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東京喰種トーキョーグール感想。憎しみと悲しみの連鎖。人間かグールの全滅か、共存か?

2014年夏アニメの感想の続きです。
見応えがあるシリアス系でした。

◎「東京喰種トーキョーグール」(全12話)

ようこそ ヒトとヒト喰いの『死』が交錯する悲劇の世界へ


この世界は間違っている――」
東京に潜む『絶望』。
それは、人々に『死』以上の恐怖を与える怪人――“喰種”(グール)。
彼らはヒトに紛れ、ヒトを狩り、その死肉を喰らう。食物連鎖の頂点に君臨する“喰種”に怯えながら、人間たちはこの『間違った世界』を生きていた。
読書好きの大学生・カネキは、行きつけの喫茶店「あんていく」にて、リゼという少女に出会う。年齢や境遇、読書の趣味も同じという事で、急接近する二人だが……
僕は小説の主人公でも何でもない… だけど…もし仮に僕を主役にひとつ作品を書くとすれば ――それはきっと、“悲劇”だ
『赫子(かぐね)』と呼ばれる捕食器官を用いて人間を襲い、その殺傷能力の高さから「化け物」と恐れられる“喰種”だが、彼らが生きる方法は、ヒトを喰う以外に存在しない。
カネキは、この歪んだ世界に疑問と葛藤を抱きながら、逃れようのない負の連鎖に巻き込まれていく。

(HPから。)


金木研(かねき けん)(cv花江夏樹)、神代利世(かみしろ りぜ)(cv花澤香菜)、霧嶋董香(きりしま とうか)(cv雨宮天)をメインに、芳村(「あんていく」(喫茶店&東京20区のグール互助組織)の店長&中心人物。)(cv菅生隆之)、笛口雛実(ふえぐち ひなみ)(cv諸星すみれ)、
美食家(グルメ)こと月山習(つきやま しゅう)(cv宮野真守)、
「アオギリの樹」の霧嶋絢都(きりしま あやと)(cv梶裕貴)、大守八雲(おおもり やくも)(cv西凜太朗)、

喰種対策局(CCG)の、真戸呉緒(まど くれお)(cv大川透)、亜門鋼太朗(あもん こうたろう)(cv小西克幸)など。



○ グール(喰種)という設定や、グールの利世が死んで臓器を移殖されて命が助かったものの、人間だったのにグールになった金木とか、1話から衝撃的と言えば衝撃的でしたが、今一つ心に響いてこなかったのは、この手の衝撃的設定に慣れて不感症になってきたのかも知れません。良くない良くない。

それでも、最終話、人間とも金木や薫香らとも敵対するグール一派の「アオギリの樹」の八雲から拷問を受けながらも、「利世」との対話による金木の鬱屈した感情の認識と理解と受容によるトラウマ(母の生き方と死。)の昇華によりグールとして本格覚醒するなど、全体として見応えがあって良いアニメでした

ただ、「力こそ正義」に近い認識をした上での金木の覚醒だったので、2期では「力こそ正義」が否定されるという流れが想像しやすいですが、常識的な物語としてそうなるのか、「力こそ正義」を貫くのか、筋が通るように描けばどちらでも構いませんが、どう描くのかは楽しみです。

また、最終話で「利世」が同趣旨のことを拷問されている金木に言っていましたが、「覚悟こそ必要」(優先順位を決める覚悟、その優先順位に従って優先順位が高いことを守るために優先順位が低いことを切り捨てる覚悟、それにより優先順位が高いことを守る覚悟と非難を受ける覚悟など。)といったことになるのでは、とも思いますが、原作がどうなっているのかは知りませんので、いずれにせよ楽しみです。


○ 人間とグールの間の子は普通のグールよりも強いという設定は、グールの利世からの臓器移植で強いグールに覚醒した「元人間」の金木という設定のために必要だったのでしょうけれど、、、犬も雑種の方が頭が良いと聞いたことがありますし(真偽は不明。)、人間も近親婚が禁止されているように純粋性が高いことには問題があるようですし、、、と思えば理解はできるか。


○ 1話で死んだ「大食い」こと利世の声が花澤香菜さんというのは良かったですが(2話以降でも、数回、少し登場。最終話は出番多し。)、客寄せパンダとして使われている気も。出るだけで見てもらえる力があるのが花澤さんなのでしょうし、狂気の利世は良かったですけれど。



