何年か前のこと
母のいる介護施設へ向けて、車を走らせていた
あまり交通量の多くない県道
小さな交差点まで来た時、空から黒い影がハラハラと舞い落ちてくる
なんだろうと車を寄せて止まってみたら、アスファルト道路の上に何枚かのお札が落ちている
道路の真ん中には、黒色の革財布が右左に開かれ、長くなってペタッと張り付いている
とっさに、これは放置しない方が良いだろうと思い、地面に散らばっているものを一つずつ拾い上げた
そこへバイクの男性が現れて、近づいて来てスピードを緩めた
手伝ってくれるのかなと思ったが、Uターンしてそのまま走り去ってしまった
近くには工場が数軒あって、周囲は草がボウボウと生えたい放題
草の中のお札も、目についた物は何枚か拾ったが、丁寧に見る間はない
程々にして介護施設に向かった
母が骨折をしたという連絡で、受診についての話し合いの予定だった
そちらの話が終わり、近くの交番に出向いた
色々なことを尋ねられて調書を整えたのち、警察官が「他の交番にも連絡してみましょう」と電話をかけた
すぐに、「届けが出ているそうです!」
一件落着 ホッ
後にも先にも、空からお札が降って来たことは生まれて初めての経験
今でもその道は時々通る
あの草むらに、まだお札が隠れているかなあ‥‥