幼児向けパズルの別解さがしに取り組んだ7年
ヤスノリ
お子さんの居るご家庭にわりと高い普及率で存在してるんじゃないかっていうのがいわゆる型はめパズルで、赤ちゃんが形を覚えることを期待するおもちゃです。
赤ちゃんが丸だの四角だの形を見つけて、同じ形の穴に当てはめて、合ったねーじゃあ次これね、なんつって作業する、ふだんの我々の仕事もそれの延長なんじゃねえか、みたいな、労働の原点のような体験ができる、大変すばらしいものです。
さて、そんな型はめパズル、うちにはロディのさいころパズルというのがあったんですよ。これもまあ、友達のうちとか遊び場とかでたまに見ますね。
息子用に買ったので、もう7年くらいありますかね。遊び方はお察しの通りですが、こう、ピースであるブロックを、その形の穴に入れる。
いいな、と思ったのは、ピースがごろっとしてて持ちやすい。小さい子って薄いものを持つの意外と大変だから。そういう前段みたいなとこでパズル嫌いになってほしくない。
でも、お目当ての穴を見つけるのに本体を転がす難易度のせいか対象年齢が高くて、いま調べたら1歳半からになってました。そうか、これ難しいのか。
とはいえ、大人力でこんなもんですよ。
ピースを穴に通すとサイコロの内部に落ちて「カランカラン!」とわりと大きな音が響きます。
これは意図的なんでしょうかね、達成感を得られます。
ただですね、僕これ買った当初から「んんん?」と思っていたんです。
このパズル、よく考えると、図形的に同じものを見つける問題ではない。
内部へ落ちれば「カランカラン」の音がなる。
穴を通過できるかどうかを問うているのです。
それって、型はめパズルじゃなくて、全く別のパズルですよね。
名前をつけるなら「通り抜けパズル」だ。
と同時に、えっ大丈夫か? と思った。
ほかの穴に通ってしまうこと、ないの?
例えば、「G」の穴に「C」が通過すれば「カランカラン!」とサイコロ内部に落ちる小気味のいい音とともに、幼児の成功体験になってしまう。
GとCの区別がつかない子供が次々に発生します。
うちの子がジャイアンツのことシャイアンツって呼んだら絶対訴えてやるかんな。
お前らのことだよ。
実際にCをGに入れてみる。
入らない。
そこはちゃんと考えてある。アールが若干違うのがお分かりになりますでしょうか。
CはGにちゃんと入らないようになっている。
まあでも、これだけで信用するわけにはいかん。
あとは、こいつらとか怪しい。
FはEの一部じゃん。
FでEの穴通してカランカラン言ってみ。
子供なんてもんはそういうの秒で覚えるから。EとFは一緒~! って。
F・YAZAWAになっちゃうから。藤子・F・YAZAWAになっちゃう。
完全に訴えてやるからな!
ご安心ください奥様。入らないんです。
もう一度EとFを見てみましょう。
Eの最上部の横棒が、明らかに短くなっています。
あれ、そしたらFをひっくり返したら通過するのでは、と思ったのですが、そもそもEの真ん中の横棒が、Fの横棒よりも短いので、Eの穴にFは絶対に通らないのでした。
あっそうなんだ、と。
そこまで考えてデザインしているのかと、思ったわけですよ。
マジだぞと。
思わず、正座しましたもんね。ロディさいころパズルの前で。
ここで明らかになったのは、制作者の努力。
制作者は、解が多数存在する「通り抜けパズル」の別解を潰しまくって、解が一つしか存在しない「型はめパズル」と一致させている。
これ、よく考えるとすごく難しくないか。
たとえば幼児なんてこういう斬新な入れ方繰り出しますよね。
こんなんでガシャシャーンなんて入ったらいけないわけですから。
例えばここでは、Dのふくらみは5のおしりより小さい、という制約が生まれます。
縦横すべてにおいて、通り抜けてはいけない。気が遠くなりそうだ……
いっぱいテストしたんじゃないですかねえ。平面でやっておけば単純なパズルを、立体にしたばかりに、考えることがめちゃくちゃ増えている。
だからこのロディのサイコロパズルは、お疲れ様です! と言いたくなるのです。
さて。
ここまでよろしいでしょうか。
