人間とは何かについて、4つ続けて載せます。
最初なので、軽めの「まおゆう魔王勇者」から。
◎ 「まおゆう魔王勇者」
○ 魔王(cv小清水亜美)を倒すのが正義だから魔王を倒すという勇者(cv福山潤)に対し、魔王「こんにちはったら、こんにちは。」。
「この我のものとなれ、勇者よ。」、「断る!」と勇者、魔王「そこを何とか。。。」。
第1話のこの辺のやり取りは楽しかったです。こういう小清水さんの声、可愛いです。
人間にとっても魔族にとっても戦争に効用、利点があるから止められないし続いているという現実を教えられ、勇者があっさりと魔王と手を組んだように思いましたが、経済とかの知識がある者なら魔王の言うことは理解できますが、知識のない勇者は魔王に夢を持った、夢を託したということでしょうか。
○ バトルものかと思いきや、バトルはほとんどなく、戦争が起きる原因を踏まえた対策(主として、ジャガイモとかの新しい作物の生産による食糧難の緩和・解決。)とか、青年商人(CV神谷浩史)と協力して食糧を買い占めて食糧不足をまねいて敵軍を退却させたり、他国に売って金儲けするとともに冬の国の存在価値を認めさせるために天然痘のワクチンを開発しようとしたり、かなり現実的な国際政治と国際経済の話を分かりやすく描いた話でしたが、こういう話って、アニメにしても視聴者がついてくるのでしょうか?。
Blu-rayとかの売り上げや視聴率とかは知りませんが、原作がそれなりに人気だからアニメ化されたのでしょうけれど。
ついてきてほしいですけれど、どうなんでしょう?
小清水さんが可愛かったし、戸松さんの熱演が良かったし、堅いばかりの話にならないよう、コミカル要素も加えて上手くできている佳作だと思いますけれど。
2013年8月18日(日)に東京で朗読劇「まおゆう魔王勇者 人間宣言 ~名もなき少女が 魂の解放を叫ぶ~」をやるそうなので、それなりの人気はあるのでしょうけれど。
いい声優も集めていますし。
女騎士(cv沢城みゆき)、勇者(cv福山潤)、魔王(小清水亜美)。
メイド姉(cv戸松遥)、メイド妹(cv東山奈央)、メイド長(cv斎藤千和)。
○ 農奴だったところを逃げてきて魔王とメイド長(cv斎藤千和)に助けられてメイド姉(cv戸松遥)とメイド妹(cv東山奈央)になった姉妹。
中盤のヤマ場の9話で、学士様(魔王)を異端者、背教者と言いがかりを付けて、中央教会の使者が連れて行こうとするところ。
メイド姉が魔界に行っていて不在の学士様(=魔王)に魔王の力で化けていて、使者に殴打されて血を流しながらも人間の尊厳を謳った台詞、いい台詞で感動のシーンでした(目新しいことは何も言っていませんが、人間の尊厳を分かりやすく述べていますし、声で聞くとより良いです。)
ここで、魔王の姿をしているのに声がメイド姉の戸松さんなのは、台詞の内容がメイド姉妹の過去話だから戸松さんの声の方がすんなりと入ってくるからでしょうし、それで良かったですが、視聴後に良く考えてみると少し変な感じがするのは仕方ないのでしょう。
長文を引用するのはイロイロと良くないのですが、戸松さん迫真の演技の、中央教会に首を切られることを覚悟の上のいいシーンだったので。
メイド姉 「わたしは、わたしは、魂を持つ者として、みなさんに語らなければならないことがあります。(中略)」
と切り出し、農奴の苦しさ、きょうだいが次々に死んだことを語りつつ、メイド長と魔王に助けてもらい、優しくしてもらい、
メイド姉 「それ(助けられたこと。)は運命の輝きを持っていましたが、わたしはずっと悩んでいました。ずっと、ずっと。運命は暖かく、わたしに優しくしてくれました。安心しろ、何とかしてやる。
しかし皆さん、(広場に集った人への呼びかけは略)わたしはそれを拒否しなければなりません。あんなに恩のある、優しくしてくれた手なのに、優しくしてくれたからこそ、拒ばねばなりません。
わたしは、人間だからです。
わたしは自信がありません。この体の中には、卑しい農奴の血が流れているじゃないか、お前はしょせん、虫けら同然の人間もどきじゃないかと。
だからこそ、だとしてもわたしは、人間だと言い切らねばなりません。何故なら、自らをそう呼ぶことが、人間である最初の条件だと、わたしは思うからです。(中略)」
殴る使者。
メイド姉 「わたしは人間として、冬越村の恵みを受けた者として、仲間に話しかけているのです。
皆さん、望むこと、願うこと、考えること、働き続けることをやめてはいけません。聖霊様はその奇跡をもって、人間に生命を与えてくださり、その大地の恵みをもって、財産を与えてくださり、その魂の欠片をもって、わたし達に自由を与えてくださいました。
そうです。それはより良き行いをする自由、より良き者になろうとする自由です。
聖霊様は、完全なる良きものとして人間を作らずに、毎日少しずつ頑張るという自由を与えてくださいました。
