2015年冬アニメの感想の続きです。
◎「ユリ熊嵐」(ゆりくまあらし)(全12話)
総合評価4.5点(5点満点)。
一言で言うと「あたしたちは、最初からあなたたちが大嫌いで、最初から、あなたたちが大好きだった。だから、本当の友達になりたかった。あの壁を越えて。」(熊の台詞)、「私はスキを諦めない。」(熊と人間の台詞)という物語。
キャラ萌はありませんが、程良い分かり難さが心地良く、独特の映像や台詞も楽しく、良かったです。
希望のある終わり方で、まとまりも良かったのですが、引っかかる点が1つ。
紅羽が熊になり、熊の銀子と結ばれたのですが、これは結局はイジメの一因でもある同調圧力と同じ構造ですから、人間と熊のままではダメだったのだろうか?、と。
人種や国や考え方が異なっても、友達になれる、結ばれる、理解し合える、という終わり方の方が良かったのでは。
それとも、それは無理と言いたいのかなあ?
○ 実は熊で熊世界でも排除されてきたヒトリカブトの百合城銀子(ゆりしろ ぎんこ)(cv荒川美穂)、実は熊の百合ヶ咲るる(ゆりがさき るる)(cv生田善子)、ほぼ排除されていて銀子と友達だったことを思いだして熊になる椿輝紅羽(つばき くれは)(cv山根希美)を中心に、
紅羽と相思相愛の泉乃純花(いずみの すみか)(cv小倉唯)、実は熊の百合園蜜子(ゆりぞの みつこ)(cv悠木碧)、蜜子が好きで実は熊の百合川このみ(cv小清水亜美)、先生で実は熊の箱仲ユリーカ(cv井上喜久子)、大木蝶子(cv村川梨衣)、亜依撃子(あい うちこ)(cv安國愛菜)、紅羽の母の椿輝澪愛(つばき れいあ)(cv遠藤綾)、るる の弟の みるん(cv釘宮理恵)のほか、
「断絶のコート」で行う「ユリ裁判」の裁判長の「それがセクシー。シャバダドゥ。」なライフ・セクシー(cv諏訪部順一)、検事のライフ・クール(cv斎賀みつき)、弁護人の「キラキラァ~」なライフ・ビューティー(cv山本和臣)のライフ・ジャッジメント・ガイズの熊の3人など。
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○ 「ユリ熊ァァァァァァァァァァ(「ァ」は28コのはず。) ユリ熊嵐」からOP曲の絵と曲が始まりますが、OP曲の「あの森で待ってる」(歌:ボンジュール鈴木)のささやきが良いです。
ED曲の「TERRITORY」(歌:百合城銀子(cv荒川美穂)、百合ヶ咲るる(cv生田善子)、椿輝紅羽(cv山根希美))の軽快なノリも良いです。
映像表現は同じ幾原邦彦監督の「輪るピングドラム」ほどとがってはいないですが似た感じで、ピングドラムを見ていない人は慣れるのに時間がかかるかも知れませんが、物語自体は、1話で基本設定を説明してくれますし、がちユリであり、熊が人間に変身して高校生になったりして人間を食べるという、萌でコミカル面もあるけれど、がちユリやイジメの悩みも織り交ぜてのシリアス面もあり、全体の雰囲気としてはコミカルに見せかけたややシリアスな物語ということで、とっつきやすいです、というのは最初の見せ掛けで、すぐに分かり難くなります(それでも、ピングドラムほどではないです。)。
絵や演出のトンガリはピングドラムの方が上ですが、ピングドラムは2クールということもあってか謎の明かし方が遅くてイラつきましたし分かりにくかったので、完成度はユリ熊嵐の方が上な気も。
「ガウガウ」「ゴリゴリ」「ガリガリ」「デリシャスメル」「ジュルリ」「ショークッ!クマショック!!」「私はスキを諦めない。」「約束のキス。」「ユリ、承認!」なんかも楽しいです。
○ 熊から人間を守るための「断絶の壁」により熊と人間の世界は分断されているのに、熊が入り込んできて女子高生を食べると。女子高生達は熊を射殺すると。
実は、大好きな紅羽と再び仲良くなるために人間に化けてクラスメイトになった銀子。
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○ 熊に目を付けられないように目立たない「透明な存在」でいるため、目立つ=悪として生徒を「排除の儀」により仲間外れにするのですが、それはイジメでもあり。
でも蜜子によると排除された生徒こそ食べると美味しいのだと。
そういうイジメの対象を常に探している女子高生達というのも、「透明」になっていないとイジメられるというのも、中高生の現実世界ではありがちなのでしょうけれど、何だか子供だなあ、です。
透明な存在になっている普通の生徒は美味しくなく、排除された生徒こそが美味しいというのも、現実世界のイジメなどへの皮肉なのでしょう。
無視や排除という「透明な嵐」のイジメの中でも友達でいてくれたとか、熊と人間という異種の友情とユリとか、そういった高校生活や友情・愛情の物語として見ることもできますし、
異なる人(他の組織の人、他県の人、外国の人、仲の良い外国の人、仲の良くない外国の人など。)との付き合い方を考える物語として見ることもできますし、
がちユリ物語として見ることもできますし。
○ 8.5話。制作が追い付かなかったのでしょうか。声優によるこれまでの振り返りとトーク。「SHIROBAKO」を見ていると、頑張って作ってね、と温かい気持ちになれます。
○ 最終12話。蜜子に食べられた純花と同じ外見と声の者がクマーリア様として現れましたが、同じなのか、似ているだけなのか、そこは不明。同じだとすると、物語として少し分からなくなりますけれど。
さて、熊の銀子と人間から熊になった紅羽は撃たれて死んだのか、それとも熊の世界に逃げ込んだのか、それとも人間の世界にいるのか、明示しない終わり方でした。ED曲をバックに最後で2人は口づけをしていますが、天国かも知れませんし。
(1)蝶子は「恐るべき悪の排除に成功したのです。」と演説していましたが、自分の地位のために虚勢を張っているだけかもしれないので、そのまま信じて良いとも限りませんし(但し、そのように言うということは、死んでもおかしくないくらい血が流れるような怪我を負わせたはず。多数の女子高生が現場にいたのですから。)。
(2)死んで天国で仲良くしているということでも説明がつく終わり方でしたし。銃弾の雨の現場で撃子だけが見たと思われる映像は、天国への階段のようでしたし。
(3)そもそもこのアニメ自体が みるん が読んでいる絵本の物語であり、アニメ内におけるフィクションであるとも解せますし。
まあ、素直に考えると(2)の天国な気はしますが、それでは残念なので(1)のギリギリ逃げた案をとるとして、2人というか2熊は生きているのでしょうけれど、特に根拠があるわけではなく、願望でしかありません。
秋葉原にて。
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アニメジャパン2015にて。
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【shin】