2024/11/02 sta
前回の章
西武新宿線を使い、山下と共に川越へ向かう。
果たして先輩の岡部さんが身元引受人を受けてくれるか……。
裁判の時や警察署への面会も行かないといけない条件付きなので、二十万円という金額と引き換えにやってくれるかどうか。
まあ岡部さんとは十数の付き合いである。
おそらく引き受けてくれるだろう。
「山下、おまえが川越来るなんて、ワールドワンの床工事以来だろ?」
「そうですね…。あの時岩上さんの妹分がいるキャバクラ行ったじゃないですか。あの子元気なんですか?」
ミサキか…、そういえば百合子と付き合うようになってから、会うのはおろか連絡すらしていなかった。
あの不動産の一件から俺も連絡をあまりしなくなったので、仕方ないか。
仮に連絡して、またミサキとのやり取りが増えると、百合子のヤキモチ焼きの対象になるのは明白だ。
今は普通のOLと付き合っている事を説明すると、妙に山下は興奮してどうやって普通の子と付き合えるのかを色々聞いてくる。
根掘り葉掘り聞かれながら、岡部さんの独立した店『とよき』へ到着した。
「おう、智一郎久しぶり」
「お久しぶりです。すみません、中々顔を出せなくて」
「もうおまえの家の隣じゃないんだから、しょうがないだろ」
「あ、紹介します。俺の後輩で山下と言います」
山下を岡部さんへ紹介し、席に座る。
さすがに他の客もいるので、身元引受人の話はやめておこう。
世間話をしながら時間を潰す。
俺と山下以外の客がすべて帰り、ようやく手の空いた岡部さんが来る。
「智一郎、今日は後輩まで連れてきてくれて、ありがとうな」
「いえいえ、実はこいつ…、山下っていうんですけど、今度うちで働くんですね」
「風俗?」
「いや、あそこはとっくに潰れてますよ。裏ビデオです。それで名義人をやるんですが、最悪捕まった際の身元引受人がいなくて」
「え、ひょっとして俺に?」
「ええ…、もちろん引き受けてもらえたら、謝礼で二十万払います。ただ裁判へ一緒に出てもらう事と、留置所へいる時一度は面会をお願いしたいという手間はあるんですよ」
俺は山下に頼れる身内がいない事、そして店を経営している身元のしっかりした人でないと、身元引受人はできない説明をする。
しばらく腕を組んで考える岡部さん。
断られたら仕方ない。
誰だって裁判へ出るなんて嫌だろう。
「智一郎、おまえの直の後輩なのか?」
「ええ、五年ほどくらいの付き合いの後輩になります」
「分かった…、おまえの後輩だというならやるよ」
「本当っすか?」
「だって誰もいないから、わざわざ川越まで来たんだろ?」
「はい……」
「まあ受けるけど、すぐ捕まりましたとかはやめてくれよな」
「はい! もちろん最善は尽くします」
こうして山下の身元引受人は、地元の先輩である岡部さんが男気で引き受けてくれた。
これで三月から晴れて、堂々とオープンを迎える事ができる。
準備もほとんど終わり、やるべき事はすべてやった。
俺は久しぶりに休みを取り、百合子と時間を過ごす。
オープン準備で多忙なのは理解してくれたが、常に一緒の時間を共有したい百合子は妙に甘えてくる。
「ごめんな、里帆や早紀との時間が中々作れなくて」
「だって私たちの為にも今は頑張っているんでしょ? それならしょうがないよ」
前のガールズコレクションのような職場でない事、そして異性が関わらない分、百合子の機嫌は良かった。
俺は長谷川の率いる組織を儲けさせ、どんどん拡大していく。
今はその事に全力を注ごう。
「智ちんがまた捕まる事は大丈夫なの?」
「ああ、それは絶対に無いから安心して」
「前だってそう言ってて捕まったじゃない」
「あの時は…、まあ言い訳しても仕方ないか。今回は後輩の山下が名義で売り子もやる。だから俺が捕まる事なんてありえないんだよ」
俺は裏ビデオ屋の名義人の仕組みを話す。
何故俺が巣鴨警察に捕まった際、不起訴になり罰金刑だけで出てこれたのか。
現在の法律が変わらない限り、クソみたいな小便刑なのだ。
だから仮に山下が捕まったところで、刑務所へいきなり送られる事はない仕組みを伝える。
「うーん、私にはよく分からないけど、智ちんがそう言うなら大丈夫なのね」
