堀江由衣さんの演じたアニメキャラでは1、2位を争うくらい好きなキャラです。「スクールランブル」(2004年、2006年)の沢近愛理(恋するツンデレお嬢様)、「化物語」(2009年)や「猫物語」(2012年、2013年)などの物語シリーズの羽川翼(何でもは知らない、恋するThe委員長)に勝るとも劣らないくらいに。
2014年冬にスカパー!のアニマックスで再放送していたので。最初に見たのも再放送でしたが、じわりと来るいいアニメです。
○ 家族を亡くして1人になった高1の本田透(cv堀江由衣)は優しい祖父に引き取られましたが、他の親戚は透の母の本田今日子(元ヤンキー)(cv安原麗子)のことを悪く思っているので透のことも良くは思っていないから、二世帯住居にするための建て替え中は友達の家にでも住まわせてもらえと。
でも、透のことを凄く心配してくれる親友2人に言えずに山中でテント暮らし。大雨でがけ崩れが起きてテント崩壊。直ぐ近くに住む、草摩一族の草摩由希(同級生)(cv久川綾)と草摩紫呉(そうま しぐれ)(cv置鮎龍太郎)の家に居候することに。
ただ、由希らは異性に抱き付かれると十二支に変身する、物の怪に憑かれた呪われた一族。
それ故に両親は生まれたときから拒絶するか、必要以上に溺愛するかであり、十二支に憑かれた者は、親の愛に飢えている者、わがままな者、他人と適切な距離感がつかめないから孤独な者であるなど。
他人と親しくなっても十二支に変身することがバレると、その者の記憶は消されて友達だったことも忘れるから(医師でもある草摩はとり(cv井上和彦)には記憶を消す能力がある。)、あるいは、憑かれているので髪の色が違うなどでイジメられていることもあるから、友達作りにも消極的。
彼らそれぞれの苦悩と、幼少時に父が亡くなり高1で母の今日子は事故死したものの、「透は透らしく」との母の教えを守って明るく真っすぐで正直な透(そして、それが嫌みにならない堀江さんの声。)、だけれども十二支への同情や表面的な理解にとどまらない透の姿勢とを対比しつつ、透との関わりと透の真摯な気持ちが憑かれた彼ら彼女らの気持ちを解きほぐし、前向きになっていく。
一方、草摩夾(そうま きょう)(cv関智一)は十二支になれなかった猫に憑かれており、しかも猫憑きの者の本来の姿は異様で異形なものであることから草摩一族からも忌み嫌われており、苦悩は更に深い。
更に、一族への呪いの核のようなものを一手に引き受けているから短命であり、一族の当主でもある草摩慊人(そうま あきと)(cv若葉紫)は自暴自棄になっている傾向があり、一族の者に対して我が儘し放題。
そんな草摩一族、特に夾の変化を描いた、少女漫画原作のコメディ混じりのシリアス系アニメの佳作です(原作は未読。)。
コメディも適度な量と質であり、全体を飽きさせないよう、各キャラの性格が分かるよう、上手く組まれています。
○ なお、岡崎律子(2004年死去、44歳)さん作詞・作曲・歌の「For フルーツバスケット」は、岡崎さんが優しくささやくように歌う名曲です(→歌詞サーチへのリンク。)。
「たとえば苦しい今日だとしても 昨日の傷を残していても 信じたい 心ほどいてゆけると
生まれ変わることはできないよ だけど変わってはいけるから
Let´s stay together いつも」
話が進むほどにアニメの内容と深く関わっていることが分かり、染みてくる歌詞です。
エンディングも岡崎さんが優しく歌う「小さな祈り」、これも良い曲です。
○ さて、このアニメは一般的には名作と言われているのではと思いますが、敢えて佳作と評した理由は、少し引っかかるところが1つあるからです。
透が由希や夾らが十二支に憑かれていると知った後に、同じく憑かれた者が順々に透を尋ねてくるのは構わないのですが、そこで個々の事情が本人や周囲の人から語られるのですが、何人かについては語るまでが時間的に短く、描き方も少しばかりあっさりしているところが少し引っかかります。
憑かれていること一般は深い苦悩であるとして描かれているアニメだと思うのですが、何人かがあっさりと告白するので、時間を使って描かれている由希と夾と慊人と はとり とかを除く何人かの者の苦悩がそれ程の苦悩とは感じられないところが少し引っかかります。
透と夾(そして草摩一族全体)の物語であり、クライマックスである24話から最終26話はじっくりと描かれていますから、途中は十二支キャラを軽く紹介することにしたのかもしれませんが、紹介する十二支キャラを少なくしてもう少しじっくりと描いても良かったのではと思う一方、24話からが重い物語なので途中は少し軽めにしてバランスを取ったのかも知れませんし、少なくとも、コメディ要員として何人かは必要だったのでしょう。
