とても複雑な事犯である。
最初は中居正広氏の性加害問題から始まり、
続いて、性加害を仲介し、隠ぺいに走ったフジテレビ問題に発展し、
今は、フジテレビの最高権力者である日枝久氏の進退問題に移行している様相である。
その途中、週刊文春の訂正記事をめぐって、フジテレビ出入りのコメンテーターたちが文春が悪いと反逆を試みたが、スポンサー筋は彼らをすべて無視、動かなかった。
推察だが、スポンサーの空気をリードしたのがトヨタだろう。さすがはトヨタと言っていい。グローバル企業のトヨタはこの手の性犯罪には非常に敏感である。うかつにCMを再開すれば、世界市場を失うことが理解できている。同様にアメリカ保険市場を中心とするM&A戦略を練っている日本生命も同じだろう。中居フジテレビ日枝久問題は世界のメディアが取り上げている。
スポンサーは、最低、今年一年はCM出稿を見送ることだろう。
もしも、フジテレビとフジメディアHDが過去との決別を決め、誠実にこの問題と向き合っていれば、違った展開もあっただろうが、文春への訴訟考慮とか営業部門がスポンサー筋を回って「フジテレビこそ被害者」を主張するとか、またまた前代未聞の大失態を繰り返してしまった。
誰が見ても、週刊文春は正しい。中居氏とA氏、そして被害女性の三人だけの寿司屋会食の実態や、その場でのA氏の「仕事だから」という言葉の状況証拠があれば、フジテレビの性加害関与は覆らない。
それでも、フジテレビが文春相手に訴訟を起こすとあらば、被害女性の証言が必要になる。さらに過去に、高級ホテルのスイートルームで中居氏からの性被害の危機にさらされた別の女子アナの証言も重要になって来る。そして、そのスイートルーム代40万円は誰が支払ったのか、ここで確かな物的証拠も出て来る。
フジテレビ幹部は、もう腹をくくったほうがいい。二言目には第三者委員会の調査結果を待つというが、第三者委員会は日枝久氏の調査はしない。日枝久氏は、中居問題と直接の関りがないからである。日枝氏の責任は、タレントの性加害を黙認し、隠ぺいに走る側近役員を登用し続けたことにある。
フジテレビは、CM収入が激減しても豊富な不動産資産があるからいい。悲惨なのは系列の地方局である。フジテレビだけでなく、その系列地方局からもCMを引き上げるスポンサーが出て来ていることは、フジテレビ幹部の耳にも届いているだろう。しかし、地方局は動かない。自社にフジテレビ出身の社長がいるからである。北海道新聞が強い北海道文化放送、名古屋財界が強い東海テレビ以外の基幹系列局にはすべて日枝氏側近が社長として高い報酬を得ながら君臨している。
フジメディアHDの唯一の連結決算民放局である仙台放送は、資金難から復興マラソンの中止を決めた。収入の大半をフジテレビからのネットワーク費に頼っている秋田テレビ、山形さくらんぼテレビ、岩手めんこいテレビも大変だろう。
多くのスポンサー筋は、最高権力者の日枝久氏の進退に注目している。日枝氏がフジサンケイグループのすべての役職から退き、さらに日枝氏と日枝氏の代弁者のようなコメンテーター氏を番組から外せば、スポーンサーは即、CM出稿を再開するだろう。
実に、簡単なことではないか。