「まあそういう事だ。腹減ってない? どこか行きたい店はある?」
「うーん…、洋食屋さんがいいな」
「霞ヶ関のエトワールはゴリを紹介した時に行ったしな…。二択にするか。ロールキャベツの旨い家庭用フレンチか、ハンバーグもあるけど旨い味噌焼きチキンがある店。どっちがいい?」
「ロールキャベツがいいかなー」
「そこのエスカロップって料理も旨いんだよ」
「そんな食べられないよー」
「残すようなら俺が全部食うよ。ここから五分掛からない距離だから、歩いていくよ」
いよいよ明日から秋葉原のアップルはオープンする。
自身が思い描いた作りの裏ビデオ屋。
これが果たして客に受けるのか。
初の試みだが、きっとうまくいく実感はあった。
昼の十一時から夜の八時までの九時間が営業時間。
終わったらその日の売上は必ず新宿の事務所へ持ってくる事。
朝、秋葉原のアップルへ出勤したら、俺に電話を一本入れる事。
これは遅刻防止の為である。
山下の性格を考えると、楽な環境たとどんどんそちらへ流れるのは読めた。
俺が四六時中傍にいる訳にもいかない。
三月初日のみ俺も確認ついでにアップルへ向かう。
新宿の一番街通り入口で待ち合わせ、東新宿駅から広末町ルートで行く予定だ。
「いいか? 分からない事だらけだろうけど、今日は俺も店にいながら色々アドバイスや指導はする。素人でも売り子が務まるような店作りにしたんだ。本当に頼むよ」
「分かってますよ。自分もあそこ辞めて、あとが無い状態ですからね」
俺たちは歌舞伎町を横切るように歩き、区役所通りへ向かう。
東通りへ差し掛かり、山下のゲーム屋時代の後輩大山の姿が見える。
大方式典で、また見張りでもやらされているのだろう。
「おーい、大山ちゃん」
俺が手を振りながら声を掛けると、大山はこちらに気付き笑顔になる。
しかし横にいる山下を見て、大山の表情が突然曇った。
「何だ、あいつ? おい、山下、大山だぞ」
「……」
山下も大山と顔を合わせないようそっぽを向いている。
微妙な空気の中、俺たちは道を進み、結局山下と大山は一言も交わさない。
二人の様子を見てすぐ理解した。
「おい、山下! おまえ、ちゃんと辞めろと言ったのに、あの店飛んだろ?」
「言おうとは思っていたんですよ」
うちに来た時の期間がどうも短過ぎると違和感を覚えた。
あれだけ遺恨を残さないよう綺麗に辞めろと伝えたのに……。
「もう過ぎた事だから仕方ないけど、おまえはこれからうちの裏ビデオの名義をやるんだよ? そんな嘘つくようなら、悪いけど他の売り子探すよ」
「待って下さい! ちゃんとやりますから」
「ちゃんとやってないじゃん。いいか? この稼業、信用とか信頼が第一なんだよ。何で綺麗に辞めたとか嘘ついたの?」
「いや、ですから……」
「悪いけど、警察に捕まってからじゃ、そういうの通用しないから」
「これからはちゃんとやります!」
必死に弁解する山下を無視して、俺は長谷川へ連絡を入れた。
状況を簡潔に話し、山下を入れずにとりあえず売り子が見つかるまで俺が入る事を伝える。
最悪警察に俺が捕まったら累犯で下手したら刑務所へ行く可用性があるが、山下を紹介したのは自分なのだ。
「岩上さん、怒る気持ちは分かりますが、山下に一度チャンスをあげてもいいんじゃないでしょうか?」
「長谷川さん、こいつに甘い処置して捕まった時謳われたんじゃ、話にならないですよ」
山下の気軽な感覚での嘘。
こんな状態のまま売り子をやらせるのは危険過ぎる。
「ちゃ、ちゃんとやりますから……」
「おまえさ…、いつまで適当に生きてくつもりなの? 俺はキチンと筋通して辞めろって、何度も言ったよな? ヘラヘラ適当に仕事してりゃあ給料もらえる一従業員って立場じゃないんだよ」
「す、すみません……」
「あやまって済む話じゃないんだよ。おまえが秋葉原入りました。あのゲーム屋がムカついて警察にチクったら、どう責任つけんの?」
「い、いえ…、あの……」
「今日は帰っていいよ。別の奴使うから」
「岩上さん! とりあえず事務所へ来ましょうよ。山下も一緒に」
長谷川の声が受話器から聞こえ、若干冷静さを取り戻す。
オープン初日からのゴチャゴチャ騒動。
俺が厳し過ぎるのだろうか?