そうなってくると、ある感情がわき上がってきますよね。
「別解を探したい。」
ほかの字の穴にうっかり入ってしまう別解、あるような気がしたんですよ。
正直これ、制作者が全部考えて試すのは無理なんじゃないか、と直感的に思ったんです。
絶対無理そうな知恵の輪で、なんかの角度とかタイミングで通ってしまうことってある。
あんな感じで、うっかり別の穴を通ってしまうピース、あるんじゃないかなあ……
…
……
………
と思ったのが7年前です。いままで、7年前の話してました。
もう子供も大きくなったのでこのパズルも片付けられてしまったのですが、押し入れのまあまあ手に届くところにあったので、半年に1回くらい取り出しては試す、という活動を続けていました。
それで、結論から言うと最近ようやく1つ入ったので、それに至るまでの経緯を再現しようと思います。
実際には、こんなに体系立てて考えていなかったからこそ攻略に何年もかかっているのですが、今考えるとこういうことをやっていったな、と、そんな感じです。
■うっかり入りそうな字を選ぶ
攻略イメージは、ピースの角度を変えながら穴を通していく感じでした。
それに見合う字というのは限られてきます。
・一画の字で、交点を持たないこと。
・どちらかが細いこと。
そんな感じで選んだのがこれ。
これが、うっかり通過してしまいそうな奴らだーッ!
257C♪(兄、業な死♪ と覚えましょう)
例えばこんな感じ。もう既に惜しいでしょ。
最初の何年かは音符にずっとこだわっていました。玉の部分を入れてしまうとあとちょっとの感じまで持って行きやすいのがこの音符でした。
入れ方の角度を変えてみたり、いろいろ試してみたのですが、今のところ音符でフィニッシュには至っておりません。
■穴はD or 8
穴はできるだけ大きいほうがいいだろうと思って、今のところDと8だけをターゲットにしています。たまに6とかBとかも使いますが、基本D8ですね。
基本的には、こいつらのかけあわせを試していたんだと、今になって考えれば思います。
■技術革新
実は1年位前に技術革新があり、5があとちょっとのところまで来ました。
急に何があった? とお思いでしょう。
コマンド「ちょっと押す」を解禁しました。
1コマ目、5のおしりが8のくびれに阻まれているのですが、これ、ちょっと押すと、2コマ目の状態になります。
さらに「ちょっと押す」と、3コマ目のマジで惜しい状態に持っていけます。
ワオ。
いや、押すったって、ほんと、ちょっとですから。
赤ちゃんだって乱暴します。
自然な変形くらいは考慮していただかないと困る。
至極まっとうな、我々の言い分です。
それで3コマ目の状態まで行くのですが、ここからが詰みました。
5の横棒の下に8の右くびれが挟まっています。
8の左くびれは、5の縦棒を締め付けています。
ですのでこれは、8のくびれが繰り出すねちっこい締め技が5の頭部をガッチリとホールドしている大変めずらしい写真です。
とにかくこのまま通すと5の頸動脈がいかれてしまう。
ブロックが壊れたらこの遊びも終わってしまうので、泣く泣く、下から「ちょっと押し」て、もとの状態に戻しました。
しかし惜しかった。
制作者はこれを考えていただろうか。
8のくびれが5を阻むように、意図的に小さくしていたとしたら。
敵は思ったよりもずっと強大だ。
■突然入った
とか言って、あのー、こういうのって、突然来るんですね。
今年の2月くらいにちょっと試したらいきなり入って笑っちゃった。
ピースは7、穴は8の組み合わせ。
これも、過去に何度かはやったと思います。
この状態だと全然入る気しないじゃないですか。
ここでコマンド「ちょっと押す」を繰り出すと……
おわー!!!!
まじかー!!!!
7が8に入った~!!!!
7=8! 7=8!
証明された!
7=8!
ギャー!!!!!
今日から7と8いっしょ!!!!
号外だよ~!!! 号外号外!!!!
今日から7と8は、いっしょだよ~!!!!
ず~っといっしょだよ!!!!
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