「九雀物語」第7話
女の小雀を仲間にした3羽の群れは、少し気持ちが大きくなって、まだ行ったことのない森を目指して飛び立ちました。
少し飛び続けていたとき、「トキ」が他の2羽に呼びかけながら、飛ぶ速度を弱めました。
カイがトキに問いかけます。
「どうしたんだい?トキ」
トキが応えます。
「ほら!あの小川のそばを見てみなよ!なにか変だよ!」
言われて「カイ」と「キキ」が、その方向を見てみると、何羽かの雀が騒いでるように見えました。
それは、6羽の小雀が老いた雀を取り囲んで何かしている様子でした。
「カイ」は「トキ」に
「知らない雀の連中だから、放っておこうよ!」
「トキ」は言います。
「ちょっと待ってくれ!」
仕方なしに「カイ」と「キキ」は「トキ」の言うように近くの樹の枝に停まって様子を見てみることにしました。
それは、年の老いた雀の持っている果物のようなものを6羽の小雀が取り上げようとして、攻めている様子です。
取られまいと必死になっている老いた雀に、6羽の小雀の集団は、四方から嘴でつついて隙を見つけようとしています。
そして、老いた雀の抵抗が弱ったのか1羽の小雀がその果物のようなもを奪おうとしました。
その時、一緒に様子を見ていた「トキ」がフワット枝から飛び出して、6羽の小雀のいる所に行こうとしました。
あわてて、「カイ」が止めようとしましたが間に合わず、仕方なしに、その後を追うように2羽も続きました。
「トキ」は迷うことなく、6羽の小雀が攻めている老いた雀の傍に舞い降りて、周りの小雀をにらみました。そして「カイ」と「キキ」も並びました。
急に飛び出してきた物に驚いた様子の6羽の小雀でしたが、それが同じような小雀とわかって、そのリーダーのような1羽の小雀が少し前に出て、「トキ」に凄みを利かせて言います。
「なんだ!お前たち! 邪魔をするんじゃない!」
「トキ」はひるむことなく言い返します。
「なんで、こんな老いたものをいじめるんだ!それに、食べ物までで盗ろうとしているんじゃないか!」
6羽の小雀のリーダーは応えます
「知らないだろうが、こいつが持っている果物は10年に一度しか成らない特別の果物なんだ!
そんな貴重なものを、こんな年寄りに食わせることはないんだよ、だから邪魔をするんじゃない!」
「トキ」はそんな威圧に怖がりもせず更に前に出て応えます。
「そんな貴重なものでも、お前たちならまた見つけることが出来るじゃないか!
この年寄りならもうめぐり合えないかもしれないだろう!奪うのはやめとけよ!」
6羽の小雀のリーダーは、そんな意見を聞くそぶりも見せず、更に大きな声で「トキ」に向かって
「邪魔をするんなら、お前を先に始末してやるぞ! 俺たちはみんな親のない
小雀だけで生きてきた仲間なんだ!」
リーダーの声に同調したかのように、他の5羽の小雀も「トキ」に襲いかかろうと身構えてきました。
今にもそんな争いが起ころうとしたとき、それまで「カイ」と一緒に傍にいた「キキ」がスッと、「トキ」の前に出てきました。
第7話終了
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