それが、喜びだから。
だから、楽するために手放したりしないで下さい。聖霊様の下さった贈り物は、たとえ王でも、たとえ教会であっても、犯すことの出来ない神聖な宝物なのです。」
口を閉じろと言う使者。
メイド姉 「閉じません。
私は人間です。
もうわたしは、その宝物を捨てたりしない。もう虫には戻らない。
たとえ、その宝を持つのが、つらく苦しくても、あの暗いまどろみには戻らない。
光があるから。
優しくしてもらえたから。」
広場に集まった国民に、石を投げろ、投げない者は背教者だと言う使者。
メイド姉 「投げようと思うなら投げなさい。この狭く冷たい世界の中で、家族を守り、自分を守るために石を投げることが必要なこともあるでしょう。
わたしはそれを責めたりしない。
その判断の自由も、また人間のもの。その人の心が流す血と同じだけの血を、わたしはこの身をもって流しましょう。
しかし、他人に言われたから、命令されたからという理由で石を投げると言うのなら、その人は虫です。
自分の意志を持たない、聖霊様に与えられた大切な贈り物を他人に譲り渡して、考えることを止めた虫です。
それがどんなに安らげる道であっても、宝物を譲り渡した者は虫になるのです。
わたしは虫を軽蔑します。
わたしは虫にはならない。
わたしは、わたしは人間だからっ。」
ここは人間の尊厳を分かりやすく述べていて、人間の尊厳よりも勢力拡張しか考えていない中央教会の欺瞞を分かりやすく指摘していて、更に、負け犬根性がしみついて他人任せで自分で考えない・自分から行動しない庶民、自律していない庶民の自業自得を戒める言葉です。
(「人間」とは何かについては、次の「ジョジョの奇妙な冒険」の感想で少し書いているので、それも参照。)
人間はパンのみにて生きるにあらず、とか、人間は考える葦である、とか、そんな感じです。
ここにおいて学士様は、つまり実質的にはメイド姉は、冬の国の王が学士様を保護することを宣言し、中央教会とは別の教会の湖畔修道会の長でもある女騎士(cv沢城みゆき)から「聖人」と認定されるわけです。
喜ぶ国民。
「覚えておれ。この背教の国々めが。聖霊の子たる中央教会に背いて、地上に存在できると思わぬことだな。」と捨て台詞を残す使者。
この捨て台詞も、自らの欺瞞をはからずも証明しています。
宗教団体に限ったことではないですが、組織に限らず個人においてもですが、特に宗教のような特定のイデオロギーを金科玉条のようにして行動するものは自分が間違っていても気付きにくいですし、正しいことをしていると疑わないですし、間違っているかもと思っても正しいと信じ込もうとしますし、要注意です。
○ ところで、このアニメでは全てのキャラに固有名詞としての氏名がなく、「魔王」とか「勇者」とか「メイド長」とかになっています。
視聴者個々人が誰にでも感情移入しやすいようにそうしたのかも知れませんし、氏名をつけるとキャラの性格が氏名のイメージから来るものに一定程度の制約を受けるから自由にキャラを動かしやすいようにそうしたのかも知れませんし、単に氏名をつけるのが面倒なだけだったのかも知れませんし。
いずれにせよ、全員に氏名がないのなら、魔王とか勇者という呼び方が氏名と同じ固有名詞ということとなり、結局、全キャラに氏名があることと同じになるのですけれど。
今冬のアニメ「AMNESIA」は主人公だけに氏名がなく「主人公」(cv名塚佳織)となっていましたが、あれは1人だけだから主人公に感情移入しやすくなるところです。
○ さて、11話と最終(12)話は展開が早い感じ。話をはしょった感があり、自分で補完しないと話が分かりにくかったです。ここがこのアニメの欠点です。
あと1~2話かけて描いても良い気もしますが、12話というのは放送期間やBlu-ray化を考えても丁度良いのでなかなか難しいのでしょう。
心を乗っ取られている魔王と戦う勇者。
取り戻す魔王。
魔王と勇者はあらためて、争いのない、魔族と人間が協調した世界を目指しますが、魔族の多くも人間の多くも互いを敵と思っていて好戦的なところとか、それぞれの中にも自分の利益のために様々な動きをする者がいて、2人の策略が簡単に行きそうにはないなあ、どう話を進めるのだろうか、と思っていたら中途半端に話が終わり。
続きは漫画か、何かなのかは知りませんが。
少しばかりコミカルに描いていて、教科書のような真面目な話なのに、上手い具合に、深刻にならないように、堅くならないようにしているアニメですが、この先はどうなるのやら。
最終話での魔王と勇者の少しひょうひょうとした表情がせめてもの救いで、この2人ならやり遂げてくれるのでは、と思わされますけれど。
【shin】
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