ノグチサトキ

名もなきギタリストの物語

あの日no拾得

2012-06-24 | 自分史

最近、昨日のことを忘れたりするが、昔のことは・・・。


“あの日の拾得”

そう、この日のことは、忘れもしない。

今も鮮明に覚えている・・・。


リハーサルの約束時間に少し遅れ、リーダーの浅原さんがやってきた。

見れば、包帯でぐるぐる巻にした左腕を肩から吊るし、顔色も冴えない。

心配するアリヤンが尋ねても、何も答えようとしない。

多分・・・。

なんとなく察しはついたが、俺も聞いちゃいけないと思って黙ってた。


ふと客席をみると、あの稲冨英樹氏、通称トミーがマルちゃんを連れやってきてた。

いつもなら、対立する俺たちのliveなど来るはずもない、

マルちゃんと一緒なだけに、なんと無く悪い予感がする。


通称“マル”、本名は知らない。

 

当時、京極でアクセサリーの彫金をしていて、街なかでは目立ってたし、

かなちゃんが書いた、“ぷりぷり”の曲、“M”は、マルちゃんのことって言ってたから、

以前からよくは知ってた。

ただ、俺は、“シラフ”のマルちゃんには一度も会ったことがないが・・・。

マルちゃんは、その日も来た頃には、結構“入って”たんじゃないかと思う。


その日は、

“ニューエストモデル”っていう売り出し中の大阪出身のバンドが来てて、

また、“どりばんな”も“ドーナツ”を出したばかり、

入口には、“イエローナイト”と、彼らの“おもちゃの兵隊”の“ソノシート”を並べてたから、

マスコミ関係もチラホラ来てた。



そんな状況だっただけに、二人も気がかりだったのだろう。

俺たちの“女性ファン”を“押しのけ”、“かき分け”、最前列を陣取っていた。


“ニューエストモデル”のステージも終わり、

俺たちの出番になった。


“どりばんな”は、

A面が“イエローナイト”

B面には、ツノッチの彼女(現奥さん)と、みんなのマドンナ“まりこさん”が、コーラスで参加する

“ホットバイブレーション”入ったドーナツを発売したばかり、

浅原さんは、いつも以上にファンサービスが旺盛だった。


骨折しているのに「ねちがいしました〜。」と、MCで場を和ごます浅原さんのプロ根性には、

俺は、内心、胸が詰まったのを覚えている。

本当は、激痛が走り、ステージどころではなかったのに・・・。


新曲の評判も上場

二人は、両足をテーブルにかけてはいたが、特にこれと言った動きもみせないまま、

ステージは無事に終わった。


俺は、今も昔も、ステージが終わると客席でギターを自慢する癖がある。

いや、しなければならない。


対抗する彼らなら、尚更のこと。いつも以上に自慢せねばならない。

俺は息込み、彼らに見せてやった。

ストラトのフロントとセンターのピックアップを外し、“下敷き”をシコシコ削ってつくったピックガードをまとう、

その名は、“ダイアモンド・サトキスペシャル。特に、ヤマハアンプとの相性は抜群。

ギタリストなら、誰も?がギターに愛称を付ける。

俺は、マルちゃんに試し弾きさせ、いつものようにウンチクを語ってあげた。

うなずくマルちゃん。

しかし、多分?ほほ確実に、彼にはそんなこと、どうでもよかったのだろう・・・。


トミーにとっては、そんなこと、もっとどうでもいいことだったのだろう・・・。


帰らない客で賑わう“ハコ”のなか。

階段横の桝席で騒ぐ、ルパン、いや失礼、浅原さんと峰ターコら“女たち”

桝席に向かいトミーが言った。


「この勝負、も・らっ・た・な」


一瞬、俺は、耳を疑った。


アリやんのグラスを持つ手が止まった。

辺り一面、異様な空気が漂う中、


浅原さんの顔から、血の気が引いていくのが分かった・・・。

 

つづく                            



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1 コメント

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Unknown (宮G)
2012-06-25 00:41:37
え~、どないなんの~?

ニューエスト…懐かしい。
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