２ 令嬢の子犬 ９６ページ目

【９６ページ】


社長　　　　それでは、２本目のテイスティングに移ります。


社長の専属ソムリエによって２本目のワインが注がれた。その時、子犬のロマネが

前足で真里菜の胸をたたいた。

和音　　　　２本目は、レディファーストで！

令嬢　　　　和さんは、やさしいのね。

　　　　　　それとも自信家？


真里菜は、ロマネの合図で、ワイン名がロマネ・サン・ヴィヴァンだと判ってい

た。彼女は、ゆっくりテーブルに近づき、グラスを手に取った。


令嬢　　　　これは、ロマネ・コンティの東隣の畑のワインね。

　　　　　　ロマネ・サン・ヴィヴァンだわ！


専属ソムリエが、２本目のワインの紙を取り払った。


社長　　　　ロマネ・サン・ヴィヴァン！

　　　　　　２本目は、真里菜の勝ちだ。

和音　　　　さすが、真里菜さん！

令嬢　　　　とても和さんには・・・・。

社長　　　　１勝１敗です。

　　　　　　３本目のテイスティングに移りますよ。


社長の専属ソムリエによって３本目のワインが注がれた。ロマネは、おとなしく

抱かれていた。そして二人はゆっくり歩き出した。


和音　　　　このワインもすばらしくおいしい！

令嬢　　　　ほんとうだわ！

２ 令嬢の子犬 ９５ページ目

【９５ページ】


和音　　　　テイスティング対決のワイン名は判っているのですね？

　　　　　　ヴィンテージを当てるのですか？

社長　　　　いいえ、テイスティングしたワイン名を当ててください！

　　　　　　６本の内、早く３本のワイン名を当てた方を勝ちとします。

　　　　　　和さんなら、香りや色でワイン名を当てることができるでしょう？

　　　　　　テーブルまで１０メートル離れて立って頂きます。


和音と真里菜は、ワインの置かれているテーブルから１０メートル離れて立った。

真里菜の腕には、子犬が抱かれていた。


社長　　　　今１本目のワインが二つのグラスに注がれました。

　　　　　　どうぞテイスティングをして下さい。


和音は、テーブルに向かって歩きだした。しかし真里菜は立ったままであった。


和音　　　　真里菜さん、どうされました？

令嬢　　　　１本目は、ゲストの方からお先にどうぞ。

和音　　　　それでは、お言葉に甘えてそうさせて頂きます。


和音は、テーブルに近づき、グラスを手に取り、一口含んだ。


和音　　　　ロマネ・コンティに劣らずおいしいワインだ！

令嬢　　　　ワイン名は判りました？

和音　　　　ラ・ターシュですね。


社長の専属ソムリエが、ワインを包んでいる紙を取り払った。


社長　　　　ラ・ターシュで正解です。

令嬢　　　　一口含んで瞬時に判るなんて！

２ 令嬢の子犬 ９４ページ目

【９４ページ】


父親　　　　　結婚の相談？

社長　　　　　結婚して１０年以内に、二人でロマネ・コンティを飲み、又フラン

　　　　　　　ス旅行に行き、ワインと食事を楽しみたいと、真理子さんに話まし

　　　　　　　た。

　　　　　　　だから、結納もしないで、結婚式もあげません。

　　　　　　　私の預金通帳は、真理子さんに渡していますから、結婚式のお金が

　　　　　　　ないわけじゃありません。

　　　　　　　私は、真理子さんがお金持ちのお嬢様だと知りませんでした。

　　　　　　　しかし、玄関で普段会っている私がほんとうの私と言ってくれまし

　　　　　　　た。

　　　　　　　私は、お嬢様の真理子さんだったら、帰っていました。

　　　　　　　私は、デートしている時の真理子さんだけ、いただきたいのです。


社長の話が終えると、真里菜が叫んだ。


令嬢　　　　　お父様、かっこいい！

社長　　　　　だから、社長になった今も週末には、仕事をいれません。

和音　　　　　日本の男性は、もっと家族を大切にすべきですね。

社長　　　　　和さん、そろそろテイスティング対決を始めてもいいですか？

和音　　　　　ええ。

社長　　　　　今日は、ヴォーヌ・ロマネ村のグラン・クリュを用意しています。

　　　　　　　ラ・ロマネを２本、ロマネ・サン・ヴィヴァンを１本、ラ・ターシ

　　　　　　　ュを１本、ラ・グランド・リュを１本、リシュプールを１本の合計

　　　　　　　６本です。

２ 令嬢の子犬 ９３ページ目

【９３ページ】


父親　　　　それでフラレルと？

社長　　　　はい。

　　　　　　でも真理子さんは、違っていたのです！

　　　　　　ワインスクールの帰り、公園の芝生でワインの話をしていたのです

　　　　　　が、いつものようにウトウトし始めたのです。

　　　　　　その時真理子さんは、私の膝の上で眠ったらと言ってくれたのです。

　　　　　　しばらく眠って目を覚ますと、にこやかに、よく眠れたと聞いてくれ

　　　　　　ました。この時、私は真理子さんと絶対結婚すると決めたのです。

父親　　　　真理子の気持ちは？

恋人　　　　私の結婚する相手の希望は、同じワインの趣味を持った人で、週末に

　　　　　　は、家庭やレストランでワインと食事を一緒に楽しんでくれる人。

父親　　　　私のような相手は失格だな。

社長　　　　私が、真理子さんの希望を叶えると約束したのです。

　　　　　　平日は目一杯仕事をして、週末は真理子さんとワインと食事を楽しみ

　　　　　　ます。

父親　　　　仕事を頑張ると言っても、今の眠り癖があるとうまくいかないと断言

　　　　　　する！

社長　　　　それで、鼻の手術を決心しました。

　　　　　　とても痛いということで躊躇していたのですが。

　　　　　　そして、真理子さんに結婚についてある相談をしています。