いや、山下の甘さが残った状態で始めるのは本当に危険だ。
しかし司令塔は長谷川なのである。
俺は暗い顔をした山下を連れ、事務所へ向かった。
長谷川は缶コーヒーを用意して俺たちを待っていてくれた。
「まあ岩上さん落ち着いて。ソファーに腰掛けて下さいよ」
黙ったまま立ち尽くす山下。
「何で綺麗に辞めたって嘘をついたんだよ?」
「いや…、その…、ちょっと言い辛くて……」
「おまえよ? そんなん神経で名義が務まると思ってんのかよ?」
「まあまあ岩上さん」
「長谷川さん、俺から紹介しといて何ですが…、こいつは駄目です。今日から売り子が入るまで、俺が秋葉原行きますので……」
「岩上さんをそれで失ったら、うちのグループはどうなるんですか」
「……」
確かに感情的になり勢いで言ってしまっている。
「山下もこれで懲りたというか、充分分かったと思うので、一回だけチャンスあげてもいいんじゃないでしょうか? な、分かったよな、山下?」
「は、はいっ!」
これだけ怒れば、事の重大さを理解してくれただろうか……。
秋葉原の店舗アップルへ行く前に、俺は再三口酸っぱく山下へ注意した。
物事には気を緩めていい部分、駄目な部分がある。
本来なら名義人自身が、身元引受人だって用意するようなのだ。
こうして擦った揉んだありつつも、山下名義のアップル初日が始まる。
俺と長谷川はアップルの閉店まで特にする事がない。
現在のプロレス界の状況を長谷川は聞きたがるので、基本的な現状を伝える。
「今、有名なレスラーって誰になるんですか?」
「鶴田師匠や長州、藤波、天龍の鶴藤長天の時代から、今は新日系は闘魂三銃士、全日系は四天王ですよね」
「僕、最近なんですよ、プロレス見始めたの。ノアって言うのはどこの団体になるんですか?」
「全日本プロレスから三沢さん、小橋さん、秋山さん、田上さんらが大量離脱して新しく団体を作ったのが、プロレスリングノアなんですよ」
「その四人が四天王ですか?」
「いえ…、今全日本プロレスに残った川田さん、それにノアの三沢さん、小橋さん、田上さんの四人が四天王です」
「そうなんですね。新日本のほうは?」
「三銃士が武藤、橋本、蝶野なんですが、橋本がゼロワンを立ち上げて、武藤は全日本に行って社長。蝶野だけが新日本に残っている感じですね」
「PRIDEは観に行った事あるんですけど、プロレスはまだ無いんですよね」
総合格闘技PRIDE。
フジテレビがガッチリ放映権を持ち、今の世の中で最も人気のある格闘技イベント。
俺が総合格闘技に初めて出た頃だから二十九歳の頃か……。
実家のすぐ傍に鰻のいちのやがあり、そこの市川さんはPRIDEのスポンサーもしていた。
俺の親父と昔から仲が良かったようで、前に鰻いちのやにPRIDEの大会が終わった際、メイン選手が集まった写真を見た事がある。
マークコールマンや高山善廣と一緒に映る写真を見せられ、「おまえはこういう中に入れない程度でだらしねえ奴だ」と言われ、口論になった事があった。
この頃地元川越祭りに出ていた俺は、スポンサーの一人である鰻いちのやの市川さんと会う。
俺を見て「智ちゃんの長男か」と話し掛けてきて、一度時間を作ってほしいと、PRIDE裏プロデューサーの百瀬さんという人の前に連れて行かれた。
日本人のヘビー級で戦える戦力が少ない現状。
