こがら通信

書き残したいこと

蛙の笛

2021-05-25 11:14:20 | 想い出
   月夜のたんぼで コロロ コロロ
   コロロ コロコロ 鳴る笛は
   あれはね あれはね
   あれは蛙の銀の笛 ささ 銀の笛 


  この 『蛙の笛』 は、 昭和二十一年四月十二日に斎藤信夫が作詞したものを、同年八月十八日に海沼実が作曲したとされている。戦後間もなく発表されたわけであり、私もラジオでこれを聴いている。少女の美しい声で耳底に残っている。
  この歌は、今でも歌われているようだし、誰でも聴くことができるのに、私は追想の中で甦らせ、自分で歌ってみることでしか楽しめない。したがって鑑賞というにはあまりにも貧しい味わい方であり、あのころのように背筋に電流が走るような感動を再び体験するまでには到らない。
  とは言え私の場合、この 『蛙の笛』 一つとりあげただけで少年時代のさまざまな思い出が甦り、失われたことどもへの憧憬、手の届かないものへの諦め、そこからかもし出される哀傷と言ったものが、私を悲喜こもごもの境地に誘うのである。