◎ さて、8話では、薫香が存在に悩み人間に殺されるグールの側の理屈をCCGの真戸に叫び、真戸は理解する気もなく、
同時間の別の場所での戦いでは、
CCGの亜門がグールに殺された人間の側の理屈を金木に叫び、人間とグールが半々の金木は亜門に「間違っているのは、この世界じゃない。」「もっと、知るべきなんだ、人間も、グールも。世界を歪めているのは、グールだけじゃない。あなたもだ。」「分かってもらえませんよね。だったら、分からせます。」と言葉をしぼり出し、「どうすれば、伝わるのかな。どうすれば理解し合えるのかな。争っちゃいけないんだ、奪い合っちゃいけないんだ、人間も、グールも。断ち切るんだ、悲しみの連鎖を。」と思い。亜門は金木の言葉を理解する気はないものの、殺さずに見逃してくれた金木の言葉に少しの引っ掛かりを感じ。

2つの戦いをクロスさせながらの、極めて単純だけれども、有史以来解決が難しい、意味深いテーマの提示シーン。


○ 人間を殺して食べるからグールを憎む人間と、必要最小限しか人間を食べていないグールも多い上にひっそり暮らしているグールも多いのに人間に殺されるから人間を憎むグールも多いと。

それぞれの正義がぶつかり合っているわけですが(ともに同程度に正義であり、同程度に悪である。)、現実世界の人間だって他の動物や植物などの生き物を食べて=エサにして、つまり、他の動植物を殺して生きているわけです。

さて、人間だけが特別で、他の生き物の食べ物=エサにならない権利を有するのか?。



まず、グールがいない現実世界で考えてみます。人間だけが他の動植物に食べられない権利を有するとするならば(人間が他の動植物を食べても、当該動植物の仲間は人間に仕返しをしてこない一方、人間は人間を襲った熊を射殺しているように、逆であれば人間は仕返しをしている。)、それは人間は強いので食物連鎖や弱肉強食の頂点にいるからというのが1つ、人間だけが知能が高くて他の動植物とは区別される特別な存在であるからというのが1つ。主に2つ。

人間だけが特別だから、人間が他の動植物を殺しても罪に問われないのに(希少な動植物など、特別な場合を除く。)、魚や昆虫では共食いは珍しくはないのに、人間が人間を殺すと犯罪として罪に問われるわけです。
(なお、他の生き物は生きるために共食いをする場合が多いと仮定するならば、人間は食べるために殺すのではないから罰せられるべきというのも一理あります。)


○ で、アニメ世界へ。グールを人間だと考えると、この仕組みの中に入りますから、人間を食べるグールは罪に問われるのが妥当でしょう。

しかし、通常の人間の食べ物が食べられないから人間を食べるしかないグールですから、これではグールの生存権の否定、つまり、グール=人間ですから人間の生存権の否定になります。よって、グールが人間を食べる権利=生きる権利をある程度認めつつ、共存するしかなくなります


一方、グールは人間ではないと考えると、つまり人間が人間だから特別であるとするならば、人間の生存権を脅かすグールの生存権を人間が認める必要はそもそもなくなります。この場合、グールの側からすると、グールの生存権を認めない人間の生存権をグールが認める必要もそもそもなくなります
グールを殺す人間が正義で善人であるなら、人間を殺すグールも同程度に正義で善人(善グール)なわけです。

人間が致死率の高いウイルスなどの生存権を認めずに撲滅しようとしているように、ウイルスにとっても人間の生存権なんて関係ありませんから増殖しようとしているように、互いが互いの生存権を認めない状態です(但し、ウイルスは人間を撲滅しようとしているというよりは、単に本能に従って生きて増えようとしているだけかも知れません。その行為が、タマタマ人間を殺すことになるというだけかも知れません。人間が全滅したらウイルスも全滅するのかも知れませんから、ウイルスはある程度まで増えた段階で増殖を止めて人間と共存したいのかも知れません。)。


○ 通常は人間よりも強いグール、という観点からは、人間はグールの食べ物になっても当然と言えます。

人間が今の地位を築くまでには、他の動植物と戦って全体として勝ち続けてきたわけです。現実世界の人間も、強いから他の動植物を食べることができ、それが当然としてそれによって生きているのですから。
全体として人間より強い動植物が歴史上にいたら、人間はそれらに負けて絶滅したか、それらのエサあるいはエサ候補として生き続けることになっていたでしょう。


○ 人間は知性が高いから他の動植物よりも優位だと言うのであれば、人間と同程度には知的生命体であるグールも人間と同程度に他の動植物よりも優位であり、人間とグールは同等ということになります。(因みに、知性を基準とすると、クジラやイルカの知性が高いから食べてはいけない、という主張も一理あります。尤も、クジラやイルカの知性が本当に人間に近いくらいに高いとは思えませんけれど。また、人間は動物実験でサルなどの類人猿を使うことがありますが、これも問題になりかねません。尤も、これも、サルの知性は人間には及ばないと考えれば問題なくなります。)