俺の試合を見たが、総合格闘技の技術など何も知らない状態でセンスだけで戦っているところを言われる。
ワンマッチ一千万円のギャラを提示され、その前に高田延彦の高田道場を紹介するから総合の基礎を学べと言われた。
新日本プロレスからUWF、分裂してUインターからキングダム、そしてPRIDEと渡り歩いた高田延彦。
彼は俺が最も嫌悪するプロレス関係者ベストスリーに名をつられる。
ヒクソングレイシーと戦う為に開催され産まれたPRIDE。
高田延彦は二回戦い、二回ともヒクソンに負けた。
そのあと『泣き虫』というタイトルの暴露本を出し、これまで応援してくれたファンに対して後ろ脚で砂をぶっ掛けた男。
ヒクソンとの試合まで俺は真剣勝負をした事がなかったと謳っているが、ファンを裏切り金に代えただけ。
以上の理由で俺は高田延彦が大嫌いだった。
「何故俺があんなクソ野郎の下につかなきゃいけないんですか?」
百瀬さんにそう答えると、「誰に口を利いているんだ? 上がるリング無くなるぞ?」と半分脅しにも取れる事を言われる。
「へー、何でも有りなんて謳っているけど、裏でも何でも有りなんですね」
この頃ゲーム屋ワールドワンでそこそこいい給料をもらっていた俺は、反骨心剥き出して粋がった。
「別にどこにも上がれなくても構わない。但しいつか俺自身の価値を高めて、もう一度だけリングに上がってやるからな!」
そう嘯いた。
あの時から四年ほど経ったのか……。
今じゃトレーニングもまったくしなくなり、俺は口先だけの男になってしまっている。
夜八時になり、山下から連絡が入る。
オープン初日の売上二十四万三千円。
初めての途中、初めての店で考えると中々の売上。
長谷川の優しい考えで名義人としてのクビが繋がった山下。
どうやら真面目に仕事へ取り組んだようだ。
「山下、歩合出るから売上の中から五千円取っていいぞ。あと七千円あれば、歩合一万円になったのにな。まあいいや、とりあえず新宿の事務所に売上持ってきて」
「分かりました」
歩合を引いた売上二十三万八千円。
もし平均このくらい毎日売上が作れるなら、裏ビデオ屋としてはそこそこ成功したほうだろう。
注文を受けて無くなったDVDの枚数を事務所でコピーして作った。
翌日の売上は三十二万。
徐々にではあるが上がっている。
山下は歩合で一万円を給料とは別途にもらえるのだ。
オープン間もなくいきなり数字が出るとは、嬉しい誤算である。
三日目は十七万五千円だが、充分及第点。
俺たちはいいスタートダッシュを飾れた。
一週間に二回入ってくる新作の裏ビデオ。
俺は早速DVDジャケットのデザインや作品毎のジャンル分けを済ませる。
新作は長谷川の顔で一枚七百円で手に入るので、二十数種類で金額一万五千円程度。
新作に関する原価は一週間で三万程度で収まるのはありがたい。
俺の休みに関して長谷川は自由に取らせてくれるが、新作が入る火曜と金曜日だけは最低限事務所へ来て欲しいと言う。
普通のOLの百合子と休みを合わせる形で、基本的に俺の休みは毎週日曜日。
百合子の娘である里帆と早紀とも会う回数を重ね、親睦を深める。
休みを使い、旅行代わりに池袋プリンスホテルや新宿のワシントンホテルなど、俺が分かるシティーホテルへ泊まり、綺麗な夜景での食事を家族四人で楽しむ。
平凡であるが平和でまったりした空間。
