今年の正月明けに、学生時代の同級生から「癌発覚とコロナ感染という2重苦に陥った」というメールが来ました。
その時は、「ただちに余命が半年と言うことではなく、コロナが治癒次第、がんの手術に入る予定です」とのショートメールでした。
それ以降、私の方からはメールを出しにくくなり、彼の方からの吉報が来るのを待っているしかありません。
彼が2重苦を背負ったのは寒い盛りでしたが、もう、世間では「冷やし中華!始めました」と出る暑い季節になりました。
とうとう、痺れを切らして私の方からメールを出しました。
まだ、返事はありません。悪く考えるには、早すぎる。きっと、なにかの通信障害の影響なのだろう。
彼とは、4年間クラスが同じで、部活も一緒でした。
もちろん、遊びや酒でも思い出は沢山あります。渋谷の百軒店辺りのジャズ喫茶で、もうもうと煙草で煙る中、いかにもダンモが分かるような顔して聞き入っていたのが懐かしい。そんなにジャズのことなんか詳しくなかったのに。
彼は原宿、私は池袋と近かったため、卒業してからも時々酒を飲んだりしたものです。しかし私が名古屋に来る際に、いろいろな資料を断捨離してしまい、今では彼の住所も分かりません。唯一、携帯に残っているショートメールの通信履歴だけです。
私たちの世代は、都内のほとんどの女子大は網羅したかと思われるほど頻繁に合コンを開きました。私たちの学部はもちろん共学ですが、あいにくと、クラスにもクラブ(部活)にも女子がゼロだったため、外部調達に頼るしかなかったのです。
ある時、彼は合コンで出合った一人の女子大生と軽く付き合いを始めたのですが、いつのまにか別れていたようです。それから数年後、社会人となった彼は、その彼女と街で偶然に再会したそうです。
それから「二人とも、一人身なんだから付き合ってみるか」ということで再び付き合い始め、やがて結婚にまで至りましたが、その後、その奥さんは10年くらい前に癌で亡くなっています。
彼は、それから数年して、奥さんの同級生だった女性と再婚して・・・一見、幸せそうにも見えましたが、ふと、不満を垣間見せることもありました。
私に言わせれば、奥さんの同級生? そりゃ、安易すぎるよ! と思いましたが、口には出さずにおきました。
「私みたいに再婚せずにシングルでいるほうが自由でいいんだよ」と言っても、もう後の祭り。
その後、私が名古屋に移住する直前に彼からメールがあり送別会をしてくれたのは、つい最近のことのように思えます。
昨年暮れのショートメールでは、「コロナが一段落したら東京に来いよ。今度、〇〇とも一緒に、三人で一杯やろうよ」とくれたのに・・・
きっと彼は今、癌の大手術の後でベッドから動けず、スマホなんかを手にする余裕がないのだろう。