◎「凪のあすから」(なぎのあすから)(全26話)
「ちょっと不思議な世界で繰り広げられる 少年少女たちの青の御伽話(ファンタジー)」
「海と大地のあいだで揺れる 青の御伽噺(ファンタジー)」
「海の色。大地の色。風の色。心の色。君の色。 〜Earth color of a calm〜」(最終26話タイトル)
※もしかして、「Earth color of a calm」→「凪のアース・カラー」(凪の大地の色)→「凪のあすから」なのか?
いや、それは・・・・・
○ 海中で生活している人間と陸上で生活している人間の交流とイガミ合いと、思春期の悩みと恋と成長の物語。
陸上の村と海中の村の対立、陸上人と海中人との禁断の恋、陸上人と海中人との交流と和解。
海中人はエナに覆われているから海中でも普通に生活できるとか、エナが水分を吸収するから陸上に出ても服が直ぐに乾くとか、一定時間が経つと海水につからないといけないとか、上手いこと考えたものです、突っ込んで考えてはいけない設定を。
これだ、という物語では全くありませんが、三角関係や直線関係や、成長により、好きな相手が変わったり、好きな相手が明確になったり、思いが強くなったり、といった入り乱れた思春期の感情、変わることと変わらないこととを主軸に、イロイロと織り交ぜての物語。恋心を追っていくのは楽しかったですし、順を追って気持ちの変化も示されていましたし、センチメンタルな雰囲気の中で良い感じに描かれていました(小3だったのが中2になって、ずっと先島光(cv花江夏樹)が好きな潮留美海(cv小松未可子)、ずっと伊佐木要(cv逢坂良太)が好きな久沼さゆ(cv石原夏織)も含めて)。
その恋心が回りくどく感じる人もいるでしょうけれど好みの問題でしょうし、回りくどさが現実的な物語にしていました。
物語自体は、全体としてまずまずでしたが。
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○ 陸上の木原紡(cv石川界人)を好きとまでは言えませんが気になってしょうがない海中人の向井戸まなか(cv花澤香菜)を好きな光がつまらないヤキモチを焼くところは、子供らしい過剰なヤキモチだったのでちょっとイライラしました。
祖父が元海中人なこともあってか、紡が海中人に理解があるだけに尚更。
○ 3話で、海中人が陸上の男と結婚しても子供にエナが出来なくなるので、海中人の繁栄のために、陸上人と付き合うことは御法度で永久追放だと。そうしないと滅亡しかねませんから、仕方ないですね。
光の姉の先島あかり(cv名塚佳織)がそれで陸上の男と別れさせられ、悲しむことに。一度はあきらめたものの、それでも結婚したのは、あかりの思いの強さですね。
○ 4話、紡が格好良い。海中人にも分け隔て無く、陸上人にもきちんと注意したり。ちょっと出来過ぎですけれど。
誤解から陸上人に喧嘩を売ったけれど誤解と分かって土下座して誤る光。それを見て直ぐに一緒に土下座する まなか。それを見ていて何も出来なかった、光を好きな比良平ちさき(cv茅野愛衣)が、まなか のように光をかばえなかったことを後で後悔したり。実は ちさき を好きな要もずっと温かく見守っています。
絡み合い、錯綜する気持ちが良い感じ。
○ それにしても光が暑苦しい。1人だけ熱い青春。全体のアニメの雰囲気からして、少しだけ浮いている感じがするのは気のせいか。
紡に好意的な まなか にイライラしすぎ。ちさき も、まなか に遠慮して光と不自然な距離を置くとか、青春であり、中学2年生の恋模様。
○ そんなこんなで、陸上に危機が訪れそうだから冬眠に入った海中人ですが、ドサクサで ちさき は地上に取り残され。
冬眠していると年をとらないのは成る程という設定ですし、それでかつての同級生が5歳差になるとか、その5年と、5年間も紡の家で暮らしたことが ちさき の光への気持ちを変えたとかも成る程で、時間が解決するということでもあり、中学生の思春期から19歳になった変化の大きい年頃という成長が解決するということでもあり。
ちさき は、普通の女子であり、つまり等身大の地味に嫌な子でもあり、その嫌な子な感じが目が離せなかったところですが、成長したものです。
茅野さんがこれまで演じてきた嫌な子は等身大の嫌な子らしくてイイネという話は別に書きますが、一方、まなか の無垢な子ぶりは浮き世離れしていて、何かが欠落している感じ(普通のアニメにはありがちなキャラですが、このアニメでは浮いている。「人を好きになる心」を奪われた冬眠後の まなか(22話)は理由がありますが、冬眠前は特に理由は明示されていないものの、まなか は光を始めとして周囲から守られているという話があったので、それが原因でしょう。)。足して割れば丁度良いのですけれど。
○ 雪が降り続くので寒くなって、数十年後か数百年後に陸上の人類は滅ぶけれど、海中人は何も食べないと冬眠のような状態になって寒さも乗り越えられるのだとか(但し、起きられずに死ぬ人もいる様子。)。
それを陸上人に知らせても陸上人は対応できないから知らせない海中人というのは、善意からではなく、知ったこっちゃ無いという意識からでしょう。人種というか民族というか、溝は深いようです。成功はしませんでしたが、何とかしようとあがく光ら子供達が頑張っただけに、大人達の対応が現実世界でもありがちなだけに、大人達の対応が残念です。
それはそれとして、そんな先のことなら冬眠に入るのは早過ぎですし、5年後に光や要が目覚めるのも早過ぎですし、しかも5年後に光が目覚めたときは陸上に雪が積もっているものの10センチもなく、人間が生きるには困らない気候のようですし(寒くて食糧危機は訪れるだろうと推測しますが。)。
○ まなか の「人を好きになる心」を取り戻すまでの終盤は、まなか は紡を好きだと思っている光、ちさき、美海の誤解とからめて恋模様が錯綜します。
紡や さゆ らの、そして ちさき もですが、これまで言葉に出来なかった思いを抑えきれなくなって吐露することによって、ようやく歯車が回りだし、半歩ずつ進んで行くわけですが、ようやくきたか、という感じはありました。少しせっかちになっている私は、良くないですね。
美海が光にはっきりとは言わずに、光に まなか が好きと言わせた夜の砂浜のシーン(25話)は美海の感情の流れが良かったですが、この時点でも光に好きと言えない美海は、、、まあ仕方ないですけれど。。。
まなか は好きという気持ちを取り戻し、カップル成立も概ね妥当なところですし、ハッピーエンドで終わりましたが、それで良かったのではないかな。
順を追ってきちんと描かれていましたし。
P.A.WORKS制作だからでしょう、絵が綺麗でしたし。
○ 一番上の左が前半、右が後半のキービジュアル。
それぞれの視線が、露骨です。
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中2の光や ちさき ら、小3の美海ら。
まなか と ちさき の可愛い子ぶったポーズが、少し鼻につくのですよねえ。
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19歳の ちさき ら、中2の光や美海ら。
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【shin】