◎「闇芝居」
○ ホラーは、見たいとは思いませんが、見ても大丈夫です。
タマにはホラーでも、と思って今夏にTV放送された実写映画「貞子3D」(2012年5月)を2Dで見たのですが、別に怖くはなく、単に驚いただけでした。それも、ゾンビみたいな化け物が急に出てきたり、それに驚いたヒロインが急に叫び声を上げたり、に。急に何かをされれば、そりゃ驚きますよ。でもそれは怖いとは異なるものであり、それが主のホラーなら見る価値はありません(映画を見てキャーキャー騒ぐとスッキリするというのは、カラオケでスッキリするとの同じですから理解は出来ますが。)。誰かに後ろから急に「ワッ!」としてもらった方がよっぽど驚きます。しかもタダです。8月から続編のの「貞子3D2」が上映されたそうですから、人気作品のようですが。
○ さて本題。小太鼓を叩いて、始まりはおじさん(cv津田寛治)の「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。闇芝居の時間だよ。」、終わりは「おしまい。」という、にこやかで優しい話し方だけれども、やや抑えた、やや含みのある口上の、6分枠の短いホラー。
怖い話を優しく聞こえる「おしまい。」で区切り、更に初音ミクのエンディング曲で中和することにより現実に戻るような作り。
昭和と言っても昭和末期には壊滅状態だったのかも知れませんが、昭和には自転車で紙芝居を見せに来るおじさんがいたそうで(そのときにお菓子とかを売って稼ぐ。)、冒頭はそんな感じなのでしょう。
アニメというよりは紙芝居風に、動画はあまり無いようで、主として静止画を動かすような作り。
絵も、昭和っぽい感じ。
ただ、エンディング曲はミクの「怪々絵巻」(詞曲:てにをは)でしたが、歌を作った人はクレジットされたのにミクは何故にクレジットされないのだろう?
○ 最後に急に出てきて驚かすのもありますが、基本的にはジワリと来る怖さであり、怖いと言う程ではないですが、日本のホラーという感じでゾクッとして不気味であり、短いことも含めて、夏には丁度良かったです。
長いと冗長になって怖さが半減するかも知れませんし、短いのをまとめて放送されるのは、ちょっと怖いですし。
拾い物で得した気分でした。
◎「銀の匙 Silver Spoon」
ノイタミナ枠(全11話)。今期のこの枠のもう一つは「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(2011年春)の再放送らしきものでしたが、私の気分が当時と変わっている気もしないので、よって「今の気分ではない」という感想が変わることもないだろうと思って見ていません。
○ 普通高校に行ける程度には勉強はできるのに、札幌市の中高一貫の進学校で落ちこぼれてノイローゼになり、農業に興味は無いのに家に帰らなくてすむからとして全寮制の北海道の農業高校に入学した八軒勇吾(cv木村良平)ですが、周りの生徒は、実家が農業や畜産業をしているから手伝ってきた者ばかり。
冷めた目で見る生徒もほとんどなく、目標も無い八軒が軽蔑されたり、無視されたりというのが無かったのは、農業等をしている者は人が良いとでも言いたいのでしょうか。八軒は主人公だから不思議な魅力があるとでも言いたいのでしょうか。
休みの少ない仕事でしょうし、朝は早いでしょうし、収穫は天候の影響も受けますし値段は安定しないから収入も安定しませんし、国内としては1農家あたりの面積が圧倒的に広大である北海道であっても世界的に見れば規模が小さいこともあって多くは高収入とまでは言えないでしょうし、そんな親の苦労を見ているから人が良いとでも言いたいのでしょうか。
まあ、それはどうでもいいですけれど。
○ 八軒が惚れるヒロインの御影アキ(cv三宅麻里恵。上の絵の一番左。)が少し可愛い程度なのは良いです。出番の多いキャラがあまりに可愛すぎると、現実的なこのアニメから浮きますし。
一方、関取のようにとても太っている稲田多摩子(cv高垣彩陽)が9話で人並みに痩せるとアキよりも可愛いのは対比として面白いです。
現実感の中のコメディとしていい感じです。
○ さて、原作漫画はアニメ化前でも1000万部売れていたようですが、生きている牛とか鶏とかを誰かが殺して誰かがさばいて食卓に届くとか(アニメ内での実習では、自分で育てた豚や鶏を自分で殺して自分で食べている。)、現在では作り手(農家、畜産家等)と売り手(スーパー等)と買い手(消費者)が区別されているから、そういう当たり前のことが新鮮だから人気なのでしょうか。
未見ですが、「ブタがいた教室」(2008年)という、小学生が豚を育てて最後は食べるかどうするかを議論して決めるという、実話をもとにした映画が結構話題になりましたが(自分達では食べなかったけれど、食肉センターに送って肉にはした。)、それと似たようなものでしょうか。
牛や豚や鶏や魚といった動くものだと分かりやすいですが、米や野菜などの植物であっても、食べ物と一緒に知らず知らずに口にしている害のない菌類であっても、どれも生きているわけで、生きているものを食べないと生きていけないのが人間や動物なわけで。
そんな当たり前のことが当たり前に感じられなくなったのでしょうね。
(以前は東京の少なくとも多摩地域でも、牛や豚とかを小規模に飼育している人が住宅地の近くにいて、その家畜がいつの間にか減ったりすれば肉として売られたということが子供でも容易に想像が付いたのでしょうけれど、今はそうそうないのでしょうね。)
その辺は私にはあまり目新しさはないので(家畜を自分でシメたり、さばいたりしたことはありませんが。せいぜい自分で釣った魚を自分で調理した程度ですが。)。
とは言え、流石に八軒のように家畜にペットのように名前を付けたら情もわいて、処分したり食べたりするのを私もためらうでしょうけれど。
○ いずれにせよ、このアニメは面白いテーマを正面から、かつ、楽しく飽きないように描いている佳作だと思いますが、一番の主題は私には当たり前のことなので、私としてはもう一つの主題である八軒のアイデンティティ探しという面を中心に見るしかなかったところです。そこは普通だったかなあ。
そう見ると、このアニメの魅力は3分の1以下になるのではないかなあ。
(ところで、私がそう書くとツッコミがありそうです。つまり、そのように実家が農家とかの生徒達や私が当たり前だと思っていることを、八軒という何も知らない者を加えることによって生徒達や私に再度考えさせるのもこのアニメの意図であり校長先生(cv三ツ矢雄二)の意図であろうと(2話後半の校長先生の八軒への言葉、9話前半のクラスメイトの会話、9話後半の「分かったフリしてスルーすることだってできるはずなんだよ。」との先輩とか「価値観の違う者が混ざれば、群は進化する。」との富士一子先生(cv湯屋敦子)の言葉など。)。
それはそのとおりですが、それこそ、アニメや漫画や実写映画(2014年春公開予定)ではなく、実体験でないと本当に理解することは難しいでしょうから、そのツッコミは、半分は当たりですが半分は外れの筋違いです。
だから、それを念頭に置いてこのアニメを見るという態度が必要なのでしょう。)
というわけで、このアニメは佳作ですが私にはあまり面白くはなかったです。
それでも、2014年冬に2期があるようなので、それはそれで楽しみに待ちたいと思います。
【shin】
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