そんな日常を過ごせる俺は充分幸せだった。
ホテルへ着くなり、柔らかいベッドの上で大の字になると、長女の里帆が俺の左腕を持ち上げて横に伸ばし、その上にコロリと寝転がってくる。
まだこの子たちが幼い頃に、百合子は前の旦那と離婚したと聞いていた。
妙に甘える里帆を見て、父親のように甘えられる存在を求めていたんだなと感じた。
俺は寝たふりをしながら、あえて気付かないよう心掛ける。
母親である百合子のヤキモチ焼きは異常で、自分の娘が俺の腕枕で寝ているのを見ると、それで不機嫌になった。
次女の早紀は、俺にまだ慣れないのか未だ余所余所しい。
それでも高い景色を眺めながらの食事は、みんな喜んでくれた。
自分一人だけでなく、彼女がいたら食事をするにも料金は倍。
それに加え娘二人も入り四人になると、料金は四倍。
当たり前の事だが、これまでのように自分の好き勝手に金を使えるようにはいかない。
俺だけは血の繋がらない赤の他人ではある。
でも誠心誠意この子たちには接しよう。
百合子が土曜、日曜と連休取れないか聞かれる。
理由を聞くと、外泊で那須へ行きたいようだ。
里帆は俺にかなり懐いている。
街を歩いていても、三十三歳の男の手を自分から繋ぎ、一緒に歩きたがるほどだ。
変に遠慮をする早紀の為にも、俺は時間を作り、目に見えない溝を埋めていきたい。
新作のデータ作りの火曜、金曜以外なら問題無いだろう。
長谷川へ相談すると、何事もなく許可を取れた。
「那須ってどこか行きたい宛てあるの?」
「サンバレー!」
どこかで聞いた事があるような……。
百合子が娘の里帆と早紀へ「サンバレー決まったよ」と言うと、二人は大はしゃぎで喜んだ。
「蟹食べ放題なんでしょ?」
「プール一杯あるところだよね?」
よく分からないが、子供たちにとっては行きたくて溜まらない場所のようだ。
サンバレー…、何度か聞いた事あるんだけどな……。
あ、そうか!
西武台高校時代、研修と称して三年間行ったボロいホテルの名がサンバレーだったっけ。
それにしてもあんな古ホテルなんか行って楽しいのか?
百合子へ尋ねると、俺の高校生の頃とは違い、二千五年の今現在では大改造をし、流れる温泉プールに様々な種類の湯、バイキング形式の大型レストランなどかなり変わったようだ。
実際那須のサンバレーへ行くと、あまりの変化ぶりに自分の目を疑ったほどだ。
豪華な食事に温泉プール。
これじゃ子供たちが大喜びするのも無理はない。
夜になると昼間はロビーラウンジとして喫茶店のような形で経営している空間が、カクテルなど洒落たお酒も出すBARに変わる。
俺は百合子に酒を飲んでくると伝え、そこへ向かうと里帆もついて来た。
今年から中学生の里帆。
ちょっとくらいは酒の味を教えてもいいか……。
「里帆、ママには絶対に内緒だからな!」
「うん、分かってる」
里帆を甘やかした分、早紀にはたくさんのお土産を買ってやらないとな……。
このサンバレーで驚いたのが、硫黄の湯にあった黒石鹸だった。
顔中の脂分がすべて流れ落ちてしまうほどの効果で、俺の顔を見た百合子家族が大笑いしたほどだ。
色々あったけど、今の俺は仕事もうまく行き、家族という存在もできた。
悲惨だった時代を思うと怖いくらい幸せだ。
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