なお、24話ラストで夾は封印である数珠を無理矢理取られて、25話で本当の姿である異形の姿に変身させられますが(悪臭を伴う。)、画面上ではそれほど異形ではないのは演出の都合として気にすべきではないでしょう(透なら夾を受け止められるのではと考えて夾の養父の草摩籍真(そうまかずま)(cv井上倫宏)がカケに出て数珠をとった。)。
◎ 24話からのクライマックス、特に25話の雨のシーンから最終26話はじっくりと描かれています。
透には見られたくなかった異形の姿、夾は逃げ出し、透もショックを受け、途中まで追いかけますが、うろたえて逃げ出し、さまよった末に母の墓へ。
○ 25話、普通の人間である透でなければ夾を救えないと言って、顔を見せずに平静を装っているのに装えていない草摩楽羅(そうま かぐら)(cv三石琴乃)の、夾が好きなのに何も出来ない、恋のライバルである透に頼るしかない、背中で語りつつの複雑な心境の涙とか。
○ 25話ラスト、虫の知らせというか花島咲(cv安原麗子)の例の電波によって魚谷ありさ(cv今井由香)と共に透の母の墓参りに夜遅くに来た際の、透の親友2人の対応の対比。
「もう戻れません。戻る資格がないんです。元々、あそこにいる資格なんて、なかったんです、あたしには。」と力なく言う透に対し、
一般的な人が行うように、透が心配で可哀想だと思って透を抱きしめようとする ありさ、
対して、「だめ。今、透君を抱きしめてはだめ。」と泣いて ありさ を突き飛ばしたり引き留めたりして、透に行動を促す咲。夾を探しにヨロヨロと歩き出した透を見送り、何もできない自分に号泣の咲とか。
(岡崎律子さんのピアノによる「セレナーデ」が優しく包みながら。)
何かをしてあげることより、何もしないで見守ることの方が辛いこともあるし相手のためになることもあるということでもあります。
○ 最終話(26話)前半、透は夾を見つけ、由希の励ましもあって、透は夾に寄り添い、
「帰りましょう、おうちへ。」
と、疲れたように、でも優しくゆっくりと静かにささやく堀江由衣さんの語りが、透の夾や十二支への気持ちの全てを表しています。この台詞だけで、堀江さんを一生好きでいられるくらいの名台詞、名演技です。
それでも暴れる夾に透は続けて、「あたしは、バカです。ホントに、何の力もない。怖い、今の夾君は、怖いです。でも、でも、これからも一緒に、一緒に、過ごし、たいんです。一緒に御飯食べて、一緒に勉強して、一緒に悩んで、あたしの我が儘聞いてほしいです。夾君の弱音も聞かせてほしい。だから、一緒に過ごしたいんです。」
夾が母を思い出しながら透に(夾は思っただけでなく、実際に口にしたと思う。)、「全てを、愛してくれなくったって、良かったんだ。怖がったって。怖がるのは、本当の俺をちゃんと見てくれてる証拠だから。でも母さんは、愛情って言葉で誤魔化して、見ようとしなかった。俺は一緒に考えて、悩んでほしかった。怖がったっていい。醜い姿を愛してくれなくても、それでも、一緒に生きていこうと。」
そして、優しさとは甘さではなく、厳しさが伴うということも考えさせられます。
○ 最終話後半、慊人に会いに行く透に強さ・逞しさを感じます。
何しに来たのかと聞かれて「分かりません。」と冗談ではなく答えるとか(一緒に考えて生きていこうという含意。)、どうせ近いうちに死ぬんだと自暴自棄な慊人に怒鳴られ暴力をふるわれても、慊人らに出会えて良かったと言い、続けて、「慊人さんは今、、、生きています。」。
慊人も「分からない。」と愕然として、矛(ほこ)を収め。
先述の理由から誰もが慊人の言いなりだったところ、慊人に意見した透というのは慊人にとっては怒りの対象でもあり、畏(おそ)れの対象でもあったのでしょう。だから、透に対して怒り狂いながらも、(由希や夾などが透との関わりで変わったという実績を踏まえつつ、)最後は矛を収めたのでしょう。
◎ さて余談ですが、この十二支に憑かれたという設定は、奇形児や先天的異常をかかえて産まれた赤ん坊として見ることも出来ます。
遺伝子診断を始め医学が進んできた今日では、胎児にそのようなことがありそうだとか起きそうだと分かれば堕胎する親も多いのかも知れませんが、このアニメ(や原作漫画)の当時(2001年かそれ以前。)は、まだ遺伝子診断などは普及していなかったのかも知れません。
堕胎すべきだとか、産み育てるべきだとかを他人に簡単に助言することは出来ませんが、自分の子供ならどうするかを考えるキッカケにはなるかも知れません。
【shin605】
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