしてもらってたし、やっとカラスの仲間にも仲良くしてもらえるようになってきたのに、急にライがあんなことを言い出すとはビックリだよ。
  だけどライは、あたしのことを思っていってくれたと思うよ。」

トキが話します。
 「そうか、ライの仲間の邪魔者になってたのかと思ったけど、キキがそう思っているなら、俺たちと一緒にいることにするかい、少し頼りないけどさ!」

すこしづつ打ち解けた話ができたので、キキの顔も和らぎだしました。

3羽になった、カイ、トキ、キキの小雀仲間はチョット背伸びしたようにまだ
行ったことのない森を目指して飛び出しました。

        第6話終了

「九雀物語」5話

2014-05-17 23:16:33 | 日記
「九雀物語」第5話   

大きな体のカラス「ライ」は子雀のカイやトキのことを懲らしめる様子もなく
今まで通ってきた生きざまを少しづつ話してくれました。
そして、ふと思い出したように、

 「そうだ!俺の仲間のカラスが食べ物を採っている下の所を見てみろ!」
 「俺の仲間の近くに小さな雀がいるだろ」

そう言われたカイとトキが下を見てみると、確かに5、6羽のカラスの近くに
一羽の小さな雀がカラスの仲間のように食べ物を採っているのが見えました。

 「ちょっと待ってろよ」

と言ったカラスのライが食べ物を採っている仲間のカラスのいる方に向かって少し高い声を出すと、カラスたちは一斉に、ライの方に振り向いたのです。
そして、小さな雀だけを自分のいるところに呼びました。

カイとタケは、カラスのライが自分のカラスの仲間のように小さな雀を呼び寄せたので、少し驚いてしまいました。

カラスのライは、雀が傍に来てからカイとトキに向かって

 「お前たち、少し驚いただろ! 実はこいつは女の子雀なんだ」
 「それに、片方の目が見えないんだ」
 「いつだったか、俺が森の近くを飛んでいるとき、雀の連中が、同じ雀を
  いじめているのが見えたので、おかしなことをするなと思って近くで
  見ていたんだ。 いじめているのも、いじめられてるのも子雀だったな」
 「どうやら、こいつの目のことで仲間はずれにしていたんだな」
 「他の鳥のことなんか、どうでもよかったけど、少し腹が立って、いじめている子雀
を、俺が追っ払ってやったんだ」
 「それから、こいつは雀の仲間のところに戻らないで、俺の行くところに付いてくる 
ようになって、俺の仲間もカラスの連中と一緒に扱ってくれるようになったんだ」
「だけど、いつまでも俺たちの仲間ではいられないから、 
どうだ!お前たちが、一緒に連れて行かないか」

思いもかけないことを言われたカイとトキは、驚いて顔を見合わせましたが
カラスのライの威圧におされて、了解のうなずきをしてしまいました。




        第5話終了


「九雀物語」4話

2014-05-17 23:13:20 | 日記
「九雀物語」第4話
                                   
それでなくとも小さな2羽の子雀は更に小さくなりながら、声の主を確かめようと後ろを振り向いてみると、そこには今まで見たことのない大きなカラスが
今にもつつきそうな嘴で構えながら、鋭い眼光でこちらを睨んでいました。

その異様な怖さに逃げ出すこともできず、2羽の子雀はすくみあがるだけでした。

相手を見ることもできず震えていると、大きなカラスは低く重みのある声で
「何をしてるんだ」
と一言聞いてきました。

あまりの突然なことと、目の前のカラスの大きさに怖れながらカイが小声で
昨日から今までのことを話しました。

すると、大きなカラスは、その厳しい眼光をゆるめながら
 「雀の連中はいつも集団で飛び回っているのに、お前たちのような子雀が
  勝手なことをしていいのか?」
 「俺たちカラスでさえ、少し気を緩めると人間にやられるだけでなく、タカ 
  やハヤブサに狙われるんだぜ」
 「お前たち雀にも決まったことがあるだろう」

少し怖さのほぐれたトキが、一度、親たちから離れて別の世界を冒険したくなって、
カイを誘って飛び出したことを話しました。

大きなカラスは、そんな子雀の話を聞いてゆっくりと話し始めました。
 「俺の名前は、ライだ」
 「他のカラスの連中も俺のことは知っているはずだ」
 「親が狐に襲われて殺されたから、小さかった俺は誰にも負けないカラスになろうと生きてきたんだ。
  他のカラスより身体が大きく強くなったから、仲間ができたんだぜ。」
 「お前たちのような子雀が親から離れて好きなことをしようとしたって、
  何ができるんだ。」
怖ろしいカラスと思っていた子雀は、少し心がほぐれてライの話に引き込まれて行きました。
         第4話終了