毎日朝刊を読んでいると、大体ニケ月に一度位の頻度で内閣の支持率が上がったの下がったのと、世論調査の事後報告が載っている。
けれど、実際まわりを見渡しても世論調査を受けたという人の話を聞いたためしがない。これは誰しもが経験している事実だろう。
あれほどいろいろな機会で実施されているのに不思議な事だ。
まあ、一般人を対象にして行われるこういう調査は、国勢調査などとは違って調査数も多くはないので表には出て来にくいという事もあるにはある。
それでも。
本当に行われているのだろうか。
なんて疑いの眼を向けるほどには、世間様は世論調査も、結果内容などにもおよそ興味関心がないかも、だろうけどw。
と、ここまで何だか他人事みたいな調子で物言いをしている自分だが、
実は私は、かつて大手新聞社の世論調査を受けた事がありま➰す。
どうして私だったのか?
あの当時は、今もだろうけど世論調査を受けたからと言って周囲の反応は、だから?それが何なの?ふーん良かったね。という予想外に素っ気ないものばかりだった。
今では電話での聞き取り調査が主になっている様だけど、私の時はまだ調査員が直に来て対面しての、調査が行われていた。
⏳️
ある日、夕方アパートに帰るとポストに某A新聞社からハガキが来ていた。
(因みに私はその時、某Y新聞の購読者で20代若者も今よりはバリバリ新聞を普通に読んでいた時代でした)
文面には、
〝何月何日世論調査を実施するにあたり、あなたが選ばれました。つきましては当日何時に調査員が伺いますので御協力をお願いします〟
的な事が書いてあり、調査を断りたい人や日時の変更を連絡したい人は、返信用のハガキに書いて出したのか、電話したのか記憶があやふやで要領を得ないが、私は二日間の内の二日目を指定したのを何故か憶えている。
もしもこのような文面のハガキが今の時代に届いたとしたなら、絶対〝不審なモノ〟として片付けられてしまうに違いない。
あの頃はどんな〝お願い〟が寄せられても眉をひそめる事もそうそう無く、何でも取り敢えずは信用してしまう、呑気で穏やかな時代だったのだ。
斯くして、
調査当日の約束した時間、ドア口に表れたのは私と同じ位の年代の男子大学生であった。
最初に学生証(某有名私立大)を見せられて、今回の世論調査で調査員としてアルバイトをしていると言っていた。
まさか学生が来るとは思っても見なかった。むしろ新聞社の社員が来るのだろうと思っていたのだ。
すると相手も相手で、出て来たのが私のような若者たったので意外でしたと後で話していた。
それから、彼はちょっとした調査の概要を説明し、よくある感じのバインダー📋️に鋏まれた調査票へ私から聞いた質問の答えを記入して行った。
その時どんな質問をされたのか。
残念ながら内容はほとんど憶えていない。
内閣の支持率。これはいつもの鉄板。
支持政党。そんなの私にあるわきゃ無い。
しかし唯一憶えている質問が、脳死を死と認めるか?だった。古っww
私は同年代の人間が目の前にいるという事で、調査が一通り済んだ後いろいろな話を逆に聞いてみた。
彼らは調査員のアルバイトとは言っても、情報誌を介しての雇われではなく、新聞社が直に大学側に打診して、そこから紹介を受けた特別な人達であるとの事。
他方調査の対象となる私達は通常大体一つの市町村から二名位選ばれ、その時は私の住む市で私一人だけであったとの事。
調査員も同じ市在住の学生が担当になると決められていて、彼は近くからチャリンコで来ましたと言っていた。
世論調査はいつもシニア世代との対面が多く、私が登場して本当に意外だったらしい。
確かに今振り返ってみても、20代前半の若者が二人で軒先で調査のやり取りを真剣にやっている光景は、どう見てもシュールでしかあり得ない。
何だか根掘り葉掘り聞いていたようだが、彼の方も忌憚無く話してくれたのだ。
守秘義務という今風な事も無かったんだろうなと思う。
帰り際、お礼ですと社名の入ったノック式の黒ボールペンを一本くれた。
以来、彼に会うような事は一度もなかったけれど、しばらくは彼の名前だけを覚えていた気がする。
数日後、私の受けた調査の結果が紙面に載った。
当然その新聞をとっていなかった私は、どこかでその新聞を調達し、しばらくは保存していた気がする。
単純な私はそれから某A新聞に購読を換えてしまった。
そしてその新聞を読み続けて今日に至るのだ。