初めての作家の作品だ。荻原浩氏の『家族写真』。帯の紹介を読んで、興味を持った。7つの短編集で構成され、内容は非常に身近な事を作品にしている。そして、特に最初の物語の「結婚しようよ」では、定年間際の父親と娘の話が掲載されているが、まるで私の時代背景と同じだ。
主人公の仕事の話が以下のように説明されている。
主な仕事は書類や伝票に目を通し、決裁印を押す事。 ~~~~ 私が主導して新しく何かを為す事はことはない。 会議や課内の決断は、私より二十歳若い係長に任せ、私は聞き役に徹している。よけいな口ははさまない。長期的なプロジェクトに関しては会議にも出ない。むしろそれがいまの私にできる最良の仕事だと思っている。私はあと半年、今年の七月で定年退職する。 私抜きで仕事が進むようにするのは、自分が思っているほど難しいことではなかった。定年が近づくと、自分が職場の中でどういう人間であったのかが、よくわかる。自分の人生がどうのようなものだったかも。 五十九歳。自分は本当は何になりたかったのか、結局わからないまま、この年になってしまった。 |
まるで、私の一年前と同じだ。私も、最期の最期の日まで、伝票のチェックと決裁印を押した。長期的な会議には一切出なかった。余計な事には一切口をはさまなかった。決断も後輩の課長に一切まかせた。自分抜きで仕事が進むようにするのは、思っていた以上に簡単だった。但し1年前からそうなるように仕向けたからだが。そう、1年前から定年退職する事を周りにアピールし続けた。
そして定年で、私への周りの人の評価が大変良く分かった。
自分は本当は何になりたかったのか、結局わからないまま、この年になってしまった。そして改めて、昔の夢を考えるようになった。従って定年後、好きな事を自由にできる自分がいる事を認識している。
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