なお、知能の高さが基準だと、「大人」になっても自分で食べ物を獲得できない障害者などや、病気や事故などにより先天的・後天的に知能が劣る人間は人間ではないということになりますから、結局は遺伝子的にどうかで人間かどうかを判断するしかないと思います。

後天的にどうかではなく、元がどうかで判断するなら、金木はどこまで行っても人間ですし、生まれた時からグールの者は人間ではないかもしれませんが、人間の突然変異だったり進化形態かもしれません。

(→「新世界より」のバケネズミ(人間とネズミを掛け合わせ、知能は人間並みの者もいるが外見はネズミ。)が人間なのかについての文章でも。「新世界より感想。人間とは何か?元人間のバケネズミは人間か?「想像力こそが、すべてを変える。」かな?」。)


○ さて、だんだんと迷路に入ってきました。吸血鬼であれば人間ではないので、もう少しだけ話が簡単なのですけれど。宇宙人だとすると、、、あまり変わらないか。

いずれにせよ、グールは外見も知性も感情も人間と変わらないのですから、人間とは区別できません。遺伝子的にどの程度近いかで判断するしかありませんが、そこはアニメでは描かれていなかったはず。
(性格の悪さについて。サディストの八雲のようにグールには性格が歪んだ者が多い気もしますが、八雲は人間に拷問されたから性格が歪んだだけですし、人間を食べて良いのかに悩んで歪んだ者も多そうですし、食べ物になかなかありつけずに飢えに苦しむ内に歪んだ者もいるでしょうし、人間に親しい者を殺されたから歪んだ者もいるでしょうし。それは、人間も同じ状況になれば同じように歪むでしょう。真戸や亜門は、親しい者や見知らぬ者がグールに殺されたから歪んだのですし。)

仮に遺伝子的に人間と有為な違いがなければ人間ですが、とは言え人間に害をなすことから、、、いずれにせよ、一方が全滅するか隷属するまで戦うか、共存するしかありません。

全面戦争になれば、数が多い人間が勝つかもしれませんが、グールも結構な数がいる様子ですし、人間と戦う派と共存派に分かれるから人間の味方をするグールもいるでしょうけれど、数十万人だか数百万人だか数千万人だか、グールの数の何倍かの人間の犠牲が必要でしょうし、それでも全滅できるか分かりません。

となると共存ですが、グールは人間を食べないと生きていけないとなれば、どう共存できるのか。死人かそれに近い人間のみをグールが食べ、それ以外は犯罪として罰するといったところでしょうか

ただ、これは人間が感情的に嫌悪感を持つでしょうから上手くいくかは分かりませんから、現実的には、人間は全滅できると信じて全滅目指して頑張るのでしょうし、このシステムをとったとしても人間がグールに死人を十分に与えないなどによりグールの数は実質的に調整されて、あわよくばグールを全滅しようと人間がもくろむかも知れませんから、グールとしても納得するとも思えません。

両者が一応の合意をして共存という平和が訪れたとしても、そう長くは平和が続かなかったのも現実世界でのこれまでの人間同士の争いです。ほぼ絶え間なく、世界のどこかで戦争や戦争類似のことを起こしているのが現実世界の人間であり、日本や世界のどこかで殺人事件を常に起こしているのが現実世界の人間です。「起きている」のではなく、人間が「起こしている」のが戦争であり殺人です。

現実世界同様にこのアニメでも、結局はさんざん殺しあって、相互に多大な犠牲を払ったら払ったで憎しみと悲しみの連鎖を生み、更に多大な犠牲を経てから共存の道を選ばざるを得なくなるのかもしれません。但し、争いは収まっても、心情的な和解は難しいのですが。

このアニメの描き方では、一部のグールと人間を除いて相互の憎しみが極めて深いですから、修復は難しそうです。


これは、2つの世界大戦を経て一応の共存の道を選んだヨーロッパを念頭に置くのか、未だに出口が見えずに争い続けるイスラエルvsパレスチナ&いくつかのアラブ諸国を念頭に置くのか、という問題でもあります(アメリカがイスラエルを支援しているから国際法違反をしてもイスラエルは是正しないで強気でいられるという特殊事情があるので、イスラエルとパレスチナは対等な交渉にならず、よってきちんとした和平にならずに長く争っているのですが。)。


○ 8話の金木の思い「どうすれば、伝わるのかな。どうすれば理解し合えるのかな。争っちゃいけないんだ、奪い合っちゃいけないんだ、人間も、グールも。断ち切るんだ、悲しみの連鎖を。」と、
8話で雛実が両親を殺した真戸に言った言葉「復讐なんてどうでもいい。わたし、悲しいだけなの。」がこの物語の結論なのでしょうけれど、憎しみと悲しみの連鎖が続くアニメ世界において、そう持っていくのは大変な気も。


2015年1月から2期です。
いずれにせよ、楽しみです。


【shin】
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